見出し画像

【TXT】Deep Down 歌詞の和訳と詩の解釈

デビュー曲『Crown』のアンサーソングになっているこの曲。仲間とともに夢を追うよと誓った少年が、『Deep Down』ではついに、ありのままの自分を認めて受け入れます。繊細だけど芯の強さを感じる5人の歌声が、エッジの聴いたEDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)とともに、どんどん前に進んでいく感覚が大好きです。

ところで、歌詞を見ていくとあることに気づくのですが、皆さんはもう隠された物語に気づいていましたか。

※記事を補足しました(11/16)


Deep Down 
(머리에 솟아난 뿔은 나의 왕관이었다) 
頭に生えたツノは僕の王冠だった

Produce: Evan Gartner, Dwayne "Supa Dups" Chin Quee
Songwriting: Gregory Aldae Hein, Alexander Izquierdo, Dwayne "Supa Dups" Chin Quee, Evan Gartner, Fallen, danke, 황유빈, YEONJUN, EL CAPITXN, 이경 (wavecloud), 전지은, Carson Thatcher, Grant Yarber, Anthony Russo, 송재경, "hitman"bang 김인형, 이스란
THE NAME CHAPTER: FREEFALL 収録(2023.10)

ある日、突然
生えたツノが
恥ずかしかった

頭の中は真っ白で
ふとんにもぐりこむ
僕だけ他の人と違うんだ

どこまで逃げても
やっぱり鉢合わせする僕とツノ

まっ暗な闇のなか
君を折ろうとして気づいたよ
君のない僕なんて僕じゃない

そうさ、答えが何か
まさに、わかったんだ
違いこそ僕の個性だった
だから本当は、もっと君が必要なんだ

僕が何者なのか、今ならわかる
王冠なんだ 僕を輝かせる
違いこそが必要だった
だから本当は、もっと君が必要なんだ

More, more, more, more・・・
本当はもっと、君が必要なんだ

More, more, more, more(その通りさ)・・・
本当はもっと、君が必要なんだ

More, more, more, more・・・
本当はもっと、君が必要なんだ

More, more, more, more(わかってるよ)・・・
本当はもっと、君が必要なんだ

長い彷徨さすらいの果てに
やっと見つけた真実
答えは近くにあったんだ

僕の大きな王冠は
もう不吉なツノじゃない
君は希望のしるし

逃げたりそっぽを向こうとしてたのに
なんという運命の悪戯いたずらだろう

明るく僕を導いてくれた光は
いつも僕を輝かせてくれた君だと
鮮明にわかったんだ

そうさ、答えが何か
まさに、わかったんだ
違いこそ僕の個性
だから本当はもっと、君が必要なんだ

欠点であって、汚点じゃない
僕だけが授かった
特別で唯一の王冠
だから本当は、もっと君が必要なんだ

More, more, more, more・・・
本当はもっと、君が必要なんだ

More, more, more, more(その通りさ)・・・
本当はもっと、君が必要なんだ

More, more, more, more・・・
本当はもっと、君が必要なんだ

More, more, more, more(わかってるよ)・・・
心の底から、君がもっと必要なんだ



自分のアイデンティティを受け入れる

他人と違うことに劣等感や暗闇を感じていたのに、それこそがオンリーワンの個性、輝く自分の本質だったのだと気づいた時、目の前の世界が鮮やかに開けていく。なんだか胸がじーんと熱くなります。

アメリカの音楽メディア Consequence インタビューでは、ボムギュがこんなふうに語っています。

「Deep Down」のレコーディングはとても楽しかったです。この曲では、隠そうとしている「ツノ」が、実は王冠であったり、自分自身を象徴する希望の源になり得ることについて話しています。デビューシングル「Crown」としっかりつながっているので、レコーディングをしながら当時を思い出して、いろんな思いが込み上げてきました。個人としてだけでなくアーティストとしても、僕たちはどこまでたどり着けたのだろうと思いを馳せました。

