見出し画像

【TXT】Happy Fools (feat. Coi Leray)─語り部としてのコイ・リレイと恋の真相 ─ Sugar Rush Ride 考察(Part.2)

記事を修正しました。*ワールドツアー「Sweet Mirrage 」のトレーラーからヒントを得て、主に Coi Leray の考察パートに修正・加筆をしました(3.21)。

ヨンジュンが作曲し、5人全員で作詞をしたこの曲。すでに「 2023 DREAM WEEK Special Clip」 では、日本語訳が公開されていますが、Coi Leray のパートがヨンジュン ver. になっていたこともあり、オリジナルバージョンの方を和訳し、歌詞の内容から見えてきた 彼女の歌パートの意味と、彼らの恋の真相について深掘りしました(記事の無断引用・転載はご遠慮ください) 。


Happy Fools

Produce:Slow Rabbit
Songwriting:Slow Rabbit, YEONJUN, Coi Leray, Akil"worldwidefresh"King, BEOMGYU, TAEHYUN, Revin, SOOBIN, HUENINGKAI
2023.1 The Name Chapter: TEMPTATION 収録

Happy happy happy fools ・・
Happy happy happy 

やることは沢山あるけど
やる気はないよ
今より未来が大事だっていつも言うでしょ

何を言われたって
気にしない、放っておくさ
とっくに脱線したんだ、楽しむことにするよ

僕はバカだってよ
少しぐらい遅れたって僕は平気さ
幸せな日々なんだ
甘い蜜に吸いよせられて夢中のいま
悩みや心配ごとは、明日の僕に任せよう
この瞬間は二度と来ないもの、そうでしょ

離れたくないんだ
この楽園を飛びまわる
蝶のように
毎日、仕事しかしないミツバチなんて
夕日が沈むあの空が
どんなにうっとりするか、知りもしないさ(そう、そう)

自分のことは、したくない
後悔しないよ
僕は最高のぐうたらスーパーマンになる
だから、ついてきて

気分がいいんだ、ナマケモノになるのは
とっても甘い
禁断の果実が、目の前にあるんだから

Happy happy happy fools・・
Happy happy happy

グッチのコートに、たくさんのキス
知っておいてね
私のウィッシュリスト
カリフォルニアからやって来て
私のロレックスは今、韓国時間
爽やかな炭酸ソーダとは、正反対の組み合わせね
ただ自分の思うままに生きたいだけよ
そうね、赤いバラは好き
だけど、(海や山より)こっちに遊びに来てみない
ワクワクして
月まで行けそうでしょ
TXTとコイ・リレイで
風船みたいにハジけて
毎日パーティーしようよ
悩みなんて忘れて楽しく
やりたいようにやらなくちゃ
ね、そうでしょ

思う存分、満喫するよ
僕が世界の中心
蝶のように自由に舞うんだ
仕事しかしないミツバチなんて
心地いい風が吹いたって
どんな気分か知りもしないさ

自分のことは、したくない
後悔しないよ
僕は最高のぐうたらスーパーマンになる
だから、ついてきて

気分がいいんだ、ナマケモノになるのは
とっても甘い
禁断の果実が、目の前にあるんだから

Happy happy happy fools・・
Happy happy happy


Happy Fools とは

アルバムの「Devil by the Window」から順に歌詞を読んでいくと、「Sugar Rush Ride」が ”夢の世界” で体験したのであろう、世にも不思議な甘い日々のことであるなら、対する「Happy Fools」は、現実逃避の気楽な日々に逃げこんでしまった ”実生活” への、いまの気持ちなんだと気づきます。

だから、ここでの幸せとは、達成感や充足感を感じた時の幸せというより、悩んだりせずにいられる幸せであり、文字通り「しあわせな愚か者たち」ということなのでしょう。

自ら「Happy fools」と言っているぐらいだから、その自覚はあるけど、今だけは極楽とんぼな日々を楽しむよ、という歌なのだと解釈しました。

冒頭や曲中のコーラスでは「Happy happy happy fools ♫」と何度も繰り返していて、日本語に置き換えると、説明的になりすぎる気がして、今回はあえて訳しませんでした。

삐딱선ピッタックソン の意味を考える

Already 제대로 탄 삐딱선 즐겨줄게
すでに しっかり乗った 傾いた線 楽しんであげる

ここで添えているのは直訳です

歌詞に出てくる「삐딱선」(Special Clip でスビンのパートに「Already 思いっきり斜に構えた態度」と字幕が出る部分)は、直訳の「乗った 傾いた線」とは随分、意味が違いますね。わかりやすい解説を見つけたので、まずはそちらをご紹介します。

