セラムン二次創作小説『Give Me A Reason(ゾイ亜美)』


「これ、僕からの誕生日プレゼント」

「え?貰う義理なんてない!」


当然予想していた反応がテンプレートの様に返ってくる。

まぁ当然の反応か、とそれ程ショックは受けなかった。

1000年を生きる種族である月の住人は誕生日と言う日を余り特別に感じていない。

ましてや護衛で顔を合わすだけの顔見知りのイケメンにプレゼントなんて受け取りたくないだろう。


「そう言わずに素直に受け取っとけばいいんだよ」

「でも、どうして……?」


知っていたのかって?

プレゼントをくれるのかって?


「貴女のお姫様から聞いてね」

「そう、だったの」


嘘。俺が聞き出したら教えてくれた。が正しい。

いつなのか聞いて、マーキュリーの誕生日に護衛としてつける事も全て俺が仕組んだ計算。


「私自身も忘れていたのに……」


毎年祝う事はしないとは聞いていた。

何の不思議も無いけど、せっかくの誕生日だからこっちとしては祝ってやりたくて。


「月の住人には特別じゃないって知ってるけど、地球人の俺からすると尊い事だから、祝わせて欲しい」


敢えて何歳になったのか?なんて野暮な事など聞かず、祝いの言葉を述べる。

きっと歳を聞いてしまうとしり込みしてしまう。そして引くかも知れない。

見た目は若い。でも確実に歳を重ねているに違いない。

地球人の俺たちは月の住人とは違い、短命。どれだけ尊い事か。


「マーキュリー、誕生日おめでとう。産まれて来てくれてありがとう。出逢えて良かったと心からそう思ってる」


まるで口説き文句かって程浮いた言葉がスラスラと出てくる。自分自身でも驚く程に。


「あり、がとう」

「プレゼント開けてみて」


中身をその場で開けるよう促す。

慌てて包装を開けて確認したマーキュリーは不思議な顔をしていた。


「これは?」

「チェスって言うんだ。知らない?」

「ええ、聞いた事なくって。ごめんなさい」

「謝る事じゃない。王族の嗜みでね、頭を使うゲーム。頭のいいマーキュリーにピッタリだと思ってね」


前から彼女にプレゼントしたかった物だ。

こういう特別な日に贈らないと、何でもない日にあげても受け取らないと思ったから。


「やり方、分からないわ」

「大丈夫♪今度来た時に教えてあげる」


出逢う事すら許されない月の住人の、それもプリンセス付きの守護戦士と次会う約束なんか許されることではないとは分かってはいるけど。

次に会う意味や理由が欲しかった。

そして彼女とチェスをしてみたかったんだ。

きっといい相手になるだろうから。


「分かったわ。その時はよろしくね」


次に会う約束などしてはいけない。

彼女だってそれを分かっているはず。

だけど互いの主が逢瀬を繰り返す限り護衛は続く。


「そうだわ、ゾイサイト、貴方の誕生日はいつ?」

「6月23日だけど」

「もう4ヶ月近く前に終わってしまっているのね!」


心底残念そうに落ち込む。

きっと次の俺の誕生日に何かしようと考えてくれてるんだと容易に想像出来る。

今すぐ祝ってくれても全然いいけど。

まぁ来年の楽しみとして取っておこうか。

来年まで主たちの付き合いが続いてくれる事を願って。


禁断の恋ではあるが、2人が愛し合っているのだから別に俺は咎めたりしない。

お陰でこちらもいい出会いがあったのだから。


おわり



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