小倉青

エッセイと掌編(大体週二投稿)|日記:https://oguraao.theblog.…

小倉青

エッセイと掌編(大体週二投稿)|日記:https://oguraao.theblog.me|小説を書いて応募している|楽しく健やかに生きたい

最近の記事

明日は外に出よう

 四連休のうち二日目を迎えた。昨日から一歩も外に出ておらず、寝てばかりいる。カーテンも開けていないため、天気すら分からない。生活リズムも崩れ、自分にしては夜更かしをしている。  夜になると蛙と虫の大合唱が始まり、そこで、夜なのだと知る。隣人は連休に入ると決まってどこかへ出かけるため、壁伝いに音が漏れ聞こえてくることもなく、それだけでストレスが激減する。  そんな風に心が安らいだ状態で、実写ドラマ『ONE PIECE』を観た。全八話を一気に観た。アニメ版の声優さんがドラマ版の吹

    • そっと近づいてさっと取る

       怠惰な日々が続いており、休日はデリバリーで食事を取ることが多くなった。  その際、『置き配を希望しますか?』にチェックを入れるのを忘れない。人と接するのが苦手なため、できることならデリバリーに限らず全ての宅配物を置き配にしたいところだが、荷物によってはできないこともあり、そういうときは指定の時間が近づくにつれ緊張感が高まっていく。  デリバリーの商品が届くと、ピンポン、とチャイムが鳴る。モニターを見ても誰も映っていない。けれどすぐにドアを開けることはせず、そっと近づいて、ド

      • LINEの友だち15人

         LINEの友だちが2人増え、15人になった。けれどその2人は職場の人なので、厳密に言うと友達ではない。  友だちリストの内訳は、以下の通りだ。  ・親族:4人(内、連絡を取り合うのは姉のみ)  ・同僚:6人  ・美容師:1人(もう通うのをやめたため、ずっと連絡をしていない)  ・ネット上の友達:1人(10年以上前にSNSで出会ったが、一度も現実で会ったことがない。何年も連絡をしていない)  ・友達:3人(会いたい)  こんなだから、真夜中に悩みを打ち明け合ったり、真夜中

        • 電球問答

           入浴しながら漫画を読んでいたら、突如浴室の電気が落ちてびっくりした。停電か!?と思ったけれど、浴室の外から灯りが漏れてきていたことに気がついた。五秒くらい考えて、ああ電球切れか、と気づいた。ここに入居してから数年経つが、そういえば電球を替えたことがあるのは洗面台のみで、他は替えたことがなかった。  電球を替えるのはとても億劫だ。洗面台のときは、電球を替えるまで二週間ほどのスパンが開いた。一つの工程につきいちいち重たい腰を上げなければならないのだ。  まず電球カバーを外すまで

        明日は外に出よう

        マガジン

        • エッセイ
          29本
        • 掌編
          5本

        記事

          本当は歌って踊りたかった

           およそ一年ぶりにカラオケに行った。 「お時間はどうなさいますか?」  二時間にするか三時間にするか迷った末に、間を取って「二時間半でお願いします」と伝えた。  十代の頃は一人で歌うときも必ずフリータイムを選んだし、高校生の頃なんかは平気で八時間歌ったこともあった。  けれど今回は、三曲歌ったところで疲れてしまった。自分の感覚では十代の頃と変わらないつもりだったのだが、思うように声が出なかった。  自分自身に失望しながらたこ焼きを注文し、TWICEの映像を流しながら休憩するこ

          本当は歌って踊りたかった

          性教育の重要性

           子育て中のとあるYouTuberが、性教育について語っていた。プライベートゾーン(=下着で隠れる部位)は誰にも見せない、触らせない、他者のものも触らない……それらを幼児期のうちから伝えておくのが重要、という話だった。  近年では性教育に特化した絵本も出版されており、子どもにも分かりやすく伝えることができるのだという。親向けの育児書やYouTubeも、おそらく昔とは比べようもないほど充実しているのだろう。  この話を聞き、私は自分自身の幼少期を思い出した。  幼稚園児の頃、

          性教育の重要性

          笑ってほしい

           予定のない休日は、動ける日と動けない日とがあり、大抵は目覚めた時点で「あ、今日は動けない日だな」と判断がつく。そういう日は食事とトイレ以外は一日中ベッドで過ごすことになる。少し調子が良ければ本やタブレットを枕元に置き、何かしら活動めいたことをしようとする。けれどほとんどの場合、何もできずただ眠り続けてしまう。  このまま死んだらどうなるだろう、と、眠る前によく考えるようになった。死後硬直とか、葬儀の話だ。住んでいるマンションの管理会社への迷惑や職場への迷惑については、最近は

          笑ってほしい

          ハッシュタグエッセイ

           2010年頃、Twitter(現X)のごく狭いコミュニティ内で、長文ハッシュタグが流行した。ただの投稿にもハッシュタグをつけることで、面白くなる(=笑いが取れる)と愚かにも信じ込んでいた。私は高校生で、そんなくだらないことで盛り上がる他のオタクたちも、大体同年代だった。  そのことをふと思い出し、またやってみよう、という気になった。  要は140字以内で文章を書いてみよう、という試み。  # ホテルに泊まりに来ている。外泊時は極力荷物を減らしたいのだが、いつも重たい。ので

