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名作を訪ねる(7)


第7回

連載に間があいてしまったことをお詫びいたします。第7回は、ふたたび2手メイトから紹介します。
有名な作品なので、見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。

Loshinsky, L. 1st-2nd HM Tijdschrift v. d. Nederlandse Schaakbond, 1930

#2 (6+7)

Lev Loshinskyは20世紀初頭に活躍した大作家です。
本作はLoshinskyが17歳の時に発表されています。駒数はわずか13駒ですが、この作品に込められた複雑性は計り知れません。
もし解いたことがない方がいらっしゃれば、先に解いてから以下を読むことをお勧めします。(スクロールしないと次が見えないようにスペースをあけておきます)














1.Bb3!(zz)
1...R(a)a~, Bb7 2.Re7#
1...Rxc7 2.Sxc7#
1...Rb7 2.Rc6#
1...f5 2.Qd6#
1…f6 2.Qe4#
1...R(h)h~, Bg7 2.Qxf7#
1…Rg7 2.Qe5#
1...Bc6+ 2.Rxc6#
1...Bxd4 2.Sxd4#
1...Be5 2.Qxe5#
1...Bf6 2.Qg4#

さて、2手メイトを解くときにはまず局面図が黒の手番であると仮定して、黒の手に対して白のメイトがあるかを見るのでした。本作でも同様にその手法を取ってみましょう。
すると、可能な黒のすべての手に対して白は次の手でメイトにできることがわかります。(簡単に書いてしまいましたが、黒の可能な手は23通りあるので自分で探そうとすると相当大変だったと思います。なお、このように黒から指したときにすべてのメイトが用意されている2手メイトのプロブレムをComplete Blockと呼びます)
そのような場合に、白は局面の状況を全く変えずに手待ちする手があれば、その手が正解の初手になります。
そのような手を探してみると、意外と少ないことがわかるでしょう。たとえば1.Kd8?はいかにもそれらしいですが、1…Bf6+!でだめです。

探していくと、1.Bb3!が見つかります。これが正解の初手です。これに対して、黒はRを縦に動かすとe7かf7でメイトになりますし、Rb7やRg7はビショップのラインを消してしまうのでそれぞれRc6#とQe5#でメイトになります。また、Bb7やBg7はルークの横効きを消してしまうのでRe7#やQxf7#が成立するようになります。このようなビショップとルークの相互干渉をGrimshawと呼び、チェスプロブレムではしばしばみられるテーマです。
なお、同じようでも1.Ba2?は1…Rxa2!で失敗です。

現代においてComplete Blockでの作品を作ろうとすると、この作品を超えるものを作らないといけないでしょう。

次回予定

次回はヘルプメイトを紹介します。


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