セラムン二次創作小説『願い(まもうさ)』





「あの子は今、元気かしら?」

満月の夜、窓から月を見ていると我らがプリンセスを思い出し、懐かしくなる。

本来ならばタリスマンである手鏡で様子を見れば一目瞭然なのだけど、今は手元にはない。

小さなプリンセスにまた会う為の約束の印として渡してしまったから。

戦士として目覚めてからずっと、その時の為にと大切に持っていたから無い事が不思議な気分。

いつも手鏡を見ていたから、無いと手持ち無沙汰ね。

手鏡を通してシルバーミレニアムを、クイーンを、そしてプリンセスをいつも見ていたけれど、今は彼女達の様子を伺えない。

だけどその代わり、バイオリンを弾くことが増えた。

前世でも、音のない無の孤独な場所で、バイオリンを弾いてシルバーミレニアムに思いを馳せていたわね。


思えば前世もこうして母なるふるさとを見上げ、見守っていた。

タリスマンのキーマンの1人として誰もいない、たった一人ぼっち。誰も助けてくれない、孤独な場所で。

ーーでもどんな時でも、彼方の美しいシルバーミレニアムを、美しいクイーンとプリンセスの姿を思い浮かべた。それは一筋の光だった。

その光が差し込むと力が湧いてきてできないことは無かった。

大丈夫、諦めるなっていつも導いてくれた。

それは今も同じ。変わらない。

変わったことといえば同じ地球にいる事、そして未来から小さなプリンセスが来ていること。

そして堂々と地球国の王子の生まれ変わりの人と付き合っていること。


同じ地球で巡り会い、また2人は惹かれ合った。これは運命ね。

仕方ないわ、あの二人は磁石の様なものだもの。

前世でも幾度と無く逢瀬を繰り返していたのは手鏡で覗き見ていた。

シルバーミレニアムが滅んだ時の話をした時も、プリンスは優しくプリンセスに寄り添ってあげていたわね。

前世でも今もお似合いのカップルだと、単純にそう思ったわ。

ずっと2人が幸せであればと、そう思う。


「みちる、どうしたんだ?」

「月を見ていたのよ」

「満月か、あの子を包む光だな、温かい」

「そうね。どうしてるかしら?」

「会いたいか、みちる?」

「いいえ。今の私たちにはプリンセスから授かった大切な使命があるもの。生まれ変わったほたるを立派に育てるって使命が」


それに彼女達は中学三年生で、受験生。

きっと戦いで遅れていた受験勉強に向き合っていて大変な時期だから。

前世とは違い、彼女達と一緒に戦えた事、一つになれたこと、とても嬉しかった。

もう孤独に戦う必要なんて無い。

同じ地球に生まれたのだから。


右も左も分からない初心者なりに手探りで3人でほたるの子育て。

大変な事も多いけれど、私たちなら大丈夫。


「ほたるは?」

「やっと、寝てくれたよ」

「そう、お疲れ様」

「それはせつなに言ってやってくれ。彼女が一番苦労してたから」


ほたるは、手は余りかからない子だけれど、寝つきが悪い。


「やっとほたる寝てくれたわ……。2人とも、何してるの?」

「せつな、お疲れ様」

「月を眺めてるんだ」

「満月なのね。癒されるわ」


未来の地球をかけたあの戦いから数ヶ月。

私たちはすっかりほたるの子育てをする親になっていた。

出来ることならこの先も、戦いなんて無い平和な日々が続けば。そう願っていた。

ほたるにもこのまま普通の女の子として成長して欲しい。

セーラーサターンとして過酷な人生はもう歩んで欲しくない。


そう思っていたのに……。

まさか皆既月食の後、あんなに急成長をとげて、セーラーサターンとして目覚め、私たちを導く存在になるなんて思いもしなかったわ。

ほたる、立派に成長し過ぎよ!

ディープアクアミラー、今ここに無くてタリスマン3つ揃ってないのに……。




おわり



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