セラムン二次創作小説『Driver’s High(ネフまこ)』


まことが本当にバイクの免許を取ってしまった。

この日に向けて、教習所の費用を稼ぐ為、学業とバイトを頑張っているのを傍で見ていた。

いや、俺自身も学業とバイトの両立で忙しく、実際はこの期間中は会えていなかった。

LINEのやり取りだけで、電話はほぼ無し。恋人としての時間が減っていた。


ほぼ会えない日が続いた原因であり、余り乗り気では無かったバイク免許取得。

わがままを言えば取らないで欲しい。もっと俺と会って欲しい。その気持ちは大きい。

しかし、せっかく目標を持ち頑張っている恋人を俺のわがままで振り回したくはなかった。それにはるかとの勝負に負けて、折れたのだからグチグチ言うのも男として情けない。

しかし会えないのは寂しかったが、俺も同じ様にバイトのシフトを増やして忙しくしていたからあっという間に時が過ぎた気がする。


「免許取れたぜ!」


それまではLINEでどんな感じかやり取りしていたのだが。一発合格した事が余程嬉しかったのか、電話して来た。

声も大きく、嬉しそうなのが電話越しにも伝わってくる。


「おお、そうか。おめでとう」

「サンキューな、勇人」

「いや、俺は何も」

「最初、反対してたろ?だけど黙ってわがまま聞いてくれて。相談にも乗ってくれて、感謝してるんだ」

「真剣だって事が伝わって来たからな。それに、まことなら一発合格って信じてたぜ」


これが嘘偽り無い俺の本心だ。それに一発合格してくれないと、会えない日が長引くのも嫌で。出来る限りの協力を惜しまないように縁の下の力持ちになっていた。


「じゃあ、会う事も解禁だな」

「ああ、いつでもいいよ。もう家に帰ってきたから」

「早速、今から行くよ。渡したいもんもあるし」

「渡したいもの?何だそれ?」

「まぁ、それは着いてからの楽しみだ」


電話を切ると俺は、早速まことの家へと向かった。


数分後、まことのマンションの前へ到着する。

普段だとそのまままことの部屋へと向かうのだが、今日は違う。そのままここに留まり、まことに電話をする。


「まこと、着いたぜ」

「本当に来たのか?って上がって来ないのか?」

「見せたいものがあるから、マンションの前に出て来てくれ」


訝しがるまことを電話で外に来るよう誘導する。


「どうしたんだよ、外に呼び出したりなんかして」

「まこと、じゃあ目、瞑って。俺が誘導するから」

「何だよ」

「いいから。俺に掴まって」


半ば強引に目を瞑らせ、俺の腕に手を絡ませて歩かせる。

恐る恐る歩くまことを優しくリードし、目的のモノがある所まで誘導した。


「じゃあ、目開けていいぜ」


その言葉を聞いたまことはゆっくりと目を開ける。

そして視界に飛び込んで来たモノを見てまことは驚き、絶叫する。


「え?バ、バイク?」

「そう、まことが頑張ってたのと、誕生日プレゼントだ。改めてまこと、バイクの免許取得と誕生日おめでとう」

「ありがとう。いや、でもこんな高いもん、貰っちゃっていいのか?」

「どうぞ、遠慮なく貰ってくれ。頑張ってたから、何かしたくてな」

「勇人!!」


珍しく泣きながら俺の胸に抱き着いておんおん泣いている。

喜ぶ顔が見たくて、思い切って奮発した甲斐があったってもんだ。って今は泣いてるが、嬉し泣きだろう。

取り敢えずは教習所の費用だけしかバイトで稼げてないだろうし、バイクを買うお金までは無く、またバイトの日々になると予想した。

ならば、バイクは俺のバイト代で買ってやろうと考えに至った。まぁ、何のことは無い。また忙しくして会える日が少なくなるのを懸念した下心からの行動だ。

しかし、これはまことにはトップシークレットだ。


「自分で買おうと思ってたから、嬉しい」

「またバイト増やそうとしてたろ?」

「……バレてたか」

「お見通しだ」

「あんなに反対してたのに、ここまでしてもらって、私、何てお礼したらいいか……」

「それは身体で払ってもらうから無問題!」

「バカ!」

「ハハハ、冗談はさておき、頑張ってたからな」


身体で払ってもらいたいのも本音だが、まことの頑張りに心撃たれた。動機がどうあれ、本気で頑張っている姿を見せられると、心の狭い自分が恥ずかしくなる。


「冗談には聞こえなかったけど?」


流石、見透かされてるな。

けど、俺はこれとは別に下心が動いていた。

バイクと言えば、二人乗りすると危ないからくっつける。つまり、合法的にバックハグで密着してイチャイチャ出来る。そこに気付いたオープンスケベな俺は、その瞬間から何故こんなに反対していたのか?バカバカしくなった上に、どうでも良くなった。


「まこと、乗る時は俺も後ろに乗ってやるから」

「心強いよ。是非、宜しく頼む!」


喜ぶ顔に、俺が下心から申し出たと微塵も思っていないまことにちょっとだけ罪悪感が生まれる。


「じゃあ、早速ちょっとだけ乗ってみるか?」

「ああ、そうしようかな。でも、メット一つしかないよ?」

「……本当だ」


完璧な計算の下、準備を進め出来た俺だが、ここに来て大誤算が生じた。

ヘルメットを一つだけしか買っていなかったことだ。

早速、イチャコラ二ケツが出来ると喜んでいたが、お預けを食らった形になり、己の詰めの甘さを呪った。


「よし、決めた!今から買いに行く!」


下心剥き出しで即断即決でメットを買いに行く事を決める。


「いつでも乗れるから、またの機会でいいよ」


いや、そう言う問題ではないんだけど。


「まことがそう言うなら、仕方ない」


なら、今日は久々のまことを堪能するとしよう。





おわり



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