─以下、『紳士とお嬢さん』の解説文より引用─
“삐딱선”の、“삐딱”は、「ひねくれている」または「傾いている」という意味の形容詞“삐딱하다”からとったもので、“선”は、「線」を意味し、“삐딱선”を訳すと、「傾いた線」になります。この“삐딱선”は主に、「乗る」という意味の動詞“타다”がついて、“삐딱선을 타다”という文章でよく使われるのですが、これは、「皮肉な態度で臨む」と言う意味です。日本語の「斜に構える」という言葉とよく似ていますね。

歌詞には「今より未来が大事」とあることから、”それなら今を大事にしなくてもOKってことでしょ”と言いたい、ひねくれた態度のことでしょう。

ですがここでは、5人の曲として、元の意味(傾いた線⇒転じて、軌道を外れる)から、「脱線した」と訳してみました。

と言うのも、アルバムのタイトル曲MVには冒頭、脱線し漂流してきたと思われる列車が浜辺や海中に姿を見せていました。また過去の曲では『New Rules』で「敷かれたレールに束縛された僕の人生」、「괴물ケムル(Monster)」では「脱線したエラーのバグだと呼ばれても」とあり、カムバックショーやLIVEのVCRなどでも、繰り返し「列車」が登場しています。

つまり、列車は進みゆく人生で、駅や脱線してたどり着いた島は、その途中で直面した出来事や心の変化を象徴しているのでしょう。そうしたこれまでの文脈から、「線」の入った語句が使われていることもあり、ここでの「삐딱선」は、ひねくれた 態度(考え方)だけでなく、前に進むことのない日々に逃げ込んでしまった現状の両方も含めて言っているのだろうと解釈し、「とっくに脱線したんだ」としました。

ナマケモノは出てこないけど・・・

기분 좋은 게으름의 맛 아주 달콤한걸
꿈만 같은 guilty pleasure 눈앞에
心地いい 怠惰の味 とても甘いね
夢のような 密かな楽しみが目の前に

これより少し前の歌詞で、ボムギュが書いた「仕事しかしないミツバチに夕日の綺麗さなんてわからない。だったら少しぐらい、蝶のように自由に楽園を飛び回ったっていいじゃないか」という趣意の箇所があります(コロナ真っ只中の時だったか、ボムギュは事務所と宿舎の往復だけの日々がしんどかったと言っていたような。それを思い返すと(現実逃避ぐらいしたくなるよ)と、胸が痛みます)。

このパートには、生きものなんて登場しないし、ネバーランドにも出てこなかったけれど、直前の歌詞で「最高のぐうたらスーパーマンになる」と言っている位なので、蝶が舞い飛ぶのんびりした楽園ならば「ナマケモノ」がいてもおかしくなさそうだし、目の前に甘い果実がぶら下がっていたら、それこそ彼のセリフにピッタリ!と勝手に想像してしまいました。そこから、「怠惰の味」を「ナマケモノになるのは」と超訳しています。

ちなみに「guilty pleasure」 は、文字通りだと「有罪の喜び」。実際には、「人に言いたくないような、ひそやかな(うしろめたい)楽しみ」という意味でつかわれることから、「禁断の果実」と言い換えてみました。

グッチのコートにキスって、何の話?

Gucci coats & kisses You should know that I'm expensive
グッチのコートにキス。知っておいた方がいいわ、私は高価だということを

冒頭のフレーズ、歌詞の続きにロレックス( Rollie )も入っていることから、直訳だと「私は売れっ子でリッチなのよ」の意味に思えます。しかし引っかかるのが 「expensive」です。人に対しては、どちらかと言えば「あいつは高価なものが好きなんだ」「彼女は金がかかる女だ」と言う時に使うようなワードです。

彼女がラッパーであることから、コートやキスはむしろ、野望を象徴しているのではと思いました。kiss が複数形であることから「高級ブランド(からのオファー)やファンからの投げキスの嵐」が押し寄せるほどトップスターになってみせるわという意味かなと。

