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量的緩和、逃げるが勝ちの日銀総裁

<問題先送りの保身>
日銀黒田総裁からすれば、本当に庶民の暮らしなどどうでもいいのだろう。掲げた2%物価目標の達成もどこ吹く風で、そんな基準など最初から偶像でしかなかった。海外マーケットを見てきた金融マンとして、財政規律を無視したリフレ派が作り出した巨万の負債は、個人の国民資産が2000兆円で賄えるとはいえ、財政政策に鎖を巻き付けていることは明白。ブレーキも調整弁のないジェットコースターのような状態に陥り、機動的な物価・賃金のコントロールは至難の業である(MMT理論の罠)。アベノミクスの神輿を担いだ黒田氏は景気浮揚の期待感を抱かせる演出をしてきたが、コロナによる不測の物価上昇で向かい風に煽られ本性が透けてきた。猿芝居の幕を引き、残る任期を終え、後始末を後進に渡して、悠々自適の生活を送るだろう。

<インフレはだいぶ前から>
海外から帰ってきた者には、日本の物価上昇は手に取るように判る。しかし政府は、デフレの長期化を標ぼうし物価も安定していると見せかけ、労働者の賃金が低迷している現実をさらけ出していなかっただけである。コロナ禍の変調で、日本の賃金水準がバブル期以降、延々と横ばい、むしろ低下気味であることが、ようやく明るみになった。デフレが慢性化しているなど、真っ赤な嘘で、食料品であればそれと無くパッケージを小さくして分量を減らし価格を維持する操作は、21世紀に入りジワジワと進行していた。いつの間にか容量を減らす「ステルス値上げ」は、ようやく顕著に語られるが、マスコミもスポンサーに遠慮して報道せずじまい。企業と癒着する官公庁は労働賃金に触れず、いかにも物価は安定していると、大衆庶民を欺く悪だくみと言って過言ではない。

<語られない不平等>
欧米と日本の金融政策に真逆のGAPから、金利とは対数的な関係にある為替が大いに変動している。黒田氏は自分の任期満了へあとわずか、意固地に低金利を維持し続けて、時限爆弾の発火をしれっと後任に引き継ぐことしか頭の中にない。低金利政策に固執し続け、山積した国債の返済難を堰き止めるべく、外ずらでは個人の暮らしに影響すると住宅ローン金利上昇の回避を匂わせる。ところが、この放置プレーは、膨れ上がる危険をひた隠しにして、国民の生活負担をないがしろにしているだけである。世界的な潮流であるが、一部の富裕層が占める資産割合は激増、日本は平均年収450万で停滞し所得格差は際立つばかり。極めて低い住宅ローンのリスクを省みず借りまくる身の程知らずの増加は、異常な不動産価格のバブルを膨らませ続ける。富裕層とローンを借りまくる群衆にのみ偏った便益配分の構図であり、大多数の庶民は物価上昇と賃金低迷の悪影響を被っている、アンバランスな窮状が表沙汰にされない。

<事なかれ政治とマスコミは致命的>
このような事態になる前に、政府、日銀は適正な金利操作で軟着陸のコントロールが出来たのに問題を先延ばしてきた結果、無難に降りる場所はもはやない。泥を被らないように、身勝手な意地を貫く黒田氏を野放しにした安倍、菅、岸田の3首相の責任は重大である。自分の任期だけ大過なく過ぎるよう保身に走り、将来への打ち手をうやむやにする政治家と高級官僚の原罪が問われない社会なのか。しかも、政府と癒着するマスコミ、テレビ局・新聞社はじめ、遅きに失した政策、金利を適正にすべしとは論ぜずに、ぼんやりした評論で声を潜める。いったいいつからこの国は、だれも本音を主張せず、波風立てないタブーを好むようになったのか。諸外国に比しても、国力の劣化が激しいと言わざるを得えない。

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