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映画レビュー|「さよなら、僕のマンハッタン」|ジェフ・ブリッジスの哀愁が決め手

物語は大筋は、主人公のトーマスが、親父の不倫現場に遭遇してしまい母親のためになんとか不倫解消させようと躍起になる話。だた、お相手がえらい綺麗な女性だったもんだから、別れさせようとしたのにあれ?自分もハマっちゃってる?といったところで…。

ラスト15分くらいまでは、もう親父と愛人と息子のドロドロの関係で「おー、この暴露は痛すぎる…」とつい声が出てしまうくらい救いが無い。
ただこのドロドロの関係がメインディッシュではなく、あくまで全てを綺麗に回収させるオチがあったという事なんですね。いやドロドロだけで終わらなくてほんと良かったです。途中、不安になりました。

物語がオチへ動き出すきっかけでもある、親父のオフィスに飾ってあった新聞の切り抜き。この切り抜き1枚で、息子くんが隣人の正体を全て悟ってしまうあたり、かなり強引な手腕ではありますがやっぱりオチがないと観客も「え、、ドロドロ見せられて終わっちゃったよ」となりますから個人的には満足です。最後は、ちょっと泣きそうになりました。

タイトルにもあるとおり、舞台であるニューヨークの良い雰囲気が感じられるシーンが多く、ボロボロのアパートやソファがなぜこんなにかっこよく見えるのだろうと思います。いつかニューヨーク行ってみたいなぁと思わされました。

しかも、ニューヨークの映画で流れる曲がサイモン&ガーファンクルとボブ・ディランでしょ。かなりベタな演出でふと笑ってしまいましたが、使われている曲の名前や歌詞を調べてみたら、ただの雰囲気作りで選んだのでは無いことがよくわかりました。

ミミからそっけない態度を取られて落ち込むトーマスが初めて隣人のW・Fの部屋に行って話を聞いてもらうシーン。サイモン&ガーファンクルの「Blues Run The Game」と言う曲が流れます。この曲はもともとアメリカのフォーク歌手Jackson C. Frankの曲のようでかなり沢山のアーティストがカバーし続けている有名な曲です。歌詞の主題を自分なりに解釈すると「どこの街にいても、誰と居ても憂鬱がつきまとってる。憂鬱が自分の近くでgameしている(遊んでいる)」という内容で映画のシーンとシンクロしています。

他には、ボブ・ディランの「ジョアンナのヴィジョン(まぼろし)」も使われていますが、この曲はモロに映画との関連性が出ていますね。ジョアンナと言う役名は寧ろこの曲から拝借しているのでしょうか。

親父の会社のパーティの後、トーマスはある告白からミミに軽蔑され、雨の中一人でトボトボ帰るとても寂しいシーン。ここではサイモン&ガーファンクルの「ニューヨークの少年」が流れます。この曲、原題は「The only living boy in New York」なので、ニュアンスとしては「(たった一人の)ニューヨークの少年」ということになります。映画にぴったりですね。しかも歌詞の内容も、友人が飛行機で遠くに旅立ってしまうなか僕は一人でニューヨークにいるよ…という内容でして、トーマスもミミがクロアチアに留学してしまう中で取り残されるという点もそっくりです。

というわけで、まぁそもそも隣人のW・Fが執筆した小説の名前が「ニューヨークの少年」なわけで、本作の脚本もこれらの曲ありきで発想されたものなのでしょうね。

最後に。
ピアース・ブロスナンがかっこいのは勿論ですが、風変わりな隣人W・F・ジェラルドを演じたジェフ・ブリッジスのヨレヨレおじさん具合がさいっこうにカッコ良かったですね!!髪型セットしてないのにオシャレ、サングラスに葉巻姿にいいなー、あの風貌。

トーマスとW・Fが初めて出会ったシーンで、根掘り葉掘りトーマスに質問するもんだから、少しそっけない態度を取られます。あの時、W・Fは「ヤベー隣人と思われたかな、やっちゃったー…」という感じで、下を向いて項垂れます。このシーンなんでこんな落ち込んだのかな?と気になっていたのですが、オチを経てみるととても納得できますよね?このあたりの演出も素敵だし、長年の思いがあるのだから初めて話しかけた時はW・Fも緊張してたんだろうなーと思うと、ますます彼が愛らしく感じられます。
このあたりを思い返しつつ楽しめるところもこの映画の魅力ですね。

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