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月刊読んだ本

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毎月読んだ本をまとめる。もっと本を読めという自分への戒め。
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記事一覧

月刊読んだ本【2024.04】

中世への旅 騎士と城 ハインリヒ・プレティヒャ/平尾浩三 訳 (白水Uブックス)  世界史は苦手だけど、こういう時代がフィクションじゃなくて実際にあったんだって感動する。  フィクションに出てくる中世、騎士、城というものにはきちんと元ネタ(?)があって、それを知らず知らずのうちに摂取していたけれど、存外丁寧に描かれているのだと再認識した。漫画家の人が雰囲気で描いているわけじゃなくて資料に基づいて描いているとわかった。  資料として残っているものと残っていないものがあって、

月刊読んだ本【2024.03】

コーヒーの科学 旦部幸博 (ブルーバックス)  普段何気なく飲んでいるコーヒーにもこんなに奥深い世界があるんだ。そしてまだわかっていないことも多くあることが逆に魅力だと思う。  そしてコーヒー飲みたくなる。小学生の頃から毎日飲んでいるというのに。本当においしいコーヒーを僕はまだ知らない。 悪魔の手毬唄 横溝正史 (角川文庫) ウィザーズ・ブレイン アンコール 三枝零一 (電撃文庫)  これでホントの終わり。  本編未収録の短編と描き下ろし。  20年以上シリーズを追

月刊読んだ本【2024.02】

不安障害がよくわかる本 福西勇夫 監修 (主婦と生活社)  よくわかる話だった。そういうわかるじゃないか。  僕は特に他人の視線が気になる。他人に見られるの怖いし、他人の目を見れない。なに見とんねん、て言われると思っている。他人の目が怖くて、他人が後ろにいるとポケットに手を入れるのにすら躊躇してしまう。最近はそこまででもないけれど。そしてそれが病気なのかどうかは正直良くわからない。あと、人前で話すもの怖い。それは吃音症だからというのもある。大いにある。そのせいなのか、それ

月刊読んだ本【2024.01】

恥辱晩年の子供 山田詠美 (講談社文庫)  才能しかない。もはや怖い。  収録されている短編のほとんどが、子供時代のことを描いている。子供の時のあの感覚を。どの感覚? そんなもの忘れてしまった。でも読めばそんな感覚を持っていた気がするんだ。それはきっと、子供には子供の社会があって、それは小さなコミュニティで、そこしか世界を知らないからそんな気がするのだ。犬に噛まれて狂犬病になると絶望する少女は、飼い犬は大丈夫だと母親に言われるまで知らなかった。新しく知ったのは狂犬病という

月刊読んだ本【2023.12】

どろどろの聖人伝 清涼院流水 (朝日新書)  清涼院流水によるどろどろキリスト教シリーズ第3弾。  知らない話ばかりでおもしろい。ていうかすぐ処刑しすぎでしょ。それだけキリスト教が脅威的な存在だったというのもあるだろうけれど。 SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと チャールズ・ユウ/円城塔 訳 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)  メタフィクションの展開になって複雑だった。ループに囚われた母と失踪した父に思いを巡らせる自分がループしている。しかも未来の自分から届けられ

月刊読んだ本【2023.11】

なめらかな社会とその敵 鈴木健 (ちくま学芸文庫)  文庫本のふりをしているけど論文だった。著者の提案する伝播投資貨幣や伝播委任投票がどれほどうまく機能するかは実際にやってみないとわからないよなと思うし、それをやるということは、新しい価値観を受け入れることでそう簡単に浸透するとは思えない。そういう問題点がある。それが敵であり、どのように向き合っていくかは難しい。現状のパレスチナ問題やウクライナの事情等を目の当たりにして次の時代を考えなければならないのは現代を生きる我々の使

月刊読んだ本【2023.10】

人生は図で考える 後半生の時間を最大化する思考法 平井孝志 (朝日新書)  八重洲ブックセンターの八重洲本大賞ノミネート作なので読んだ。  あとは酒を喰らって死ぬだけの僕にはあまり意味のない本だった。50歳ぐらいになればなにかわかるのかな。歳を取ってから新しいことにチャレンジするという精神は素晴らしい。↑→の方向に矢印が伸びている図と↓→に伸びている図が混在していて混乱した。 ラウリ・クースクを探して 宮内悠介 (朝日新聞出版)  すごすぎる。ラウリ・クースクという天

