見出し画像

古着屋のバッグ補修記録

こんにちは、古着屋closet museum館長ことビレです。
ネットショップでヴィンテージ古着の販売をしています。

▼お店の様子はこちらから

古着って人の手を渡っているだけあって、状態がいいものだけとは限らない。
穴が空いていたりシミがあったり擦れてたり。

私はなるべく現状でお客さんに渡すのは避けたくって、できる範囲で修繕してから店に出すようにしている。
最近はニットの穴を繕ったり、とんでもないシミを抜いたりした。

新しい試みとして、ハイブランドのオールドバッグの取り扱いを始めた。
私は仕入れ路も確保できていないからまばらにしか入荷できないし、状態がいいものは高価で私のショップとは釣り合わない。
ランクで言うとC以下となるバッグを自分で修繕して出すことに決めた。

一番最初のBurberryは内側の合皮の劣化がものすごくて、除去までかなり時間がかかって泣きそうだったけど、なんとかお客さんに気に入っていただけた。

今回の記事では、カルティエのバッグの修繕をした時のことを画像付きで解説していく。
革鞄のお手入れの参考にもなるかもしれない。


工程

仕入れたのはこちら。
型崩れ、スレ、傷、もろもろある。

修繕前

ポケットの角に色落ちするくらいのスレがあって、後述するけれどショルダーベルトは色がほとんど変わっていた。
謎のインクみたいな黒い汚れもあって絶対頑固だな……と若干始める前からしんどくなっていた。

①汚れを落とす

古い鞄は手入れされてから届くことは9割無い。
ありとあらゆる経年汚れが累積しているのでまずはいくつかの手順でざっと表側の汚れを落とす。

・布で乾拭き
・毛のブラシで表面の埃や砂汚れを払う
・レザーシャンプーをつけた布で拭く
→染料が落ちる可能性があるので目立たないところで試す。何度も同じところを拭かない。

カルティエは何個かケアしているのでわかったことなんだけど、あのボルドーの染料はかなり色落ちする。
何度もシャンプーすると色が変わってしまうので優しく軽くを心がけないと失敗する。

②インク汚れと対決する

エナメルの靴につくような黒の擦り汚れはレザーシャンプーでだいたい落ちるのに、この鞄は汚れがついてからかなり時間が経っているであろうことと謎の汚れであることからシャンプーだけでは落ち切らなかった。
油性か、水性か。シミを落とす時の大前提は、シミの種類がわかっていること。
今回の汚れは真黒く、表面に対してほんのわずかに盛り上がっている→粘性のある汚れ、ということしかわからず、インク汚れと仮定して進めるしかない。

布についたボールペンのインキなど筆記用具の汚れはまずクレンジングオイルから始めるが、今回は革鞄であり手数をかけると色落ちのリスクが高まる。
漂白剤と並んで、ご家庭でのほぼ最強ランクの除去剤「除光液」の出番である。
除光液は塗料に抜群の力を発揮する。
しかしそれは同時に革につけられた着色料の色落ちをも意味する。

今回の場合は補色キットがあるので、ある程度の色落ちは覚悟して臨んだ。

ちなみに、ノンアセトン系の肌に優しいと謳う除光液はシミ抜きには効果が無い。除光液に含まれるアセトンという有機溶剤が塗料を溶かしてくれるのだ。

・除光液を清潔なペットボトルキャップに少量出して綿棒を浸す
・様子を見ながら優しい力でこする
・すぐに乾いた柔らかい布で拭き取る
・シミが取れるまで上記を繰り返す

なぜ布で拭き取る工程がはさまるのか?
それは除光液が革の表面に残っていると色落ちや革の乾燥ひいては痛みを引き起こすためである。
シミを落とす瞬間以外は決して革に除光液を残してはいけない。

革の状態を鑑みて、シミが目立たなくなった段階で落とす手順を終了した。
もう少しで落ちきりそう……!という段階よりも前に止めるのがミソ。やりすぎると取り返しのつかないことになる。

③補色

ェメゾォンでレビューを比較して購入したのがこれ。
色数が多くて筆とパレットがついてるのがよし♡

深いボルドーを作る

・調色し、筆にとって傷に塗る
・毛のブラシで馴染ませる
・乾かす
・上記を繰り返す

色を作った時と実際に鞄に塗った時の印象がかなり違うので馴染ませる工程は重要。
薄く、何度も重ねることで丈夫になる。
乾いたあとは膜を張ったような感じになる。

作業前。剥げている
作業後。かなり綺麗
摩擦が多発するベルト部分
ベルト全体もこの通り

④保湿

補色作業が終わったら、シャンプーや除光液で乾燥したボディを保湿してあげる必要がある。
ここを怠ると、今度は乾燥によるひび割れが発生してこれまた取り返しのつかないことになる。

・乾燥の著しいベルト部分には、柔らかいクリーム状もしくはローション状の保湿クリームを使用する
・ミンクオイルなど、撥水性保湿性に富んだ固形オイルをブラシで塗り伸ばす
・不要なオイルを乾いた布で円を描きながら拭き取る

バッグのメンテは一に拭き取り二に拭き取りである。古布はちょうどいい大きさに切って保管しておこう。

オイルは塗りつけすぎると、逆にカビの栄養分となってしまうことがある。
定期的にシャンプーで汚れと共にリセットして、オイルの塗り直しをしよう。
オイルクリームたちはだいたいワンコインくらいで買える。クロスやブラシがついたセットもェメゾォンで買えるので一度チェックしてほしい。

⑤乾燥

風通しの良い場所で乾燥させる。
できれば湿度などが安定している室内が望ましい。
一定期間保管する場合は埃除けのために布の保管袋にいれるとなお良い。
ビニールに入れると湿気が溜まってカビの原因になる。革はカビとの戦いだ。

完成!

以上で補修作業が完了。
だいたい1時間くらいで済んだ。
地道な作業だが、やってみるとみるみる綺麗になるのが楽しい。

このバッグは底が潰れて型崩れを起こしていたので、厚紙で内側から底へ当て紙をして、保管している期間は縦に置いて中に重しを乗せておいた。
発送するときはボーガスペーパーのあんこ(あんこって死語?他の人に言ったら通じなかった)を忘れずに。

革は長持ちする素材の代表だ。
お手入れすると愛着も湧く。
ぜひ今後は皆様もお手入れワークでハッピー鞄ライフを楽しんでいただきたい。

closet museumでは、購入した鞄のお手入れ里帰りサービスも検討中。
何より私が楽しいからというのは秘密!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?