あお

小説家の卵。noteは不定期に更新中。小説にまつわるエッセイのようなものを載せていこう…

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小説家の卵。noteは不定期に更新中。小説にまつわるエッセイのようなものを載せていこうかと。

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  • いつか行きたい

最近の記事

人魚、売りました

 家のなかに入るなり、焼き魚の匂いがくゆる。  えづきそうになるのをこらえて、僕はリビングに顔を出す。 「あら、秋立(あきたつ)。今日、お友達の家でごはん食べてくるって言ってなかった?」  食卓に着いていた母が驚いて、僕を見つめる。 「……うん。そのつもりだったけど、徹也(てつや)が熱っぽいって言い出して。うつしたら悪いから、帰ってくれって言われて」 「まあ。徹也くん、心配ね。……今から、あんた用に何かおかず作るから、部屋で待っててくれる?」 「うん。お願い」  端的に答えて

    • 文学フリマ大阪で頒布予定の本

      【部数調査アンケートにご協力お願いします!】 →【アンケートはこちら】 2024年9月8日(日) OMMビルで行われる「文学フリマ大阪」への出店が確定しました。 文学フリマ大阪の情報はこちらから。 文学フリマ大阪で頒布予定の同人誌の情報は、この記事にまとめていきます。 通販は文フリ後、BOOTHのあんしんBOOTHパックで行う予定です。 仕様など(特に値段)は変更する可能性があります。目安で。 ページ数は表紙・裏表紙を含めない数字となります。 長編は購入特典として購

      • 「神に愛でられし少年は運命に流さるる」試し読み

        今年の文学フリマ大阪と通販で長編小説「神に愛でられし少年は運命に流さるる」を頒布する予定です。 こちらの記事は試し読み版です。 作業中につき、細部が変わる可能性があります。ご了承ください。 文学フリマ大阪と通販で頒布予定の同人誌の情報は、この記事にまとめています。 「神に愛でられし少年は運命に流さるる」 第一話 加護を得る 「六助(ろくすけ)、あんた手伝いもせずに、何やってんだい」  母親の厳しい声が背中に飛んできて、六助はおずおずと振り返った。  六助は、家の裏で「

        • 「ぼくの妖精」試し読み

          今年の文学フリマ大阪と通販で短編集「ボーイズ・セレナーデ」を頒布する予定です。 こちらの記事は「ボーイズ・セレナーデ」に収録予定の「ぼくの妖精」の試し読み版です。 作業中につき、細部が変わる可能性があります。ご了承ください。 文学フリマ大阪と通販で頒布予定の同人誌の情報は、この記事にまとめています。 「ぼくの妖精」  エイリーカ王国の伝統として、十の年を迎えた子供には妖精が贈られる。  僕もつい先日、十歳になった。体が小さいからって、からかわれる毎日。気の合う友達を見つけ

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          1本

        記事

          「君の痛みが、わかるから」試し読み

          今年の文学フリマ大阪と通販で短編集「ボーイズ・セレナーデ」を頒布する予定です。 こちらの記事は「ボーイズ・セレナーデ」に収録予定の「君の痛みが、わかるから」の試し読み版です。 作業中につき、細部が変わる可能性があります。ご了承ください。 文学フリマ大阪と通販で頒布予定の同人誌の情報は、この記事にまとめています。 「君の痛みが、わかるから」  ぐるぐるぐる、と視界が回る。まずい。倒れそうだ。  ふらふら足で歩いていた俺は、急いで道の端に寄って、しゃがみこんだ。地面にスカート

          「君の痛みが、わかるから」試し読み

          「マナ・プロジェクト」試し読み

          今年の文学フリマ大阪と通販で短編集「ガールズ・ロンド」を頒布する予定です。 こちらの記事は「ガールズ・ロンド」に収録予定の「マナ・プロジェクト」の試し読み版です。 作業中につき、細部が変わる可能性があります。ご了承ください。 文学フリマ大阪と通販で頒布予定の同人誌の情報は、この記事にまとめています。 「マナ・プロジェクト」  自分の他に誰も乗っていなかったモノレール列車から降りて、私は駅名の看板を見上げた。  トワ・アクアランド駅。  ぐるりと見渡しても、誰もいない。ハ

          「マナ・プロジェクト」試し読み

          「ふたりの王子」試し読み

          今年の文学フリマ大阪と通販で短編集「ガールズ・ロンド」を頒布する予定です。 こちらの記事は「ガールズ・ロンド」に収録予定の「ふたりの王子」の試し読み版です。 作業中につき、細部が変わる可能性があります。ご了承ください。 文学フリマ大阪と通販で頒布予定の同人誌の情報は、この記事にまとめています。 「ふたりの王子」 僕の高校には、少し不思議な習慣がある。我が校は女子校なのだが、二年生になったら、スピーチ大会がある。その大会で、〝学年の王子〟を決めるのだという。  王子候補とい

          「ふたりの王子」試し読み

          「溺れた私を救うのは」試し読み

          今年の文学フリマ大阪と通販で短編集「ガールズ・ロンド」を頒布する予定です。 こちらの記事は「ガールズ・ロンド」収録予定の「溺れた私を救うのは」の試し読み版です。 作業中につき、細部が変わる可能性があります。ご了承ください。 文学フリマ大阪と通販で頒布予定の同人誌の情報は、この記事にまとめています。 「溺れた私を救うのは」 きっかけは、よくあるイジメだった。イジメによくある、なんて付けたくないけど。テレビで報道されたり、漫画に出てくるような、典型的なイジメ。授業で当てられて