そこからふと、コイ嬢はトゥバの曲を元ネタにして、歌詞に自己紹介を織り込んだのかもしれないと思いました。思い出したのが『Wishlist』です。主人公が「お願いだから、今すぐ教えて。何か実用的なもの?、それともかわいい雑貨(が欲しいの)?」と聞いてましたよね。だから、「私のウィッシュリストはこれなのよ」と言っているのではないかと。

foreign の意味は、異質なもの

Foreign came in lemon lime
炭酸飲料に異質なものがやってきた

「lemon lime」はアメリカでは炭酸飲料のこと。ここではトゥバのことを例えているかと。「foreign 」は外国人でもいいけれど、ニュアンスとしては、異質な者だと言っているんだと思います。爽やかなTXT に、Coi Leray が加わった。つまり「私たちって、異色の組み合せよね」という意味でしょう。

”レモン、ライム” は『Poppin' Star』 にも出てくるので、その引用もあるでしょうが、柑橘の飲料と言えば、やはり『Blue Orangeade』ではないでしょうか。ここは「僕たち正反対」のフレーズにヒントを得た歌詞かもと思い、「正反対の組み合わせ」と、表現してみました。

赤いバラの花からの急展開

Yea I like red roses
But I rather you come spend some time
HAPPY We go up like the moon
うん、私は赤いバラが好き
だけどむしろ、あなた達には しばらく遊びに来てほしい
しあわせ! 私たちは月のように上昇するよ

直訳当初、いちばんハテナマークいっぱいだったのがこの箇所。「バラの花」と「遊びに来て」の間になんの関係が?と思いませんか。だけどこれも、「Blue Orangeade」からの引用だとすれば納得です。

曲の中で主人公は「君は赤いバラが好き」と歌っています。そして続くフレーズでは、こんなふうにも。「僕は青い海が好き(~中略~)山にも行きたい」と。それで彼女は、「赤いバラは好きだけど、私は(海や山より)家でパーティの方がいいな」と言っているのではと。

続きの ”We go up like the moon” の「go up」は、文字通り「上に行く」という意味で、そこから派生して「(火の手が)燃え上がる」「歓声が上がる」等さまざまな意味で使われます。

歌詞の続きには、 "Get it poppin' like balloons We gon' party every day" 「風船みたいにハジけて、毎日パーティーしよう(『Poppin' Star』の ”ハジける” からの引用かと)」とあり、Happy Fools の次の曲『Tinnitus』でも、パーティで騒いだ様子が描かれていることから、ここは「月が昇るみたいに盛り上がろう」の意味ではないでしょうか。

あえて「月まで行けそうでしょ」としたのは。歌詞に「夜空の饗宴」とあったり、彼らが森で Sugar Rush Ride な夜を楽しんだことから、海や山(=ネバーランド)でなくても、パーティで盛り上がったら(気分は)月や星空まで届きそうでしょと、言いたいのではないかなと解釈してみました。

ところで。ここまで訳したところで、なんだかモヤモヤした思いがこみあげてきます。なぜって、昨年11月の「MMA2022」ステージで、ボムギュが火をつけ、投げ捨てるはずだったのは、赤いバラの花。「Blue Orangeade」からの初恋の象徴を示す花だからです。

なぜコイ嬢がそれを引き合いに出したのだろうと。

彼女がキャスティングされた理由

彼女の歌詞は、過去のトゥバの曲をヒントに書いたのではと書きましたが、これが『Blue Orangeade』や『Poppin' Star』『Wishlist』へのアンサーソングだとしたら。つまり、「Thursday’s Chid」で失恋した相手からの返事なのではと疑問が生じるのです。

けれどそれは違うのでは、と思っています。その理由は─

細部に至るまでこだわって奥行きの深い世界観を生み出すパンPDのこと、すべてに意味を持たせてキャスティングしているであろうと、ここからは推察を広げてみます。

実は、 Coi Leray の ”コイ”は芸名で、日本の「鯉」からつけたそうです。
魚と言えば、なにかピンと来ませんか? そう、空を泳ぐ魚の姿です。

「ETERNITY」のカムバックショーVCRのアニメで見た、群れをなして空を泳いでいく魚たち。列車の車窓の外に赤い魚が泳ぐのを少年が見ている姿も描かれていました。『0X1=LOVESONG』のMVでは、ヨンジュンが明かりのない部屋の中で、ヒュニンカイは5人がドライブする車の窓から、また『Good Boy Gone Bad』(日本語 ver.)では寂しげに立つヒュニンカイのまなざしの先に、「ヒレナガゴイ」と思しき、尾びれ、背びれ、胸びれの長い鯉が空中を泳ぐ姿を見せていました。

