セラムン二次創作小説『愛は盲目』


兄弟仲良く久しぶりに地球へ来たデマンドとサフィール。

ひょんな事からスーパーのお菓子売り場に行くとサフィールはとあるお菓子が目に止まった。


「兄さん、このお菓子見てよ!ルマンドだって!地球には兄さんと似た名前のお菓子があるなんて地球も捨てたもんじゃないな」


普段はクールで地球に嫌悪感を示すサフィールだが珍しくテンションが高くなり、兄の名と似たお菓子を見て子供のようにはしゃいでいた。


「サフィール、これを見てくれ!ミンティアBREEZEの味がCRYSTAL SILVERだそうだ。クイーンの味がするのではないだろうか?」


デマンドもクールな仮面を外してキラキラした瞳でお菓子を見つめていた。その様子はさながら子供だ。実際の2人はとっくに成人しているいい大人である。

サフィールはまたクイーンか?と思ったが、機嫌が良い為、心の中でクイーンの味って何だよ?どんな味だよ?と突っ込むに留まった。


「ルマンド買おうと思う」


手に取ろうとしたその時…


「オ~ッホッホッホッホッホ!ルマンド、私も買うわ!」

「エスメロード!?」

「デマンド様味のお菓子が食べられるなんて最高だわ。デマンド様の味…んふふふ~」

「大丈夫か?キャラがおかしいぞ」

「アンタにだけは言われたくないわね!さっきのやり取り見てたけど、アンタも相当頭おかしくなってたわよ?」

「フンッ馬鹿な!」

「デマンド様絡みになると途端に感情のコントロールがバカになるの、まさか気づいてないの?」


兄の事は大好きなのは自覚していたが、感情のコントロールが出来ていないことには全く気づいておらず、衝撃を受ける。


「まぁ、自分を見失うのは分からないでは無いわ。私もデマンド様の事を考えると我を忘れるもの」

「俺がいる事を忘れていないか?まぁいい。俺はミンティアBREEZEのCRYSTAL SILVERを買うぞ」


呆気に取られる2人を置き去りにして颯爽とレジに向かって行く会話の中心人物であるデマンド。


「こうしちゃいられないわ!私たちもルマンド買って帰るわよ」

「俺に命令するな、エスメロード!」


ルマンドを買って満足し、惑星ネメシスに帰ったエスメロードとサフィールとは別にデマンドはその足でクリスタルトーキョーへと瞬間移動をした。



嫌な予感をいち早く察知したキングはクリスタルパレスの扉に向かうとそこには顔を一生見たくなかった男がこちらに向かって歩いてくるのが仮面越しに見えて嫌悪感を示す。


「何をしに来た!?」

「貴様に用はない!セレニティに会わせろ」

「お前に会わせるセレニティはいない!」

「相変わらず余裕がないな、エンディミオン?会うだけだ。奪いはしない」

「誰がそんな戯言信じるというんだ?」

「セレニティに会って献上したいものがあるんだが」


拉致のあかない押し問答にイライラするデマンド。

クイーンを会わせたくなくて余裕を無くすキング。

最早収拾がつかず、両者一歩も譲らぬ言葉の攻防戦。

血走っている2人はクイーンを巡っての男の戦いへと発展する寸前である。


「お前の物など受け取らん」

「このお菓子を渡したいだけだ!良いから会わせろ!」

「会わせないし、そんな何が入っているのかも分からん物など受け取るわけがないだろう。毒が入ってるかもしれないし、あるいは惚れ薬が調合されているかもしれないからな」

「安心しろ!そんな卑怯な真似はしない!スーパーで買ってその足で直ぐこちらに来たのだからな!」

「フンっどうだか」

「何!?」


キングからの侮辱の言葉の数々にとうとう痺れを切らしてしまったデマンドは、ワイズマンに貰った邪眼で従わせようと黒月マークを変化させて第3の目を開こうとした。

が、その行動を見抜いたキングは技を放つ。


「タキシード・ラ・スモーキング・ボンバー!」

「ちっ!邪眼の力を舐めるなよ!」


負けじと邪眼を開眼させるデマンドに対し、ゴールデンクリスタルを手にするキング。

黄金に輝く水晶に第3の目が眩み、せっかく開眼させた邪眼が閉じてしまった。

仕方なく邪黒水晶を手に取るデマンド。

キングが持っているクリスタルはさらに光り輝き、強さを増していく。広範囲に黄金の光が広がる。

デマンドも負けじと邪黒水晶の力を解放する。キングとは対照的に辺りを暗黒に染め上げていく。


光と影の攻防戦に辺り一面に異様な雰囲気に包まれる。


☆☆☆☆☆


パレスの中で公務をこなしていたクンツァイトがいち早く安心感のあるオーラと絶望感のあるオーラに気づき、震源地へと向かう。


相反するオーラの元へと辿り着いたクンツァイトはその中心にゴールデンクリスタルを発動させ、怒りに我を忘れてデマンドと対峙しているキングを発見し、驚愕する。


「マスター!」

「クンツァイトか?」


大声で呼ぶと、確認すること無く声で分かったのか、正面を向きデマンドと一触即発状態で対峙していたが、返事を返してきた。


「冷静になるのです!」

「クンツァイト、止めてくれるな…。コイツとはいずれは決着をつけなければいけないんだ」

「だからと言って今する必要は無いのでは?クイーンが悲しみます」

「くぅっセレニティ…」

「それにクイーンはいついかなる時もマスターしか見えておらず、マスターを選んできたでは無いですか?決着も何も軍配は誰がどう見てもマスターが圧勝です」

「それでも、いつだって俺は彼女に関しては余裕がないんだ」

