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ボリス・グロイス『ケアの哲学』

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英語版の各章をまとめました。(前・後編完結)
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[後編] Boris Groys(ボリス・グロイス)『Philosophy of Care(ケアの哲学)』

[後編] Boris Groys(ボリス・グロイス)『Philosophy of Care(ケアの哲学)』

7 ケアテイカーとしての民衆前半(1~6章)までの哲学者たちは、グロイスによれば世界の全体性、宇宙、存在に直接、無媒介にアクセスすることを求めていた。もし「私」が世界全体を支配する権力や力に直接、無媒介にアクセスすることができれば、私はケアの制度への依存をやめ、セルフケアを実践することができるのだ。「制度」というのは結局、宇宙のほんの一部にすぎず、宇宙そのものにアクセスするような態度をとることによ

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[前編] Boris Groys(ボリス・グロイス)『Philosophy of Care(ケアの哲学)』

[前編] Boris Groys(ボリス・グロイス)『Philosophy of Care(ケアの哲学)』

イントロダクション(ケアとセルフケア)では、ケアは現在最も普及した「労働」と「制度」として、狭い意味の医学を超えたものであるという書き出しから始まる。グロイスが注目するのは「物理的な身体」は、そこから拡張された「象徴的な身体」=モノや記録、文書、画像、映像、録音、書籍、その他のデータのアーカイブに媒介されてケアの対象として統合され監視とケアのシステムに管理されているという。

医療制度はサービスを

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