これらの心象風景(現実に見えている風景ではなく、その時の感情から生み出される想像上の風景)からは、水槽で泳ぐ金魚が、先にも触れた「敷かれたレールに束縛された僕の人生」なら、空を泳ぐ鯉は、水槽に閉じ込められた抑圧から飛び出し、自由をつかんだ人生の象徴のように思えます。

これまでの物語(=曲)から、少年たちは、そんな渇望する自由への憧れを、恋心に重ねているのではと思いました。ルールに縛られずに自由な行き方をしている女性なら、今の自分の鬱屈して凍りついた心も、救い出してくれるのではないかと。

Happy Fools の歌詞からは、まさにコイ嬢も、自由な人生を謳歌する女性。少年たちが恋をしそうな魅力を持っています。シンガーとしての「名前」も、自分の思いのままに名づけていますしね。

ただ、過去の曲の歌詞からは、(好きな相手は)幼い頃からずっと一緒だったと言っているので、コイ嬢は彼らの「恋」を象徴するタイプではあっても、失恋した相手は別の人ではないかと考えられるのです。

それにしても、”コイ”の響きは日本語の恋にも通じることも、パンPDは知っていてキャスティングしたんじゃないでしょうか。

『夏の夜の夢』から深読みする

では、このアルバムで突如、 Coi Leray が登場した意味とは?

ここでちょっと、アルバムについて振り返ってみます。先に投稿した Sugar Rush Ride の考察記事(Part.1)では、古典的名作「ピーターパン」「ファウスト」と、映画「ザリガニの鳴くところ」がモチーフだとふれましたが、実はそれ以外にも多くの物語からモチーフが引用されています(トゥバの曲やMVには、神話や戯曲、映画などから、多数のモチーフが重層的に取り込まれていることが多いです)。

そのひとつが、シェイクスピアの「夏の夜の夢」です。Sugar Rush Ride に重なる部分だけピックアップしてみると。

夜の森で巻き起こった Sugar Rush 祭りは、アテネの夜の森で起きた恋の取り違え騒動を連想させます。その騒動の原因は、妖精パックが恋の媚薬「スミレの花」を摘み、媚薬をふりかける相手を間違えてしまったからでした。
ヒュニンカイもMV冒頭で、スミレ色に変化する小さなヤモリを手にしていますね(考察記事 part.1 の後半、余談コーナーでは、Sugar Rush の媚薬を持っていた犯人はヒュニンカイで、5人は相手を間違えて抱きついたのではと書きました)。

そのシェイクスピアも、ピーターパンも、本場はイギリス。夏ともなれば、公園の野外劇場でもそれらの芝居が上演され、夏の夜の風物詩ともなっているようです。なかでも広々としたロンドンのリージェンツ・パークには、日本庭園に「錦鯉」が泳いでいるんだそうですよ。

5人は、生きものの姿になってネバーランドの日々を謳歌したと、先の考察記事にて書きましたが、もしもこの物語が、夜の森で上演されるとしたら、傍らの池に泳ぐ錦鯉(コイ嬢)は、語り部(ナレーション)であり、かつトリックスター(ルールを無視してストーリーを急展開させるイタズラっ子のような役)のような役目を果たすのではないのなぁと思うのです。

「SWEET MIRAGE」から見えてきた、恋の真相

さてさて。やっとこさ本題です。それでは、彼らの本当の恋の相手と、失恋した理由とはなんだったのでしょうか。

ワールドツアーのタイトルは「SWEET MIRAGE」ですが、日本語にすると、甘美な幻想、甘美な蜃気楼といったところでしょうか。そこから連想されるのは、『Eternally』のMVと、『The Chaos Chapter: FREEZE』『The Name Chapter』の Concept Trailerです。

「Eternally」 では、星祭りの会場で幼いヒュニンカイを見た後、静まり返った風景のなかで涙を落とすスビンを、そっと抱きしめたのは女性の幻影でした。「The Chaos Chapter: FREEZE」で、凍りついたヨンジュンが最後に見たのも、光の輪に包まれた女性の人影。「The Name Chapter」では傾いて空に浮かぶ家の中に虹の輪が差し込み、家の周りにも虹の輪ができていました。

これらはいずれも、蜃気楼や、ブロッケン現象(太陽などの光が背後から差し込むことで、人の「影」のまわりに、虹に似た光の輪が現れる現象。ドイツのブロッケン山でよく観られる現象であることからこの名がついた)を暗示しているのではないかと思います。

つまり、少年たちが愛していたのは「幻」だったと言いたいのではないでしょうか。どういうことか、これまでの彼らの曲から、裏付けになりそうな歌詞を少しだけピックアップしてみます。

