セラムン二次創作小説『両手に花』



『両手に花(まもうさ←コスモス)』



一体、今何が起きているんだ?

俺の身に、何が起こっているのだろう……


今、俺は二人の女性が両方の腕にしがみつかれている。

一人は俺の愛しい可愛い大好きな恋人のうさだ。うさが俺の腕に抱き着いているのはいつもの事で、日常茶飯事。何ら問題は無いし、嬉しい。ずっとこうしていたいと言うのが本音だ。


そしてもう一人はセーラーコスモスとな乗る女性。この女性が厄介で、うさと見た目が瓜二つ。いや、もううさそのものだ。

本人もうさの来世の姿だと認めている。所謂うさの生まれ変わりという奴の様だ。うさだってセレニティの生まれ変わりだし、俺もエンディミオンの生まれ変わり。来世があるのは理解している。疑ってはいない。

現にコスモスの髪の毛の色はセレニティと同じ銀色だ。とても懐かしい気持ちになる。

だが、しかしーー


「止めてくれないか!」


いくら来世のうさぎと言えど、俺の恋人では無い。今はちゃんとうさがいる。

俺は、コスモスに向かって嫌悪感を示した。うさ以外の女に興味はない。うさ以外の女に触られる事に抵抗があった。

うさだって来世の自分と言えど嫌だろう。こんな浮気みたいなことは嫌だし、うさの機嫌を損ねたくはない。

何より、こんな状況はおかしい。


「どうして?私だって、うさよ」


うふふと笑いながら絡ませた腕を強くする。自然とコスモスの胸に二の腕が当たる。柔らかくて大きい。うさと同じだ。

だけどうさとはまるで違う。笑った顔は小悪魔の様。


「うさのは生まれ変わりであって、うさじゃない。うさはこの子だ」

「やだぁ、まもちゃんったら理屈っぽい」


隣にいるうさの腰に手を当て、抱き寄せ密着させる。コスモスはうさの生まれ変わりであって俺の恋人ではないと分からせたかった。

しかし、軽くかわされてしまった。コスモスはうさより頭が良く、相当頭がキレるのだと悟った。


「それより何故同一人物が二人同時に存在しているのにうさは無事なんだ?」


話題を変えようと思い、コスモスに質問した。

以前、未来に行った時にはクイーンがいた場所に長く滞在するとうさは透け始めた。その事を俺は思い出していた。

しかし、今回はどう言うわけかうさは透明化しない。最もうさはいつでも透明感のある透き通った肌をしていて美しいが。

どうして今回はそうならないのか、単純に気になった。


「一度死んでるもの。魂は別物。だからあなたのうさは透けたりしないわ」


ここは未来でもないしうさぎがちゃんと存在している世界だから透ける事も無いから安心して。コスモスはそう続けて教えてくれた。

透けるなら私の方かもねとお退けてみせるコスモスは、冗談も言えるようだった。


「透けるには条件があるってことか……?」


俺は考えながら呟いた。確かに前は未来に行った。未来はうさの居場所では無かった。死んではいないが、倒れているうさの未来の姿のクイーンがいた。クイーンは正当なうさの未来の姿だ。同一人物。

しかし、コスモスは外見こそ似ているが一度死んでしまっていて、全てうさと言うと違う。

現にうさはなんともないようだ。


「流石まもちゃん、理解が早ーい」

「もう!まもちゃんって気安く呼ばないで!」


馴れ馴れしいコスモスにとうとう痺れを切らしたうさはコスモスにキレた。

温厚で優しいうさにも限界と許容範囲を超えたらしい。仕方がない。まだ密着状態で、俺もコスモスにばかり話しかけてしまっている。いくらうさを庇い、密着していると言ってもうさにとっては面白くない状況だろう。


「はぁ……」


世の男から見ると可愛い女性二人に取り合って貰っているこの状態を見ると羨ましいだろう。

所謂、ハーレム状態。正に両手に花。

しかし、右を見ても左を見ても同じ顔。だが、双子ではなく同じ女性の今と未来。

俺はただただ困惑しているし、第三者に見られるとバツが悪い。幸いここは俺の家。

しかし、俺にとっては嬉しくない状態だ。俺はうさだけで充分なのだから。


「君はいつ帰るんだ?」

「やだ、来たばかりよ?追い出すの?」


うさと同じ顔に申し訳ないと思いつつ、強めに詰め寄った。こちらもうさと同じで限界が近い。

しかし、上目遣いになり目を潤ませて来る。これに俺は弱かった。

そして更に畳み掛けるように言われた言葉に俺は胸を打たれ、迂闊にも同情してしまった。


「元の場所には誰もいない。私一人。孤独で寂しいの。まもちゃんなら私の気持ち、分かるでしょ?」


とうとう潤んだ瞳から涙が一筋零れ落ちた。本当に涙を流し、泣いているようだ。

一人で孤独は寂しい。それはうさと出会う前の俺が嫌という程体験していた。コスモスの気持ちは痛い程よく分かる。

俺は何も言えなくなった。


「うさぎも透けないし、満足したら帰るわ」


一通り涙を流して落ち着いたコスモスは笑顔を取り戻し、そう言った。


「どこにいるつもり?」


うさがキツく問い詰める。

寧ろ何故コスモスを部屋に入れてしまったんだと言う疑問が湧く。

うさ曰く、俺の家に来ると家の前にコスモスが右往左往していたと言う。俺に会いたかったがうさぎと遭遇するかもしれないと危惧して入れずにいた。

しかし、外で当の本人と遭遇。だったらもういっかと開き直り、俺に会いたい。一緒に入ろうと強引に入っていったとの事だった。

まさか俺に密着して妨害するとは考えなかったと、そこにはいつも通り誰にでも優しく手を差し伸べるうさがいてホッとした。


「うさぎは、まもちゃんの事、好き?」

「当然、誰よりも愛しているわ。あなたよりもはるかにね!絶対、渡さないんだから!」

「まもちゃんは、うさぎの事、好き?」

「ああ、うさの事は愛している」

「そう」


俺とうさ、両方に同じ質問をして答えを聞いた後にコスモスは、寂しそうな顔をして一言呟いた。


「やっぱり、私の入る隙は無いのね」


コスモスとて分かりきっていた事だろう。分かっていてここに来たのだ。


「あー、アツイアツイ!」


大きい声で呟いたコスモスは漸く俺の腕を離し、ソファーから腰を離して立ち上がった。


「そろそろ帰るわ。うさぎ、まもちゃんを取ってごめんね。まもちゃんも、迷惑かけたわね。それじゃあ」


そんな言葉を残し、コスモスはその場で自身のマントを翻すと姿を消した。

満足したと言う事なのだろうか?

彼女がいる場所は誰もおらず、寂しい場所だと言う。そんな所にうさの生まれ変わりのその人がずっと孤独にいるのは辛いことだろう。持ち場を離れて癒されに来たのだろうか。

意図が読めないこちらは振り回されたが、コスモスに幸あらん事を願うばかりだ。





おわり





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