セラムン二次創作小説『嘘の代償(クンヴィ)』



すっかり寒くなった冬の麗らかな陽気のある日、いつもの様に月の姫の護衛で地球に降り立ってきたヴィーナスと王宮で一緒に主君を見守っていると王宮の周りをランニングする集団が現れる。

下級兵士のトレーニングの一環か、大変だな。


俺たち四天王はマスター直属の配下な事もあり、他の兵士とは違い普通の訓練は受けなくても良いが他の下級兵士は毎日色んな特訓を受けていて、その一環のランニングが今日と言う事なのだろう。


勿論、四天王の俺たちも独自で色々な特訓や鍛えたりしているから決して怠けていたり何もしなくていいと言うわけではない。別メニューをこなしている。

王子直属の兵士だからもっとキツいハードなメニューだ。マスターをいざと言う時に守れる様身体は鍛え上げている。


下級兵士は大変だなと思いながらボーッと傍観していると横にいるヴィーナスも集団に気づき、「あの集団は何故走っているの?何かの儀式?」と質問をしてきた。


「ああ、あれでキングのフォースを高めているんだ」

「何で貴方はそんな大事なことをやってないの?私たちも走るわよ!」


軽い気持ちで嘘をつくとヴィーナスが怒りだし、いきなり走り出した。


慌てて後を追うが本気で走っているのか結構早くて必死に走る事になり、なかなかにハードだ。


女だと思っていたが彼女もやはり戦士なのだと改めて感じた。


そんな事を思っていると彼女はピンヒールで走っている事に気づき驚く。走るに相応しくなさそうな靴でこの速さとは一体どういう訓練をしているのか疑問に思う。やはり月の住人は我々と体のメカニズムが違うのか?


そしてフッとどれくらい走るのか気になり質問して後悔した。


「一体何周走る気だ?」

「軽く10周かしら?足りないかな?」

「いや、充分だ」


充分どころか走りすぎだ。

ウォーミングアップも無しに10周も走らされるとは思いもよらず絶望する。

ほんの2~3週だと思っていたから鷹を括っていたが10周と聞き、付けていたマントが風を受けて邪魔をするので適当な場所で脱ぎ捨て本気になって走ることにした。

それにしても10周が軽くとはどういう事だ?

王宮の周りと言っても広く、1周2~3kmはあるはず。

それを10周と言う事は30km近く走ることになると言う事。

それを軽くと言うのだからやはり月の住人の体力は我々地球人とは全く違うのだろう。


彼女をチラッと見るとやはり余裕で爽やかに走っている。

俺だって決して日々の鍛錬は怠けていないし、体力には絶対的な自信がある!

ましてや男のプライドもあり手を抜く訳にもいかず、ヴィーナスと同じペースで10周走りきってやった。


しかし久々のランニングでしかも10周全力疾走、体力は限界を迎えていたが、当のヴィーナスはまだまだ余裕そうに爽やかな笑顔で微笑んでいた。

月人ぱねぇ!


翌日、筋肉痛の激痛に襲われ歩けなくなりゾイサイト達に笑われる羽目になった事はカッコ悪すぎてヴィーナスには絶対に言えない。





おわり



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