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読んだ本【2022.11】

オーブランの少女

 深緑 野分 (創元推理文庫)

 少女をテーマにした短編集。
 第七回ミステリーズ!新人賞佳作入選作の表題作他。
 名前は知っているけど読んだことのなかった作家。文章がきれいで、色鮮やかな描写がよかった。ミステリだと思って読み始めたけどそんな雰囲気はあまりなかった。こういう作風もミステリだし、そういうやり方もあるのかと気付かされた。
 あと、なんでそんな言葉知ってるのって言葉がたまに出てきてすごい。

ビブリア古書堂の事件手帖4~栞子さんと二つの顔~

 三上 延 (メディアワークス文庫)

 シリーズ4作目。
 江戸川乱歩を題材にした長編。
 リサーチがすごい。しかも江戸川乱歩って実在したんだぜ。架空の人物として読んでも読める物語的な面白さがあった。それはもちろん作者の物語の構成力のなせる技だろう。そしてミステリとしてもしっかり面白い。伏線が丁寧に張られていて好感度が高い。
 江戸川乱歩読んだことないので来年読みます。

月と太陽の盤 碁盤師・吉井利仙の事件簿

 宮内 悠介 (光文社文庫)

 碁、それも碁盤師を題材にしたミステリなんて面白いのかと思って読み始めたら、めちゃくちゃ面白いやんけ、となった。
 思い返せばデビューは盤上の夜。しかもミステリ育ちの作者だからしっかりミステリとしても上等。物語的というかフィクション的なイキイキとしたキャラクタ造形もいいですね。

改良

 遠野 遥 (河出文庫)

 第56回文藝賞受賞作。
 勃起って書きすぎだろと思わざるをえない。いいけど。内面は女性なのに肉体の男性の部分が反応して苦しいとか悲しいとかいうのもテーマのひとつだからそれでいいのだろう。
 でもそういうことでもないのかもしれない。女装する主人公はただ美しくなりたいだけみたいなことが解説やらに書いてある。個人的には「女装」なんて言葉にこだわり過ぎなのではないかと思う。好きな格好すればいい。男だとか女だとかそんなことを世間は言うかもしれないけれど、自分はただこの服を着たいから着ているでいいんじゃないのか。もちろん、その「世間」にどう思われたいかっていう話でもあるのだろうけれど。改良が必要なのは人々の意識なのだろう。

計画結婚

 白河 三兎 (徳間文庫)

 何ひとつ共感はできないけど、小説としては面白かった。
 現代人としてはそもそも結婚式なんてナンセンス。世間や業者に流されているだけになりたくない。そして他人の結婚式に行きたいとも思わない。でもそんな感情の人間は描かれていなかったように思う。
 友達思いの花嫁のことを周りの人々の視点で描いているけれど、キャラクタがフィクションすぎる。リアリティを求めているわけではないしフィクションだからそれでいいけど嘘臭すぎた。
 それから最後の結論はそれでいいのか? 優しい世界だった。
 あと、白河さんの小説ほぼ全部読んでおいて今更だけど、文章全然好きじゃない。

殊能将之 未発表短編集

 殊能 将之 (講談社文庫)

 短編まで面白いのかよ。
 適度にユーモアがありつつ面白い物語を書ける才能を失ったのはつらいことです。
 最後に収録されている『ハサミ男の秘密の日記』もフィクションのような面白さで書けるのだから羨ましい。

あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた

 アランナ・コリン・著 矢野真千子・訳 (河出書房新社)

 アレルギーや精神病やらに腸内細菌が関わっていると聞いたことはあったけれど、それ以上のことが書かれてあった。
 かいつまんで要約すると、21世紀の病は腸内細菌が引き起こしているのではないかということ。それは抗生物質の発見によって人々の腸内細菌の種類が変わってしまったからだ。でないとこの50年で肥満人口が増えた理由の説明がつかない。そしてそれはマウスの実験やらで確かめられている。
 他にも腸内細菌叢の変化には食物繊維の摂取量が減ったこともあげられたり、帝王切開で生まれた子供は膣内の細菌に触れていないから免疫が落ちるなど、興味深い話題が尽きない。
 昨今のなんでも除菌しまくる風潮はどうなのと思っていたが、そういう次元ではない衝撃がある。あらためて人は細菌と共生しているんだと気付かされた。
 いずれまとめたい。