「お気持ちは分かりますが…」


根気強くキングを説得するクンツァイト。

必死の説得により、我を忘れていたキングは徐々に冷静さをとりもどしていった。

そんな2人とは裏腹に完敗を突きつけられたデマンドはより一層怒りと共にパワーを増幅し始めた。


「セレニティに会わせろ!」


怒りに任せて邪黒水晶を発動させようとする。と、その時ー。


「一体全体何の騒ぎなの?」


ヴィーナスが騒ぎに駆けつけやって来た。


「デマンド?何で?…ちょっと!クンツァイト説明しなさいよ!」

「まぁ落ち着け!今マスターを説得してる最中だ。余計な事言うなよ?」

「何それ失礼しちゃうわね!何があったか知りたいだけよ!」

「クイーンに会わせたくなくてマスターがゴールデン・クリスタルを発動させようとしていたんだ」

「なるほどね、クイーンに関しては本当に余裕ナッシングね」


端的に説明すると納得しながらヴィーナスは呆れていた。


「一緒に説得してくれ」

「嫌よ!面倒臭い!それにさっき余計な事言うなって言ったじゃない」

「嗚呼、言った。済まなかった。だが説明前に余計な事言われるとたまらんかっただけだ。この状況の打開策は無いか?」

「…クイーンを連れて来る他無いかしら?」

「…火に油を注ぐ結果になりかねん」

「じゃあ力強くで止める他無いわね!」


この場を何とか収めたいクンツァイトは妻で、最も信頼のおけるクイーンの守護戦士でリーダーのヴィーナスに相談を買うた。

愛の女神でもある為、恋愛絡みはヴィーナスを頼りにしているし、何よりデマンドの事は彼女が一番分かっている。

ヴィーナスを敬い一任する方が良いと感じた。



☆☆☆☆☆


「何が起きてるんだ?」

「一体何の騒ぎだよ?」

「一応聞いてあげるけど、何なの?」


残りの四天王も義務的にとても面倒くさそうに現れる。


「漸く来たか…」


渋々現れた同僚を見て呆れるクンツァイトは状況を説明する。


「丁度いい所に現れたわ!今、2人を力強くで止めようかと考えていた所よ」

「で、それで俺たちの出番だと?」

「そうだ。理解が早くて助かる」

「勘弁しろよ。恋愛のゴタゴタに巻き込まれたくねぇ…」

「本当、付き合ってらんないわ」

「まぁそう言うな」


乗り気では無い3人を必死に説得するクンツァイト。

キングとデマンドを見ると冷戦状態で一触即発、今にもまた戦いが始まってもおかしくない状態だった。


「一体どうしたんだ?」

「何を騒いでらっしゃるの?」

「状況を分かりやすく説明おきかせ願えますか?」


ヴィーナス以外の内部太陽系戦士も漸く揃い踏みである。


「皆の衆、グッドタイミングだ!そこのやる気なく帰ろうとしているバカ亭主共を説得して欲しい」

「どういう事だ?」

「うちのバカ亭主が言葉足らずでごめん!クイーンを巡ってキングとデマンドが戦ってるのを力強くで止めようと四天王に協力を仰いだんだけど、嫌がって帰ろうとしてるから説得してジュピター達も一緒に止めて欲しいの」

「バカ亭主とは何だ?バカにバカなどと言われたくないぞ!」

「先にバカ亭主って言ったのはクンツァイト、お前だぞ!俺らに謝れ!」

「すまない」

「内輪揉めしてる場合じゃないっしょ?」

「取り敢えず私、いい考え浮かんだから一旦パレスに戻るわ。必ず戻って来るから心配しないで待っててちょうだい」

「出来るだけ早く戻ってきてね?なるべく時間稼いでおくけど…」


何やら不敵な笑みを浮かべてゾイサイトはクリスタルパレスへと戻って行った。


「アイツ、何する気だ?」

「さあ?計り知れないね!マーキュリーならゾイサイトの考え分かるんじゃ無いか?」

「さあ?私もさっぱり皆目見当もつかないわ」

「マーキュリー、マーベラス!」


その間も尚も緊迫状態のキングとデマンド。

睨み合いながらも会話は聞こえていたデマンドは、まさかクイーンを呼びに行ったのでは無いか?と淡い期待をしていた。

キングの方もクイーンが来てしまうのではないか?と懸念し、最悪の事態を恐れた。そう、ゾイサイトはそう言う性格だと昔からの好で熟知していた。


「待たせたわね、みんな!」


数分後、ウインクをしながら爽やかに戻ってきたゾイサイトの横を見ると、ピンクのドレスを身をまとったピンク頭のレディ・セレニティだった。

そしてその後ろにはレディ付きの守護戦士、カルテットの4人も事情を聞き、万が一の時に備え護衛として着いてきた。


「パパ、馬鹿な事は止めて?ママが悲しむわ。私も悲しい…」

「レディ…くぅっ」


愛娘を連れて来るなんて、想定外の出来事に反則だと意気消沈して臨場体制を解き、戦いを止めることにした。


「すまない。好きなようにするといい」

「分かればいい。今日はもう帰るとする」


張り詰めた空気でどっと疲れたのか素直に帰ろうとするデマンド。

だが、視線の先には騒ぎやレディを呼びに来たゾイサイトの焦る顔を見て何事なのかと心配になり、様子を見に来た所に戦いが収束した。

その心配そうな顔をチラと見ただけでデマンドはとても満足だった。


そしてデマンドはネメシスへと帰って行った。


その後、デマンドはクイーンに渡し損ねたミンティアBREEZEを食べながら愛しのクイーンを思うのであった。



おわり



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