セラムン二次創作小説『恋って言うから愛に来た(クンヴィ)』




セレスはこの日、仕事でゴールデン・キングダムへと来ていた。その次いでに、とヴィーナスからクンツァイトへの手紙を預かっていた。渡して欲しいとの事だった。

勿論、中身を見てはいない。ラブレターだろう事が推測される為、赤面したくないからだ。理由はそれだけでは無いが。


「ヴィーナス様から預かって来た手紙ですわ」

「ああ」


クンツァイトを見付け、早速手紙を渡す。

相変わらず仏頂面を下げて気難しい顔をしているとセレスは気を引き締めた。緊張する。キングやクイーンとは違う意味で緊張感漂う雰囲気を纏っている。

言葉少ななところが更に緊張感を与えるし、圧力も半端では無い。流石は四天王リーダーといったところだろうか。


「お前は中身を読んだのか?」

「いいえ。持って来ただけです」


早速中身を見たクンツァイトはセレスに質問する。その時、クンツァイトの眉がピクっとしたのをセレスは見過ごさなかった。微かに動いただけだったが、それでもセレスは変化を敏感に感じ取った。


「これは、どういう事だ?」


クンツァイトはセレスに開いた手紙の中身を見せて来た。そこに書かれた文字に、セレスは驚愕し、固まった。


「“こい”……ですか?」


A4の紙に書かれていた文字は、“こい”の二文字。それも真ん中に特大で。

そして、よく見ると右下に小さな文字で文章が羅列されている。


「“今晩来なければ、殺す”、とも書かれていますね」


何と言う手紙の内容だろうか。ラブレターと言うより挑戦状。いや、果たし状か。はたまた殺害予告。これは酷い。クンツァイト様が余りに不憫。

そして、こんな手紙を運ばされた私はもっと可哀想。カルテットのリーダーなのに、権力は何処へやら。

いや、カルテットの中で自分だけがこんな役回りであれば惨めだが、全員が同じ立場だからまだ救われていた。尤も、ジュノーだけは些か違っているようだが。


ーー遠くの方でジュノーがネフライトに「もう来るな!」「真面目に仕事しろ!」と言う言葉が聞こえ、四天王に凄い口の利き方だとある意味感心しつつ、同情しながらセレスはクンツァイトと向き合っていたーー


「いかが致しますか、クンツァイト様?」


手紙の内容からして、今夜のクンツァイトは予定が無いことをヴィーナスは把握しているとセレスは勘づく。

と言うか、この二人は何故か互いにスケジュールを事細かに把握しているのだ。知っていなければ的確に支持して言伝等を預けられないだろう。


「亥の刻に行くと伝えておけ」

「御意!」


クンツァイトから言葉を受け取ると、セレスは踵を返してその場から立ち去った。

そしてその脚でヴィーナスのもとへ行き、言伝をそのまま伝えると。


「はあ?またわっかりにくい言い方して来るわねぇ!亥の刻って一体何時なのよ?アイツは何時代の奴よ?本当に20世紀生まれなの?」


古い言い回しをされ、ヴィーナスは分かりやすく憤慨する。


「まぁ何にしろ今夜来るって事ね!ありがとう、セレス」

「いえ、楽しんで下さい」


怒りながらもどこか楽しそうなヴィーナスにそう告げると、セレスは足早にその場を後にした。



ーーーそしてその日の午後十時ジャスト



コンコンッとヴィーナスの部屋の扉を叩く音と共にクンツァイトが言葉を発する。


「俺だ」

「空いてるわ」

「失礼する」

「クスクスッ相変わらず真面目」


ドアを開けながら丁寧に挨拶をするクンツァイトをヴィーナスは楽しそうに笑う。


「来いって言うから、会いに来てやったぞ」

「素直じゃないわね!もう三ヶ月も会ってないのよ?それに、十時って……これじゃあ本当に夜這いじゃないの!」

「嫌か?」

「嫌じゃない、けど……亥の刻なんて昔の言い回しして、何時に来るか分からなくて待ちくたびれたわよ」

「そうか、それはすまないな」

「本当にすまないと思って……んッあっ...///」


クンツァイトの態度に対して文句を羅列していると唇を奪われる。ワンパターン化したお決まりの行為だが、久しぶりのキスにヴィーナスの身体の力が抜け、身を任すと、そのままお姫様抱っこしてベッドに寝かされてしまった。


「ちょっ展開!!!」


急展開の状況に着いていけないヴィーナスは狼狽えて抗議しようとしたが、クンツァイトの慈愛に満ちた優しい眼差しにそれ以上何も言えなくなる。


「お前もそのつもりで呼んだのだろう?戦闘服では無く、ドレスを着ているのが何よりの証拠だ。愛している、ヴィーナス」

「……ズルいわ」


二人の夜は、始まったばかりである。





おわり


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