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ケイコさんの支援(自宅待機 7)

 天気予報では雪になると言っていたのに、気温が高いので雨になった土曜日の午後、ケイコさんが両手に持ち切れないほど食料を持って来てくれた。
 手作りのミネストローネ、水菜と生揚げの煮びたし、いんげんのごま和え、関山のちらし寿司、アンデルセンのパンをいろいろ(その中から私はぶどうパンとアーモンドのペストリーをいただいた)、それにケーキまで。

 ケイコさんは元々は仕事関係の知り合いで、私の顧客筋に当たる人だったが、いつの間にか友達付き合いになり、10年以上つかず離れずのお付き合いが続いていた。
 この数年前に会社が千葉県の北部に越したので、ケイコさんも一緒に引っ越していった。
 それ以来年賀状をやりとりする程度になっていたが、この年の年賀状の返信に手術のことを書いたらすぐにメールをくれた。毎週土曜日に所用で青山に来るので、車もあるし、買い物でも何でも用があったら帰りに寄るからと書いてあった。

 買い物は日曜日の夕方にボランティアのEさんが来てくれることになっていたが、久しぶりにケイコさんに会いたかったので、用事が済んだら帰りに寄ってくれるように頼んだ。
 ついでに青山の関山でお弁当を買ってきてもらえると助かると書いたのだが、手作りの料理をタッパーに詰めて、リュックで背負ってきてくれたのだった。

「飢えていたなんて書いてあるから、これは食料を差し入れしなくちゃと思って」
 ケイコさんは笑いながら言った。

 実は、お正月に買い置きの食べ物がなくなってしまい、ご飯に削り節とお醤油をかけて混ぜ、インスタントの味噌汁と一緒に食べたことがある。
 宅配のお弁当屋さんを利用することを思いつかなくて、買い物に出ても1度に1キロ程度しか背負ってこられないからまとめ買いができないし、お天気が悪かったりすると外に出られないので悲惨なことになっていた。

 ケイコさんの持ってきてくれたケーキでお茶しながら、しばらくぶりに楽しいお喋り。
 それから、仕事で使う書類をコンビニにコピーしに行ってもらった。
 帰り際にケイコさんは、
「用があったら車で来ますから、いつでも呼んでください」
 と言ってくれた。

 夕食にはケイコさんの手作り料理をいただいたが、煮びたしは上品ないい味に仕上がっていたし、いんげんのごま和えも歯触りが良くて味付けが上手だった。ミネストローネは翌日の朝食にしたが、具だくさんでとってもおいしく、お代わりして食べた。

 この後、週に1回買い物に行ってもらうことになっていたボランティアのEさんが、お母様が倒れたとかで来られなくなってしまい、代わりのボランティアの人がみつからなかったので、ケイコさんに頼んで何度か車で買い物に連れていってもらった。
 ケイコさんには虎の門病院を退院するときにも車で迎えに来てもらったり、ずいぶんお世話になった。
 用事で青山に来たついでとは言え、ケイコさんの家までは電車で2時間もかかる遠さなのに、本当にありがたい。いくら感謝してもし足りないぐらい感謝している。


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