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映画レビュー|「ありがとう、トニ・エルドマン」

2016年製作。マーレン・アーデ監督・脚本の映画です。

好き嫌いが分かれる映画だと思いますが、私は非常に面白かったです。
2時間42分という長尺映画ですが、ゆっくり淡々と進む話にどっぷりと浸かりました。

娘をイライラさせる父親の行動、職場の上司との関係性や、同僚との密室の関わり合いなど娘のイネスの周囲で数々のエピソードが描かれます。時には、なぜそのエピソードを?と思われるものもあるのですが、この積み重ねで独特のグルーブを作っていく映画です。

最後のエピソードで少しゆったりとチルな雰囲気を演出し、その流れのままエンディングのザ・キュアーが流れるところまで。まるでクラブDJが選曲を積み重ねて作るグルーブ感と同じ作用、同じ構造を感じました。

基本的には音楽の無い映画でありその点も凄く好きなポイントなのですが、それだけにイネスがホイットニー・ヒューストンを歌う場面がとても印象的に描かれます。なお、親父が弾くキーボードの音色がドンピシャでこれまた最高です。

また後半では誕生日パーティーのくだりから一気に流れが変わり、ブルガリアの魔除けを持ち出してくるあたりは本当に天才かよと思いました。魔除けと抱き合う公園のシーン。あの映像の強度といったらスゴイです。

最後に、この映画は邦題が珍しく秀逸です。
原題は「TONI ERDMANN」で、邦題は「ありがとう、トニ・エルドマン」。
本当に最後にはありがとう、と言いたくなる。そんな映画でした。

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