学びの大切さを説明できるだろうか?

前回の記事の結論で、親としてしなければならないことは、子供に学びの大切さを教え、学べる環境を整えること、と書きました。そしてそのためには「学びの大切さ」とは何かを親自身がもう一度考えなければならない、と。

そして書きながら思ったことは、「学びの大切さ」を説明できるだろうか、ということです。


二十数年前、大学を卒業する際に研究室の教授から頂いた言葉を今でも覚えています。それは「人間、一生勉強だ」との言葉。研究室の卒業前の飲み会(大学で言う「追い出しコンパ」)の席で、教授が卒業するメンバーをひとりひとり紹介する場面で、学部卒で卒業して就職する私の紹介の際に「卒業して就職して働き、一足先に社会での勉強を始める」との文脈で、上の言葉をかけてくれました。

実は正直なところ、学部卒で就職を決めた自分は、あと2年間院で勉強するよりも早く就職して働きたい、もう勉強はしたくない、という思いがどこかにありました。まだその教授に真意を尋ねたことはありませんが、ひょっとしたら自分の本音を見抜いていて「就職したらもう勉強しなくてもいいと思っているかもしれないが、それは間違いだ」ということを戒めているのかな、とも思いました。後になってそう思えるようになった、というほうが正しいでしょうか。というのも、「一生勉強だ」という言葉の意味を理解し、「勉強(学び)は楽しい」という実感を得たのは、ずっと後のことだったからです。

いま自分自身は「学ぶことは楽しい」と心底思えます。「学びたいと思えることを学べるのは幸せだ」という方が近いかもしれません。必ずしも仕事に直結することや自分の専門分野のことばかりではなく、すぐには何かの役に立つわけではないけれども(何の役にも立たないかもしれないけれども)興味あることを学ぶこと、例えば本を読んだり実際に物を見たり聞いたりして知識や経験を増やすことはとても楽しい、と言えます。

好きなことだけ勉強すればよいというわけではないだろう、と言われるかもしれません。例えば仕事でこれまで全く学ぶ機会のなかった分野のことを理解しなければならないこともあります。分野によっては得手不得手もありますし、期限に迫られる場合は無理だと思うこともあります。ただ社会人としてはすべてのことをオールマイティにできる必要はなく、自分が果たせる役割を考えて、選択して学ぶことも可能です。要は自分が強みを発揮できる分野を選んで率先して学び、差別化を図ればいいのです。


では子供に対して、「学びは楽しいよ」と教えることはできるでしょうか。言葉では教えることはできません。「学ぶこと」つまり新しいことを知ったりできるようになったりすることが楽しいと実感させ、その実感の中で、生きていくうえでは学びが必要であるということ、つまり「学びの大切さ」を、徐々に教えていくしかないでしょう。

ひょっとすると教える必要はないのかもしれません。大人の自分も「学びの大切さは」と聞かれてうまく説明できないのですから、子供にも「なんだかわからないけど確かに大切だなあ」と徐々に出来上がってくるものなのかもしれません。

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