NHKSP「”学校”のみらい~不登校30万人から考える」(その1)

1月27日(土)放送のNHKSP「”学校”のみらい~不登校30万人から考える」を見ました。詳しい番組の内容は下記を参照ください。

まず大枠として不登校の現状について

・不登校の定義
・小中学生の不登校児童・生徒は現在30万人に迫る
 (特にここ数年で増加の勢いが増える)

不登校の考え方として

・「学校に戻す」から「学びの機会を作る」へ
 (文部科学省が指針を示す)

しかしながら現状として

・現実的に不登校の児童生徒の学びの場は確保できていない
 (民間のフリースクールなど受け皿はまったく不十分)

・行政による相談・学習支援の取り組みも(文科省の方針を受けて)
 少しずつ整備されつつあるが各自治体で試行錯誤の状況
・現実的におよそ1/3の子供・保護者は孤立状態

といった内容が紹介され、概ね書籍等で知った内容と一致していました。


次に海外の参考になる事例として

・韓国における「代案学校」
・フランスにおける「エデュケーター」

について紹介されました。

韓国というと日本以上の受験戦争加熱のイメージですが(ちなみに日本の中学受験を始めとするここ最近の受験戦争再加熱はむしろ韓国の状況の後追いのような気もします、これはまた改めて勉強して、考えてみたいと思います)、受験競争の裏側には当然ながら疑問を感じる子供や親の存在もあり、「子供自身が学びたいことを考えて自分で学ぶ」ことを実践する「代案学校」(この言葉は初めて知りました)が1980年代からありました。最初はもちろん学校として認められない非公式の存在だったのですが、教育改革を公約に掲げた金泳三大統領の政権により代案学校が認可される道が開かれ、現在は95校が認可されています(但し受け入れ可能数は全体の0.1%にしかならないそうですが)。

必修科目は半分程度(「国語」「社会」の科目のみ)で、あとの時間は生徒自身がカリキュラムを組み、「〇〇について学ぶ」ということを生徒自身が決めるという仕組みです。学校の役割は、専門家を招いたり、学び方について提案したりと子供の学びをバックアップすることで、教育の選択肢を増やす(子供自身が学びたいことを学ぶ)ということを実践しています。

韓国の場合、教育の事情は日本に近いところも多いと思いますので、参考になるのではと思いました。実際、考え方や理念としては日本のフリースクールに近いと思います(実際にこの事例の紹介のあと、日本での状況としてフリースクールが紹介されました)。国として、既にある民間のフリースクール等の後押しから始める形でこういった取り組みを実践できる環境を整えることは可能だと思います。


次に30年前から学校に通えない子のための仕組み作りに取り組んでいるというフランスの事例の紹介。フランスでは、病気などの理由のない欠席が月に2日あった時点で、学校(行政)からその子供に個別に事情を確認する仕組みで、そのための「子供に寄り添う教育スペシャリスト」として「エデュケーター」という国家資格があります。日本で言えば、学校の支援担当の先生や、行政の相談担当といったポジションが近いですが、その取り組みの厚さがまったく異なります。(学校に行けないといった事情を抱えた)子供15人に対して5人のエデュケーターが付き、大人として専門家として子供に寄り添います。もちろんそのための場所も用意されています。子供に寄り添い、話を聴いて、再び学校に行けるようになるまで寄り添うという取り組みです。

「学校に戻る」ことを前提としていることは置いておいて、子供に寄り添うということに関する手厚さは質も人数もまったく日本とは桁が違います。事例として「とにかく子供とすぐに話をする(放っておかない)」ことを徹底しているということが、フランスでの教育に関する格言「教育とは器を水で満たすことではなく、火を灯すことである」とともに紹介されていました。

日本での不登校児童・生徒30万人に対して、同じ割合(15人につき5人)の「エデュケーター」を置くとすると、10万人が必要ということになります。確かに学校の先生や行政の公務員だけでは不可能な数字ですが、社会全体の仕組みとして、例えばあらゆる仕事をしている人から志ある人を国家資格として認定し、地域で(自分の子供が通っているかどうかとは無関係に)仕事として取り組める枠組みがあれば、不可能なことではないような気もします。というより、それだけ国として子供の教育が重要であるという強い意志が必要だということですね。


海外の事例は初めて知った内容でした。もちろん番組として紹介された内容自体が韓国にしてもフランスにしても一面であって、すべてがうまく回っているわけではないことは当然です。「そのまま日本で導入すればいいじゃないか」、あるいは「そのまま導入することなど無理」、ではなく参考とできるヒントはいろいろあり、そこから何ができるのかを考えることが重要です。


(その2へ続きます)




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