月刊読んだ本【2023.09】

デニムハンター 舞城王太郎/『群像』2023年10月号 (講談社)  私達マイジョウハンターは西暁町へ続く穴を探している。舞城の呼ぶ声がする。穴の中をさまよっているその時間こそが宝なのかもしれない。  何があるかわからない穴の奥は不気味で恐怖を感じる。でもそこには宝があるかもしれない。穴の奥に冒険に赴くのは危険だからやめろというが人はそういうものに惹かれる。主人公は宝探しに来たわけじゃなくて、宝を探しに来て遭難した人を探しに救助に来たのである。助けないといけないという使命

月刊読んだ本【2023.08】

方舟は冬の国へ 西澤保彦 (双葉文庫)  超面白い。そんな展開の話だと思ってなかったけど、よく考えたら西澤さんそういうの好きじゃん。普段はそれを前提にミステリを構築するけど、今作は逆にそこをミステリにしていたのが良かった。  主人公たち三人が高額の報酬をもらって別荘で家族を演じる。その裏にはいったいどんな陰謀があるんだっていうのが話の主軸なわけだが、その着地点が意外で文庫本の裏の紹介文にあるもののとおりだった。そんな話にはならんやろとかどんなふうにそんな着地点にたどり着く

月刊読んだ本【2023.07】

英文法の楽園 里中哲彦 (中公新書)  先月、先々月と読んだシリーズの第3弾。  例によって付箋をいっぱい貼っているけれど、それが頭に入っているわけではない。定期的に読み返して知識にしたいものである。なぜ動名詞のみを目的語にするかとかそういうのは学校じゃ教えてくれなかった(enjoyのあとは~ingと形式的に教えられた記憶がある)ので、疑問が解決してよかった。 カラー版 ビールの科学 渡淳二・編著 (ブルーバックス)  ビールが好きなのに、ビールのことそんなに何も知ら

月刊読んだ本【2023.06】

▽先月分 世界の合言葉は森 アーシュラ・K・ル・グィン/小尾芙佐・小池美佐子 訳 (ハヤカワ文庫)  僕が本書のタイトルを知ったのは10数年前になる。人類史上最高のゲームである『サガ・フロンティア2』のラスボスがこの技を使ってくるのである。『世界の合言葉は森』という技を。サガシリーズでは、ディレクターである河津神の趣味なのか、武器や技の名前にSF作品の名前を引用することがある。そのひとつがこれだ。この印象的な技の名前は何だと調べてみたらSF小説のタイトルだと知った。そして

読んだ本【2023.05】

読書からはじまる  長田弘 (ちくま文庫)  読まれない本に価値がある。図書館の本を全部読めるわけがない。でも、それはそれだけの書物を有している文明という証である。確かに。それは知識の量である。 「蓄える」文化という考え方はすごく納得がいった。  読書するための椅子の話、子供の本の話。そういう視点で読書に向き合ったことはないので新鮮だった。  それから解説がとてもよかった。 サミュエル・ジョンソンが怒っている リディア・デイヴィス/岸本佐知子 訳 (白水Uブックス)  

読んだ本【23.04】

13歳からの地政学 田中孝幸 (東洋経済新報社)  全人類読んだほうがいい。中学生の時にこういう話を聞きたかった。でもいま読めたのは幸運なことなんだ。世界には文字が読めない人だって大勢いる。日本人は日本語が読めて日本語の本が出版されて容易に手に取れることを大いに感謝しなければならないし誇りに思わないといけないと思った。それと同時にそうではない国のことを考えなければならない。自分はたまたま恵まれた環境や時代に生まれ育っただけだとあらためて自覚する。中学生のときに聞きたかったの

読んだ本【23.03】

祐介・字慰 尾崎世界観 (文春文庫)  才能しかなかった。彼の音楽は全然知らないから逆に新鮮な気持ちで読めた。自伝的小説、かどうかは知らないけど、かつての自分がいた世界を描くのは勇気がいることのようで一種のオナニーでもあるなと思った。やるせなさやもどかしさが寄り添っていた「祐介」だった「世界観」が痛々しくも愛おしくもある。少なくとも私にはもうそんな若さはないのかもしれない。 屋根裏に誰かいるんですよ。 都市伝説の精神病理 春日武彦 (河出文庫)  こういう本を永久に読ん

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