地図帳の深読み 鉄道編

 今尾恵介 (帝国書院)

 地図帳の深読みシリーズ第3弾。
 今回は鉄道編。
 地図帳を見ていて、こことここの鉄道つなげたらいいのにとか思う場合はたいてい昔はあったけれど採算が取れない等の理由で廃線になってしまっていたりする。そして直線で結べばいいのに変に曲がっている場合はたいてい当時の技術ではトンネルを掘るのが難しくて山を迂回するコースになっていたりする。というような地図読みあるあるを数多く具体例を上げて載せてくれている。
 第4弾も期待。

あいにくの雨で

 麻耶 雄嵩 (講談社文庫)

 うゆーさんどこ。
 メルカトルシリーズのスピンオフというか番外編というか、どっちでもなくてノンシリーズだった。
 ていうか登場人物多すぎ。会話の中に出てくるクラスメイトの名前はその会話の中にしか出てこないのだろうと思いながら後半重要キャラかもしれないと思ってしまうし、でも結局その会話の中にしか出てこないから固有名詞いっぱい載せるの疲れるのでやめてほしい。アンナ・カレーニナかよ。

 犯人の独白はよくわかる話だ。そして読み終えた今日はあいにくの雨だった。

日本一の洗濯屋が教える 間違いだらけの洗濯術

 洗濯ブラザーズ (アスコム)

 常識を覆す情報ばかりだった。
 ずっと部屋干しだけどにおったことないから、部屋干しのニオイがどうたらって話題に全く共感できないと洗剤のパッケージを見る度に思うことが想起された。そんな都市伝説みたいなものに悩んでいる人にもアドバイスがあってよかった。ていうか部屋干しの方がいいという話だった。たしかに。外に干すと紫外線のダメージはでかいし、花粉やホコリもつくものな。
 その他洗い方や洗剤の選び方は参考になった。

 横溝 正史 (角川文庫)

 久しぶりの横溝。
 気が狂っていたという結論、現代人ももっと多様してほしい。そして犯人を自殺させるのも横溝ならではというか、最後の話の終わり方もだけどそれでいいのか……? てなる。今の時代に読んでも全然通用する内容ばかりだし、横溝正史が現代に生まれていても全然売れっ子作家になりそう。21世紀を舞台に彼が小説を書いたらどうなるんだろうか、そんなことを思わせる。
 そんな短編集。

銀の檻を溶かして 薬屋探偵妖綺談

 高里 椎奈 (講談社文庫)

 第11回メフィスト賞受賞作。
 そろそろ積んでいるメフィスト賞受賞作を読もうと思って読んだ。
 普通にミステリだった。文章も伏線も丁寧でよかった。ただ、妖怪設定である意味がよくわからなかった。シリーズを読めばわかるのかもしれないが、1作目で妖怪である必然性を生かさないとなんで? ってなる。文庫は表紙絵で損をしていると思った。おっさんは手に取りづらいぞ。

セピア色の凄惨

 小林 泰三 (光文社文庫)

 全編ふざけてんだべ、て感じが良かった。こういうのでいいんだよ。
 倫理観のバグった狂ったキャラクタを描ける稀有な才能を亡くしたのは惜しいことであるなぁ。小林泰三のとらえどころのない狂気小説は別世界に案内してくれて良い。

七つの黒い夢

 乙一・恩田 陸・北村 薫・誉田 哲也・西澤 保彦・桜坂 洋・岩井 志麻子 (新潮文庫)

 ダーク・ファンタジー七篇と文庫裏の紹介文に書いてあるけど、いうほどダークではなかった。というか雑誌に掲載したけどどこにも行き場がなかった作品を寄せ集めて本にしてみましたという感じだった。久しぶりに乙一読んだ。乙一だった。誉田哲也の作品が特に良かった。誉田哲也の本読んだことないので今度読もうと思う。あと、西澤保彦目当てでこのアンソロジーを手に取った気がするけど、安定の西澤保彦の世界観だった。目当ての作家と知らない作家を読めて新しい発見があったり安心があったりするのでこういう文庫アンソロジーは割と好きです。


 ――以上14冊。


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