セラムン二次創作小説『Protect You(タキムン)』


『protect you(タキムン)』




今日もまた街中で妖魔が現れ、戦いを強いられる。

それ程強い訳では無いが、経験値があまり無い俺達は苦戦した。

戦いが終わるとセーラームーンは傷だらけで、見ていてとても痛々しかった。

慌てて仮面を外し、ヒーリング能力で彼女を治療してやる。

「私の前だけにしておいてね」

治療が終わった後、泣きそうな顔して懇願してきた。

治癒能力がある事を他の人には知られたくないのだろうか?

「何故だ?」

「仮面の下の素顔を見ていいのは私だけだから…かっこいい素顔を誰にも見せたくないの!」

可愛い一言に照れてしまい、もう一度仮面を付けて素顔を隠した。


照れている顔を見られたくなくて付け直した仮面を今度はセーラームーンによって取られてしまった。

この前初めて部屋に来た時とは逆の行動に、それはそれでドキドキしたと同時に、照れ顔を見られる事が恥ずかしい。

「やっぱり素敵」

顔を近づけながらそう呟いたかと思えば頬に口付けをして来た。

唇を離したかと思うと極めつけの一言に完成に心を掴まれ、持っていかれてしまった。

「大好き!」

そんな不意打ちの告白、ズルいだろう!

帰したくなくなるじゃないか。

そんな気持ちを打ち消す為、ギュッと彼女を満足するまで抱き締めた。

帰せる自身は正直ない。


抱き締めると微かに震えている事に気付く。

何も言わずにもっと強く抱きしめ、頭を撫でると泣いている気配がする。

「怖かった…戦って敵を倒すのが怖いの」

ギュッとタキシードをきつく握り締めてきた。

そうか、ずっと1人で戦って来たけどこの状況は本当は彼女にとっては辛いことだったのだと気づく。

「大丈夫だ。ずっと俺が傍でお前を護る。何があっても!」

そう、セーラームーンを初めて見たあの日、やはり今日みたいに泣いていた姿を見て動いた感情。

彼女の成長を見守りたいと思った。

そしていつしか彼女の頑張りに励まされ、心が動かされて愛おしいと思うようになっていた。

彼女に恋をした。

“一生、恋はしない”

6歳で両親と死に別れ、記憶もなくし、感情も失った俺は恋は愚か人にすら興味をなくしていた。

恋なんて出来ない、そう思っていた。

人としての普通の幸せを諦めていた俺の前に、感情豊かでどこか放っておけない月野うさぎに出会い、セーラームーンとして成長して行く彼女を見ていつの間にか恋をしていた。

こんな気持ちになるなんて思わなかった。

俺にこの感情を教えてくれた彼女を誰にも渡したくない。ずっと一緒にいたいと心から思った。


「もう少しこのまま抱き締めてて欲しい」

ストレートに俺の腕の中で懇願してくる彼女は普通の女の子そのものだった。

震えて泣いている彼女を放っておけるわけがない。それに俺自身もまだ抱き締めていたかった。

元より帰すつもりもなかった。

「大丈夫だ。落ち着くまでこうして傍にいるよ」

帰るとあの広い家にまた1人。

孤独で寂しい日々が待っている。

このままサヨナラすると今度はいつ会えるか分からない。

お互い家は知ってはいてもまだそこまでの関係でも無いから。

今だけは頑張って怖い敵と勇敢に戦い震えている彼女を甘やかして俺に依存するダメな子にしてやりたい。


「もう大丈夫」

身体を離した彼女は震えは収まっていたが、まだ涙は止まらないまま流れ続けていた。

グローブを付けたまま涙を拭い、頬を撫でる。

君の涙の味は分からないが、きっと甘酸っぱく優しい味がするのだろう。

「落ち着いたかい?」

まだ泣いている彼女が心配で質問してみる。


平常心を保ち何でもない風に質問をすると彼女は再び仮面に手を伸ばし、外して来た。

「仮面をしていると本当のあなたが分からないの…」

「すまない、そういうつもりでは…」

「私の事、どう思ってるの?」

「俺は、セーラームーンを大切に思っているよ」

「嫌!セーラームーンじゃなくて、“うさこ”って呼んで…?」

「うさこ、愛している」

仮面は彼女が持っている為、照れを隠せない俺は、その代わりに彼女の顔に近づき、唇に直接キスをした。

もう彼女は泣いてはいなかった。


お互いの気持ちを確かめ合った俺たちは漸く帰る事にして立ち上がった。

空を見上げるとサーチライトの様に眩く光り輝いていた。

戦いがあった直後とは思えない星達の演出はまるで俺達の事を暖かく見守ってくれているようで、とても眩しくそして恥ずかしい。

そんな複雑な気分のまま彼女を送り届けた。





おわり



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