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「背後から襲われた話」

高校を卒業して、初めて都会に出て一人暮らしをしながら、専門学校に行く、、のを休学して、親に内緒で毎日バイトに行ってた頃のお話です。

私のバイトは、小さな広告会社のおもに雑用でした。
朝10:00〜18:00まででバイトは帰れるので、18時になったら帰り支度をして、自宅マンションまで地下鉄で一駅だったので、よく歩いて帰っていました。

地下鉄がマンションと逆方向なので、歩いて帰宅する方が近道だったからです。

その日は冬の寒い日でした。
いつものように18時でバイトを終え、帰り道の途中にあるスーパーでお弁当を買って、ショルダーバッグと右手に買ったお弁当、左手に傘を持ってマンションに向かっていました。

冬なので18時を過ぎると外は暗くて、私の住んでいる所はマンションが並んでいて、お店とかが無い道だったので、
全体的に夜は暗い通りでした。

後ろの方から、男の人と思われる足音が近づいて来ていました。

暗い道で足音が近づくと、女性は少し
身構えます。
私はどんどん近づく足音に、それでもまあ、追い越して行くだけだろうな、という気持ちと、もしも痴漢だった時には、この傘を振り回そう、と思ったあたりで、私の靴のかかとに、後ろから来る足音の靴が当たったのです。

つまり、ぴったり真後ろにいる!と思った瞬間、後ろから左手で羽交い締めにされ、右手で口をふさがれて「静かにしろ」と言われました。

一瞬のことで、反射的に相手の両手を
振り払い、相手の方を振り向いて、自分でもびっくりするぐらいの叫び声が出ました。 
相手の顔は真っ暗で見えなかったのですが、犯人は「ちっ」と舌打ちして、来た方へ走って逃げました。 

私は逃げる犯人が一瞬、街灯の下を通る時に、痩せ形でGジャンとGパンの服装なのを確認しました。

冷静に見てたわけではなく、足が数秒ほど動かなくて立ちすくんでたので、たまたま見えたのです。 

私は、犯人が逃げたのと逆の方、つまり私のマンションの方に向かって走りました。
けれどマンションの前に来た時、また
後ろから来てるかもしれない、そもそもマンションがバレているかも、、と思い、その先にある派出所まで走りました。 

警察官の方が1人いたので、息を切らしながら今あったことを説明しました。 

警察官は私が来た道を指差しながら、
「あそこからは管轄外なんですよ」と
言いました。
そして「最近下着泥棒とか痴漢が多いんですよ」と言い、私のマンションの住所や電話番号を書かされました。

私は一緒に走ってまだ犯人がいるかもしれない辺りに、急いで見に行ってくれるものだと思っていたので、管轄外、で済まされたことに不信感を持ちました。

「一応マンションの下まで送ります」と言われて、すぐそこのマンションまで一緒に歩いて送ってもらいました。

内心、ここに送ってくれるなら、何故
すぐその先の、犯人がいた場所を確認
もしてくれないんだろう、と思いました。

マンションの下についたら「やっぱり部屋の前まで送ります」と言われて、一緒にエレベーターに乗りました。

エレベーターの中で、私が男の人と2人きりになって怖いだろうと、気遣ってくれたのかもしれませんが「この仕事をしてると悪い事は出来ないですよ」と、いきなり言われたので、私は逆に緊張して警戒しました。

6階の部屋に着いて鍵を開けながら、ここで襲われたら…と恐怖でした。
警察官の方に「ありがとうございました」と言って鍵をしめて、1人になった途端、緊張がやっと緩んで泣きました。
声をあげて泣きました。

犯人も、警察官も、叫んでも誰も出て来てくれなかったことも、これ以上の対処が解らない自分も、全部がどうしようも無く、残念で、無念でした。

口をふさがれた感触と「静かにしろ」という声は、長いこと消えてくれませんでした。

私はそれ以来、一年間くらい、後ろから足音がすると振り向く癖がついて、夜道でも後ろから女性とすぐ解る服装が出来なくなり、長い髪にスカートだったのを、ベリーショートにカットして、スカートは履けなくなりました。

あの道も、もう通れないので遠回りして地下鉄で通いましたが、バイト先から後ろをつけられてたのかも…全てが不審に思えました。
すぐに自転車も買いました。

私は犯人もすごく憎かったけれど、あの時すぐに犯人を見つけに行くとか、管轄外なら、管轄の警察へ連絡してくれなかった警察官にとても腹が立ったと同時に、警察官は未遂では動いてくれないんだ、逃げ切れたからいいでしょ、ぐらいに思われたんだろうな、すぐ電話番号まで聞かれたのは、嘘やいたずらと思われたのかな、だから部屋まで確かめに来たのかな、、と警察官は全然あてにならない、という絶望感でいっぱいになりました。

そもそも、後ろから羽交い締めにされて、口をふさがれて『静かにしろ」と脅されるのは、痴漢以上の犯罪じゃないだろうか。

あの時、犯人の両手を咄嗟に、はらう事が出来て良かった。
犯人に向き直って叫んだ時、また口を塞がれたり殴られたりしなくて良かった。ナイフを持っていなくて良かった。不幸中の幸いだと思いました。

あとから友人に話した時に「抵抗して叫んで、刺されたり殺されてたかもしれないよ、私なら殺されるより、静かに言いなりになったかも」という意見を聞いて、そんなに冷静に考える暇は無かったし、全ては反射的な行動で、どれが正しいのかも解りません。

女性の皆さん、暗い夜道はなるべく避けて歩いて下さいね。

あまり思い出したくない体験なので、なるべく感情を排除して、あった事を淡々と冷静に書いてみました。

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