          「溺れた私を救うのは」試し読み

          二作目『君を守るは月花の刃 白き花婿』が発売した話と書店巡りした話

          『君を守るは月花の刃 白き花婿』が無事に、2月1日発売となりました。 ここまで来るまで山あり山ありで、本当に大変でした……。 担当編集様、色々とお世話になり、ありがとうございました。 さくらもち先生、めちゃくちゃ素敵・美麗な表紙イラストと挿絵を描いていただき、ありがとうございました。 校正様、的確なご指摘ありがとうございました。勉強になりました! そのほかにも出版・流通に関わってくださった皆々様に、あつく御礼申し上げます。 前作のときは地元の本屋で見てくるぐらいにしていた

          二作目『君を守るは月花の刃 白き花婿』が発売した話と書店巡りした話

          勝手に温泉缶詰

          執筆パックのある温泉に行ける関東民が羨ましい羨ましいとわめいていたら、家族が「そしたら関西の温泉行ったら? 関東に行くよりはずっと安い」と呆れて教えてくれたので、夕食朝食つきのプランを検索。キャンペーンで値引きされてリーズナブルなプランが見つかる。悩んだ結果、ちょうど進めたい原稿があったので(個人的なものだが)、行くぞ!と決める。 そういうわけで、A温泉で缶詰やってきました。 到着ののち、チェックイン ガタゴトと電車に揺られ、駅に到着。温泉娘のパネルを発見。そういえば、

          勝手に温泉缶詰

          推敲が苦手だ

          小説を書く以上、外せない作業。 それが、推敲。 いつか見たツイッターのアンケートで「どの作業が一番楽しい?」というのがあって、選択肢は「構想」「執筆」「推敲」だった。 やはりというか、推敲が一番少なかった。 私もすごく苦手な作業だ。 アンケートでも証明された「推敲が好きな人の少なさ」 今日は、そんな「推敲」について語りたいと思う。 推敲は一回目はまあまあ楽しい 一度書き上げてから、確認する作業。 この一回目の推敲は、そんなに辛くない。 文章がまだ、頭に入っていないからだ。

          推敲が苦手だ

          十年前に完結させた物語をもう一度完結させた話

          「ニライカナイの童達」という物語を、個人サイトで完結させたのは2012年のこと。 その続きの構想(第二部)が下りてきたのが、2017年。 そして第二部を書き終え、完結させたのが2022年の1月。 驚くことに、たしかめたらちょうど十年が経っていました。 狙ったわけではなく、偶然今年に完結させられたのは、なんだか運命的なものを感じて仕方ありませんでした。 今作は琉球風ファンタジー。 書き始めた当時は図書館で資料を集めて、色々と調べたことを覚えています。 琉球王朝や文化には元々興

          十年前に完結させた物語をもう一度完結させた話

          創作をしなければ苦しむこともないのかもしれない

          ふたつほどスランプの記事を書いて、タイトルのようなことを思ってしまった。 それほど、スランプの期間は苦しかった……。 でも、最初から創作をしないひとなら、当然スランプは苦しくないだろう。「書かない」が当たり前なら。 一回目のスランプのとき、「書かない自分」に慣れてきたときもあったのだけれど……。というかスランプ中は「辛い」というより「ぽっかり穴が空いた感じ」だった。 幸か不幸か、創作なしでも人間は生きていける。 苦しみのほうが大きくなったら、創作を切り捨てることだって選

          創作をしなければ苦しむこともないのかもしれない

          スランプの治し方②

          スランプ二回目のお話です。 スランプを一回克服した私は、「もう二度とスランプにはならないだろう」と謎の自信を持っていました。 ところが、やってきたのです。 二回目が。一年前ぐらいに。 ちょうど、受賞作書籍化のための改稿を行っている途中でした。 その作業のかたわら、私は趣味の小説も書いていました。公募に応募しているときは、応募用のを書くのに精一杯で、趣味の小説は書けていなかったので。 サイトに載せていた『西部の悪魔祓い』という作品は、一回目のスランプ脱出後に途中まで書い

          スランプの治し方②

          スランプの治し方①

          …………って、あるのでしょうか。 多分、あったとしても「ひとによる・場合による」のではないか……と思います。 少なくとも、私は二回スランプを二回ほど経験して、どちらも違う方法で治しました。 ①ひたすら休む ②無理矢理書く このふたつでした。 一回目のスランプは、とてもひどかったです。 およそ三年続きました。 どうしてスランプになったか、理由はよくわからないのですが、「趣味で小説を書いてサイトにアップする」ことが唐突にしんどくなってしまったのです。 「私が書かなくなっても

          スランプの治し方①

          初めて本屋に自分の本が並んだときのこと

          昨年11月、デビュー作『死に挑むワルキューレ 紡がれし運命のサーガ』が発売されました。 https://beans.kadokawa.co.jp/product/series181/322007000247.html 公募に投稿しているとき、「本屋に自作が並んだのを見たら、どんな気持ちになるんだろう。嬉しくて飛び上がっちゃうかもなあ」と、ぼんやり考えていました。 で、実際に発売日の11月1日……ではなく10月30日(土日を挟んでいたので、少し早めに入荷してくれていたらし

          初めて本屋に自分の本が並んだときのこと