セラムン二次創作小説『MERMAID DUET(ゾイ亜美)』


会う約束より早くバイトが終わったからその足で彼女の家へと向かった。
驚かそうと連絡を入れずに行ったら、チャイムを鳴らせど出てこない。
留守とは珍しい。亜美も早めに出たのかな?なんて思っていた。
何処にいるのか連絡を入れようと思い、ここで漸くスマホを見る。
数件のLINEが入っている事に気づき、確認すると亜美からの端的なメッセージ。

“お疲れ様です”
“早めに勉強が一段落着いたので気晴らしにプールで泳いでます”
“もし良ければ一緒に泳ぎませんか?”

亜美からの誘い、断るなんて男が廃るわ!
合法的に彼女の水着姿が見られるチャンス、みすみす逃してなるもんですか!
行くに決まってるわ!
と言っても私は泳がないで見てるだけだけど。

泳いだらお腹空くだろうと思い、途中のファーストフード店でサンドイッチを買っていく。
前回も差し入れ買って食べてくれたから、今回も喜んでくれると私が嬉しい。
そんな下心むき出しの思考回路になりながらいつも亜美が通っているスポーツセンターに向かう。
今日の水着はどんな水着を来て泳いでいるのかな?と尚も邪な考えを巡らしながら目的地に到着する。

亜美だけかと思っていたら、何やら男の声が聞こえてきた。聞き覚えがない。
知らない人かと思いつつ、プールサイドを見ると高台で高みの見物をしている場違いな服装の男性と思しき人物。誰だ?ナンパ男か?
プールを見ると亜美が必死に泳いでいる。
その横の恐らく女性も必死に泳いでいる。
え?まさかとは思うけど、競走してるの?
何で?意味不明……。
よく聞くと高台の男が実況したり煽ったりしている。なるほど、コイツがけしかけたのね?
取り敢えず勝敗が決まるまで待つことにした。
それにしてもあの男と競ってる女は誰?
ぼんやりと考えながら見ていると勝敗が着いたらしい。

「僅差で亜美の勝ちだ♪」

まっ、当然よ!彼女は水の戦士なんだから。……って“亜美”呼ばわり?呼び捨て?
一体、私の亜美とどういう関係よ?馴れ馴れしいわよ!

「彩都さん、来てたんですね?」

亜美勝負を終え、とてもスッキリした顔でこちらに歩いてくると私を見つけて笑顔を向けてきた。

「ええ、勝負、勝ってよかったわね」
「はい、楽しかったです」
「それは何よりだけど、何で勝負なんてしてたの?そーゆーの好きじゃないでしょ?」
「そうなんですけど、オリンピック見てたら熱くなってしまって。泳ぎに来たらみちるさんも泳いでたので、流れで勝負しようって事になって」

亜美と互角に戦いながらも優雅に泳いでいると思ったら噂の海王みちるか……。どおりで亜美といい勝負が出来てたわけだ。
と言う事は、高台で実況してた男は、いや、男と思っていた人物は天王はるかか……。
私ほどでは無いけど、確かにオーラがあるわね。私ほどではないけどね!!←大事な事だから2回言ったわよ!

その2人がこっちに向かって歩いてくる。

「素晴らしい泳ぎだったわ、亜美。ありがとう」
「こちらこそありがとうございました。楽しかったです、みちるさん」
「こちらは、噂の彼氏さん?」

噂の?亜美、一体私の何の噂をしているのよ?綺麗とかかっこいいとか頭がいいとかかしら?

「あ、はい、異園彩都さんです」
「どうも、亜美の彼氏の異園彩都です。以後お見知りおきを!」

ちょっと語尾を強めて威嚇する様に挨拶する。舐められちゃいけないからね。

「どうも、海王みちるです」
「初めまして、天王はるかです」

見た目男っぽい天王はるかは近くで見ると夏で薄着な事もあり、胸がデカい。両性具有でも女性だと聞かされていたのをデカい胸を見て納得する。
うちの亜美とどっちがデカいんだろうとか最低な事を考えてしまう。いや、例え亜美が小さくとも大好きよ!

「みちるさん、あなた泳ぎ上手なのね?この亜美と互角に戦ってて感心したわ」
「ありがとうございます。唯一得意な運動なので、自信あります」

言い切ったわね、この子只者じゃないわね。

「はるかさん、あなたは泳がないの?」
「僕は陸上が得意で水の中はあまり……。彩都さんこそ泳がなくていいんですか?」

お互い泳ぐ気ゼロ以下ですと言わんばかりに普通の服装を身に付けていて、この場にとても不似合いだった。
概ねはるかの方は水着姿になりたくないだけなのではないかと思う。
女の体だから何を着るべきか、着たら良いのか悩んでいるのではないか、色々葛藤があるんじゃないかと深読みしてしまった。
そしてみちるの花を持たせてあげたいと言うはるかなりの優しさもあるだろうと考えた。
きっとはるかは水泳も得意な気がするわ。
戦士だし、外部のリーダーだって聞いてるからきっと公斗や美奈子みたいに透かした顔して運動神経抜群なのよ!いやぁねぇ~。

「私も泳ぎはあまり得意な方じゃ無いのよ」

答えてておかしくなって来た。
女であるはるかが男言葉で、男である私が女言葉なんてあべこべで笑っちゃうわね。
見た目も私の方がロン毛ではるかが短髪なのもあって余計逆にね。
後、声も私の方が高くてはるかがハスキーボイスだから益々逆になってる。
まぁ、見た目なんてどうでもいいけどね。
水着は着てないけど、夏だからそれに匹敵するくらい露出度は高い。Tシャツにショーパンと言うラフさ加減。

「一緒ですね。どうも水の中だと生きた心地がしなくて……」
「分かるわぁー、深くて足のつかない所とか気が気じゃないもの」
「いつ溺れるかヒヤヒヤしますよね」
「そーなのよねぇ~」

って何で私、はるかと意気投合してんのよ!

「ふふふっ」
「お二人とも、仲良くなったみたいですね?」
「本当、飽きないわ」

2人の水の女神は私とはるかが意気投合している様子を楽しんでみていた。

「おいおい2人とも、よしてくれよ」
「そーよ、そんなんじゃないから」
「2人が仲良くしてくれたら私は嬉しいです」

笑顔で亜美にそう言われ、対応に困ってしまう。天然なお嬢様は困るわ。

「それじゃ挨拶もできたので僕達はお二人の邪魔しちゃ悪いんでここで失礼します」
「あら、別に気を使ってくれなくても良いのよ」
「いえ、私たち充分泳いだので。後は2人でごゆっくりどうぞ」

御機嫌ようと言って華麗に帰って行った。
何とも掴みどころのない2人だったけど、気遣い出来るいい子達だと思った。

「さて、私たちはどうする?泳ぎ足りなかったら見てるから泳いで来て良いわよ」
「じゃあ、お言葉に甘えてあと少しだけ」

そう言ってひと泳ぎして満足して出てきたのは50mプールを5往復してからだった。
ひと泳ぎが250mとか正気?と思いながら彼女を見るとスッキリした顔をしていて、本当に泳ぐのが好きなんだと心から思った。



おわり

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