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注文が難しいドリンク

平日に夫と休みが重なり、久しぶりに二人で出掛けた。

いつもは家の近所をウォーキングしているのだが、たまには街中へ繰り出そうかということになった。建ち並ぶお店に寄り道するのはただただ楽しいし、でもあくまでもウォーキングだから健康的というところが中年夫婦には心地がいい。新しくできたらしい店でランチをして、あとはコーヒーでも飲んで帰ろうと、また歩き始めた。

でも、すぐにあるだろうと思っていたのにカフェはなかなか見つからない。やっと見つけても満席だったりで諦めかけていた頃、持ち帰り専用の台湾ドリンクのお店を見つけた。

コーヒーはメニューにないようで夫は不満そうだったけれど、食後はコーヒーと決まっているおじさんを説得し、台湾フルーツティーデビューと相成った。

店には、20歳くらいの女の子の店員さんが一人。

私はマンゴーティー、夫はパッションフルーツティーを注文した。いつものコーヒーにこだわっていた割には、食べたこともないパッションフルーツとは。切り替えの早い夫である。

すると、店員さんにトッピングはどうするのかと聞かれた。タピオカとかを入れることもできるようだったが、いりませんと伝える。

すぐそのあとに、甘さはどうするか、と聞かれた。どんな甘さがあるのかわからず聞くと、メニュー表に書かれた、無糖、控えめ、普通と並んで書かれている甘さのレベルを指さした。甘さの普通とは?とも思ったが、聞いて面倒くさいおばさんと思われたくない。二人とも普通にした。

そしたら次は、氷の量を聞かれる。
ベストな氷の量を、一瞬で判断する自信なし。私はこれまた普通、夫は控えめというのを選んだ。

さあ、これでもう作ってくれるだろうと思ったら、もう一度、店員さんに「トッピングはよろしいんですね?」と念を押された。

シンプルに初めての味を楽しみたかったし、もう一度大きめの声で「いりません」と伝えた。

ドリンクができるのを待つ間、またメニュー表を見ていたのだが、トッピングにはタピオカやアロエの他に、プリンというのもあるようだった。

プ、プリン?あのプリンを?一体どのように乗せる??

台湾ではスタンダードなのだろうか。はじめて触れる食文化に、顔を見合わせてビビる、おじさんとおばさん・・・。

それはともかく、お姉さんから受け取った初めてのマンゴーティーは、マンゴーの甘さの中にウーロン茶の渋みが効いていて、すごく美味しかった。のどを潤したいけれど甘ったるいものは嫌だという、まさに歩き疲れていたそのタイミングに、ぴったりだった。

帰り道、歩きながら夫と、そういえばあの店員さん、なんでトッピングのこと、念を押してきたんだろうね?という話題になった。決して愛想が良いとは言えなかったが、一度聞いたことは忘れなさそうな、てきぱきして、しっかりした感じの人だったのだ。

トッピングをしない人なんて珍しすぎて、驚いて聞き返したのではないか。

いや、私たちがよくわかってなさそうな感じだったから、よくあるタピオカドリンクのお店みたいに、タピオカが最初から入ってると勘違いしていると思われたのではないか。つまり、タピオカ入ってないよ、いいの?と。

それで後から、タピオカ入ってない!とか言いださないでよ?と。

そこまで考察して、二人で顔を見合わせて笑ってしまった。

真実は分からない。でも、わたしたち、どうみても注文の仕方が分からなさそうな客だ。だからお姉さんをいら立たせたり不安にさせたのかもしれない。それだったら申し訳なく思う。でも、ドギマギしながらの注文も、生まれて初めてのマンゴーティーの味も、私は忘れられないと思う。

「次は、プリン、トッピングしてみようかなー」と夫が言った。どうやら夫も台湾ティーが気に入ったようだ。

それにしてもプリンはどのような状態でトッピングされるのだろうか。浮いているのか沈んでいるのか。タピオカのように太いストローが付いてくるのか。そもそもストローで吸えるものなのか。

おじさんとおばさんは、興味深々だ。

注文が難しいドリンクも、悪くない。

 

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