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アートマン・プロジェクト(続き):魂のライフサイクル

■この記事の要約

アートマン・プロジェクトには、次の4つの方向の<引き>がある。
〇「アガペー(神の愛)」ないし「アートマン・テロス」:真の超越に向かおうとする(上位へ向けての)引き。「テロス」とは最終的な目的感覚のようなものをさす。
〇「収縮」ないし「アートマン拘束」:下位へ向けての引き。分離した自己の「死」を恐れ、狭い自我に凝り固まろうとする動き。
〇エロス:みずからの存在を永続化しようとする衝動。探求、執着、願望、欲求、永続化、愛、生、意志といったことの根底で働く力。
〇タナトス:みずからの消滅を匂わせるすべてのものを回避しようとする衝動。主客の境界を手放すことのできない分離した自己にとって、分離や境界を超越しようとする動きが、死の脅威のように見えること。

アガペーが収縮に勝り、変容が上位へ向けて起きれば進化になる。アートマン・プロジェクトはアートマンそのものに徐々に近づいていく。
反対に、収縮がアガペーに勝り、変容が下位へ向けて起きれば内化になる。アートマン・プロジェクトはアートマンから徐々に遠ざかっていく。
進化においては、エロスがタナトスに勝っている間は、変換が安定的に続くが、やがてその段階のエロスが衰微し、タナトスが勝り、その段階での代用の自己の死が受け入れられ、アガペー(アートマン・テロス)の働きによって、一段階上への変容が起こる。
内化においては、エロスと収縮がアガペーとタナトスに勝利し、それぞれの代用の自己はしだいに下位レベルのものになっていく。肉体の死の直後、魂は内化のプロセスをたどることになる。
「チベットの死者の書」によれば、この内化のプロセスは、次の3つの段階を踏んで進行する。
〇「チケイ」(非二元あるいは元因)
無垢の光り輝く法身(ダルマカーヤ)、究極的意識、ブラフマン―アートマンの状態。

〇「チュンイ」(微細)
エロスと収縮をとおして、究極的な非二元的意識が見かけの上で「目撃する主体的自己」と「目撃される客体的な光明の表現」に分裂する。
ここで初めて魂は、「欠如(欲求)」を覚え、アートマン・テロスが芽生えるが、それを埋めるものは代用の満足だけである。次々に「代用物」が創造されては基底無意識に投げ込まれ、そのたびに魂は失神し、一段階低いバルドで目覚める。

〇「シワ」(粗大)
粗を映す心の領域。この段階に至ると、収縮とエロスが衰え、下方への変容がやみ、魂はプレローマ的な身体に拘束されたものとして再び生まれ変わる。

進化とは、内化によって創造されたものを想起するプロセスと言えるが、夢はその「想起」に深く関与する。

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