          ハッシュタグエッセイ

          【掌編】今日はジャンプが休みだから

           ジャンプが休みの月曜日、決まって叔父は遠くへ行きたがった。遠出と言うには手近すぎたのは、バイトしているとはいえ叔父がそれほど裕福ではなかったからだ。僕のお小遣いも高が知れていた。 「そらくん、行こう」  早朝も早朝、まだ暗闇の中、叔父の手が僕を揺らした。そこで分かる。そうか、今日はジャンプが休みなのか。  僕が目を開けないでいると、次第に振動が激しくなってくる。そらくん、と呼ぶ声にも焦燥感が滲んでくる。今日もまた始発電車でどこかへ連行されるに違いない。けれど寒いしまだ眠い。

          【掌編】今日はジャンプが休みだから

          ストック人間(ミニマリスト)

           仕事から帰ってきて電気をつけたとき、ふと、キッチンが荒れ果てていることに気がついた。通販サイトで購入し、届いて封を開けたはいいもののそのまま放置したダンボール箱や、潰したダンボール箱、入浴剤の空箱、ウォーターサーバーの水の容器……それらが乱雑に溢れかえっていた。  いつからこんな状態になっていたのか、分からなかった。それとも、本当は気づいていたにも関わらず、無自覚のうちに目を背けていただけなのだろうか。  しかしそんなことを考えたところで何の解決にもならない。昔、上司に言わ

          ストック人間(ミニマリスト)

          読みたい≠書きたい

           書きたい小説の題材が膨らむにつれ、自分には書けっこないという思いが強まっていく。こんなことは一度や二度ではなく日常茶飯事だったが、最近は滅多に起こらなくなっていた。無意識のうちに、自分の手の届く範囲の題材でしか、小説を書かなくなったから。  二年ほど前に、書きたいと思い始めた題材がある。高校生クイズだ。もしくは早押しクイズ。  思いついた当初から「いつかは書きたいけれど、少なからず調査が必要だろうから、今は書けないな」と感じていた。だから敢えて遠ざけてきた。  けれど最近に

          読みたい≠書きたい

          二時間前行動を心掛ける

           ここ二、三年ほど、公共交通機関に乗る日は、少なくとも二時間前には目的地に着くようにしている。  例えば美容室やまつげサロンには電車に乗っていくのだが、その店舗の最寄り駅に二時間前に着くようにしている。そういう話だ。予約を入れた以上、その約束を決して破ってはならない。  電車が遅延したらどうしよう、朝起きて体調が優れなかったらどうしよう……不安ならいくらでも湧き起こり、胃に重圧をかけてくる。だから二時間前行動は、店舗側への忠義心というより、自分を安心させるためのもの、という側

          二時間前行動を心掛ける

          Wi-Fi人間、その後

           以前、Wi-Fiのホームルーターが故障したという記事を書いた。今回はその後の話だ。  結論から述べると、あれから一週間足らずで新たな端末が届き、無事にインターネットに接続することができた。  それまでの数日間は、ポケットWi-Fiを使用していた。上司が貸してくれた。契約したはいいものの、使う機会がなかったのだという。もちろん遠慮した。私もそこまで厚顔無恥じゃない。「でも大事なインフラでしょ」と上司は言ってくれた。確かに大事なインフラだし、困り果てていた。だから最終的にはあり

          Wi-Fi人間、その後

          半ドンは焼きうどん

           先日、休日出勤した。と言っても半日だけだ。朝八時から十三時まで働いて、帰宅して昼食を食べたとき、『半ドン』を思い出した。  小学一年か二年生まで、毎週だったか隔週だったか忘れてしまったけれど、土曜日に半日だけ授業があった。土曜日は給食がなかったから、帰宅して母が作ってくれる焼きうどんや焼きそば、チャーハンを食べるのが嬉しかった。それらメニューが朝食や夕食に出されることはなく、土曜日か日曜日の昼食のみ、と何故か限定されていた。  そのことが身体に染みついているのか、半日だけ仕

          半ドンは焼きうどん

          運命

           たまに、雑誌の星座占いコーナーを読むことがある。基本的に占いは信じていないが、何か素敵なことが書かれているかもしれないから、目についたら読む。わざわざ目次を辿って読みはしない。あくまでも、目についたら、だ。  仕事が上手くいくでしょう、とか金運絶好調、といった文言が書かれていたなら素直に喜ぶ。今月はいまいちです、大人しくしておきましょう、と書かれていたならそっと雑誌を閉じ、見なかったことにする。  そもそも同じ星座の人が全員同じ運命を辿るわけがないのだ。だから占いは、良いこ

          WiーFi人間

           インターネットにアクセスできません。  その文言を見たとき、瞬時に「終わったな」とは思わなかったけれど、半日経っても状況が変わらなかったときは、「終わったな」としっかり思った。スマートフォン、タブレット、チューナーレステレビ、それら全てがインターネットに接続できなくなったのだ。PCは恐ろしくて試せなかった。  この不調の原因がWi-Fiルーターであることは明白だったが、リセットや再起動、SIM差し替えを全て試しても駄目だった。やっぱり「終わったな」と思った。完全に詰んだ。

          WiーFi人間