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【1】新卒で入社した大手メーカーを1年で辞めた話「私の就活」

2017年12月、私は大手家電メーカーの内定を獲得した。

就活自体は同年3月から始めていたので、周りの就活生に比べたらかなり遅い内定獲得だった。同じように3月から就活を始めた私の友人たちは、大半が6月中には総合商社やメガバンクの内定を得ていた。

私は周りの友人たちに比べて、出来が悪い大学生だったと思う。

幼少期から高校までは神奈川県の川崎市で過ごし、一浪を経て、2014年に早稲田大学法学部に進学した。

法学部を選んだのは、法律に興味があったからではなく、「どうせ一浪するなら偏差値が高いところを志望しよう」と思っただけだった。根っからの文系で数学や理科が全くできなかったので、国立受験は一切視野に入れていなかった。

大学に入学してからは、特にサークルに入ることもなく、講義とアルバイトをただ繰り返す日々が続いた。

根暗な性格だったので、大学にはそこまで友人と呼べる人はいなかった。塾講師のアルバイトをやっていたので他の大学の人と知り合う機会も多かったが、バイト仲間たちの陽気な雰囲気に馴染めず、アルバイトでも友人と呼べる存在はいなかった。

2017年3月、就活がスタートした。

周りの数少ない友人たちや同じゼミのメンバーは、企業説明会やインターンの予約をたくさんしているようだった。キャンパス全体を見回しても、リクルートスーツを着て髪の毛をさっぱり短くした、いかにも「就活生」の形態をした学生たちが増えていた。彼らは、毎日2.3個の企業説明会に参加したり、(結果を出せれば早期選考に乗ることができるかもしれないので)インターンに精力的に取り組んでいた。

一方で、私は本気で就活に取り組むことができなかった。

まず、根本的に「働きたくなかった」ので、どれだけ業界研究や企業研究をしても、「面白そう」とか「やってみたい」と思えるような仕事が見つからなかった。

そして、「大企業の内定をゲットする」というゴールのために、「働きたくない」という自分の本心を偽って志望動機を作成したり、面接でハキハキ話せるほどの「要領の良さ」も私にはなかった。

何より、午後の講義に出席することすら危うい惰性な人間である私が、毎日朝早く起きてスーツを着て、満員電車に揺られながら会社に行くという「一般的なサラリーマンの働き方」をできるとは到底思えなかった。

結果として、周りの友人たちは、6月あたりには総合商社やメガバンク、インフラなどの誰もが羨むような大企業の内定を獲得し、惰性な私は夏を過ぎても一社の内定をもらうことはできなかった。

就活では、(「働きたくない」とは思いつつも、このまま高学歴ニートになるわけにはいかなかったので)比較的ホワイトらしいというネットの評判を鵜呑みにし、素材メーカーやIT系の企業の選考を受けてはいた。

エントリーシート(履歴書)はおそらく30社ほど出していたと思う。

今思うと、嘘や誇張で塗り固めたとはいえ、よく30社もエントリーシートを書けたなと思う。幸いにも「早稲田大学法学部」という高い学歴のおかげで、書類選考の時点で落ちることはあまりなかった。

しかし、極度のあがり症である私は、面接が本当に苦手だった。

面接で「志望動機」や「学生時代に頑張ったこと」を噛まずにスラスラ言えた記憶はない。面接官に質問されても、緊張のあまり終始ズレた回答をしていたと思う。

また、根暗な性格なため、選考でグループディスカッションがあった際も大して発言なんてできていなかったので「何もせずにただそこにいるだけ」という状態だった。

夏を過ぎると、だんだん選考自体も無くなってくる。ほとんどの就活生はどこかしらの内定を持っているし、企業側も(優秀な学生はだいたい6月中には就活を終えているので)積極的に採用活動を行う姿勢も無くなってきているようだった。

私は焦った。

このままどこからも内定をもらえなければ、就活留年するしかない。大学にいる間は、留年することなくストレートで4年生まで上がってこれたが、一年浪人しているので、「一浪+一留」のプラス2というのは絶対に避けたかった。そして、仮に就活留年したとしても、今年の就活も頑張れなかった自分が来年の就活を頑張ることができるとは全く思えなかった。

とにかく、どこでもいいから内定が欲しかった。

しかし、無駄にプライドが高かったので、名前も聞いたことがない企業には行きたくなかった。傲慢だが、無名の企業に行くことになっては「早稲田大学法学部」というせっかくの高学歴を無駄にしてしまう気がしたし、高い学費を払って教育を受けさせてくれた親にも申し訳がなかった。そして何より、周りの友人たちが皆揃って大企業に行くので、自分だけ無名の企業では格好がつかない気がした。

2017年10月、私はまだ選考を行っている企業をネットで必死に調べていた。

「まだ選考をやっていて、ある程度知名度の高い企業はないだろうか・・・」

その時、ある企業の名前を見つけた。

その企業は、一般向け電化製品の製造を行っている大手メーカーで、私が子どもの頃から斬新なデザイン・機能をウリにした商品をいくつも販売していたが、数年前ほどから経営がうまくいっておらず、業績も赤字が続いていたため、当時の就活生の間では比較的人気のない企業だった。

私は、その企業の第四次選考がまだ行われていることを知った。

前述の通り、その企業はあまり人気のある企業とは言えなかったが、知名度は十分だったので、私は選考を受けてみようと思った。

募集要項をよく見ると、エントリシートの提出期限が今週中までだったので、私は急いで履歴書を作成しなければならなかった。

私は、志望動機をなんとか捻り出し、学生時代に頑張ったことを誇張しつつもなんとか書き上げ、エントリーシートを提出した。確か10月中旬くらいだったと思う。

それから一週間経ち、その企業から「書類選考通過」のメールが届いた。書類選考に通過した学生は、その企業の支社がある埼玉県某市で一次面接を受ける流れになっていた。

2017年10月下旬某日、私はその企業の一次面接に向かった。

その日は10月にしてはかなり寒く、地面を叩くような強い雨が降っていた。

(つづく)


退職まで、あと507日。


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