Our Summer ・・・「ふと現れた君のまぼろしが、魔法みたいに輝いてる」
Poppin' Star ・・・ 「君は刺激的なスター ~ 僕の愛」
20cm・・・・・・  「君は知らない、僕たちは20cm差」
Anti-Romantic・・  「甘いラブソング、贅沢なラブコメ」

これだけじゃ、よくわからないですよね。
では「Fairy of Shampoo」はいかがでしょう。カバーソングではあっても、意味があって選曲されたのだと思います。ヨンジュンが作詞したラップパートでは、こんな風に歌っています。

「おとぎ話の中だけだと思ってたのに、四角い画面の中から、そっと僕に近づいた、君という妖精。なんだか話しかけてるみたい」。

実はこの歌詞こそが、少年たちの恋の真相を示しているのではないかと思っています。

それを裏付けるかのように、最初のアルバム STARで恋を歌った「Blue Orangeade」のMVでは、冒頭では5人がテレビやPCの画面を見ていて、MV後半では、スビンが画面に向かってフォークに巻いたパスタを差し出す姿も映し出されています。

少年たちは、幼なじみや学校の同級生ではなく、幼い頃からずっと見てきた同世代のスター(ここで、恋した相手がコイ嬢のことではないとわかります)で、ラブソングを歌ったり恋愛ドラマに出演する画面越しの彼女に恋をし、デートの場面を空想したり、彼女の音楽やドラマで心を癒やし、励まされていたのではないでしょうか。

「Anti-Romantic」で「この辺で終わりにしなきゃ~請求書は大赤字(意訳)」、「Trust Fund Baby」では「恋人にはなれない、この世界で課金しすぎてまた負けるかも、このゲーム」と嘆いていることから、彼女のCDやオンラインコンテンツなどに課金しすぎたことも、ほのめかしているように思えます。

では、少年たちが失恋した真相とは?

「LU$ER=LO♡ER」のMVでは、カフェでスビンと向き合う女性が、暴落する株のチャートを見てパソコンの画面を閉じていました。この後5人は、札束を手に逃避行をしていますね。

これは推測ですが、恋するスターの所属事務所が、何らかのトラブルで破産の危機に追い込まれ、少年たちは、彼女が活躍し続けられるよう、なりふり構わずに援助しようとしたのではないでしょうか。

しかし、スターである彼女は、それではファンも自分も自滅するだけだと思い、受け取らなかったのでしょう。そうして彼女は、表舞台から一時的に姿を消したのです。けれど、何らかの支援を受けることができたのか、カムバックを果たしたのでは。だから少年たちは、将来を考えて進んでいこうと決意したはずの誓いも一瞬で破ってしまった…。真相は、そういうことだったのではないのでしょうか。

ちょっとリアルな世界のお話のようで、ファンとしては、何だか複雑な心境になりますね。

でもそれこそが、パンPDの願い、ファンへの大きな愛なのではないでしょうか。ビジネスとしては儲けなければいけない面がある一方で、ファンとアーティストの関係は、健全なものであって欲しい。お互いに依存しすぎることなく、良い影響を与え合う関係とは何かを考えるきっかけにして欲しい。
きっと音楽人としての自戒も込めたであろう、そんな想いが詰まっているように感じました。

「SWEET MIRAGE」のトレーラーでは、青い角砂糖を飲みものに溶かしていたり、青い液体が注がれたグラスも出てきましたね。これらは、映画『マトリックス』に出てくる赤と青の薬を示唆しているのではないかと。
赤い薬を飲めば、未来は不確かでも、自分の真実を知る旅に出ることができる。青い薬を飲めば、幸せだけど決して真実を知ることのない、カゴの鳥のような生活が待っている。そんな意味だったかと思います。

また、彼らは海軍のようなコスチュームに身を包んでいました。
このツアーは、今月25日から約2ヶ月かけて開催されます。
そこで思い出すのが、映画『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』です。

主人公のジェイクが真相を知る旅から戻った後、彼は2ヶ月間、海軍の兵士となって、想い人エマに会いにいくことになるのです。

*****☆**

ボサノヴァのイントロから始まるこの曲から、まさか少年たちの恋の真相を知ることになるとは思いもよりませんでした。でも、アルバムに、そして彼らの物語に注がれた熱い情熱も垣間見たような気がして、色々な意味で衝撃を受けた一曲でした。

ここまで読んでくださり、どうもありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?