ボムギュと言えば、この曲が好きなのはモア(more, more, more ~)がたくさん出てくるから、ともお茶目に話してくれていましたね。

THE NAME CHAPTER: FREEFALL Recording Behind Interview

0:00 Chasing That Feeling
6:56 Back for More
9:54 THE NAME CHAPTER: FREEFALL について
10:32 Growing Pain
11:59 Dreamer
13:51 Deep Down
15:03 Happily Ever After
17:53 Skipping Stones
21:37 Blue Spring
23:09 アルバムへの5人の想い

童話や映画にインスパイアされたストーリー

鏡の国のアリス

さて。「Crown」とつながる曲ということですでにお気づきの方も多いかと思いますが、この曲、『鏡の国のアリス』がベースになっているんですね。

物語は、鏡をくぐり抜けて不思議の国に戻ってきたアリスが、小川と垣根によって区切られた大きなチェス盤のうえで、ちょっとした冒険を繰り広げるうちに、気がつけば、頭の上には王冠が載っていて、ついにアリスはクイーンになれたというものでした。

デビュー曲「Crown」では、チェス盤がモチーフと思われる黒と白の背景で5人が踊っていたり、アリスに登場するチェシャ猫らしきしっぽがヒュニンカイからにょきにょきと生えてきたり、また途中で鏡も出てきていましたね。

「Deep Down」では曲中、  ”どこまで逃げても鉢合わせ” や、”長い彷徨さすらいの果てにやっと見つけた真実 答えは近くにあったんだ” などなど、鏡の国にリンクしているような箇所が幾つかあります。物語でも、アリスが丘のてっぺんを目指そうとすれば家の前に戻ってしまったり、赤のクイーンに近づこうとすればするほど遠ざかり、背を向けて反対側に歩き出すと追いつけるなど、鏡の国らしく意思とは反対に物事が作用するところがユニークです。

思い込みを外してみれば、物事の本質は意外なところにあるかもしれないよ、とルイス・キャロルは言いたかったのかもしれませんね。

そういえば、トゥバの曲が持つ独特な歌詞の文体や言葉遊び、映画や物語などからの引用も、アリスの物語自体、さまざまな詩や歌を引用し、ナンセンスな言葉遊びもふんだんにあしらうなど、それまでの頭でっかちだった児童文学を解放し、新しいスタイルを作り上げたことが大きいのだろうと思います。

物語や歌詞単体でももちろん面白いけど、引用されたストーリーを知ることで、なぜそうなったのか、理由や背景を知って納得することができたり、物語や歌詞の世界がまたぐっと、豊かに味わえると思うのです。

人と人の関係も同じで、表面だけを見ていたら理解できないような他人の言葉や行動も、背景を知ろうとすることで、その人だけが持つドラマや宝物に触れることができる気がします。

「Dreamer」の和訳記事でもふれた、映画『ビフォア・サンライズ』に、セリーヌが語る大好きなセリフがあります。

この世に魔法があるなら
それは人が理解し合おうとするチカラのこと
たとえ理解できなくてもかまわないの
相手を思う心が大切

映画『ビフォア・サンライズ』より

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

ところで、「Crown」や「Nap of a Star」MVなどで描かれてきた、あの ”ツノ”。なんだか、鹿のツノに似ていると思いませんでしたか。これね、大人向けのやや渋めの話ではあるのですが、映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)からのオマージュじゃないかと思うんです。

ストーリーは、かつてはヒーロー映画「バードマン」で大成功を収めたものの今では落ち目となってしまった中年の俳優が、再起をかけて自ら演出、脚本、主演を兼ねた新作舞台を手掛けるというもの。

舞台のリハーサル場面で、キャストの女優はこんなセリフを放ちます。

自分を愛する準備ができていなかったの

映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』より

その時、背後で歩き回っているのが、トナカイのツノをつけたエキストラたちなのです。これを、まだ何者にもなれていない脇役たちには隠しておきたいツノがあり、自分を愛する準備ができていなかった、と再解釈すれば、「Crown」や「Deep Down」のテーマにリンクしている気がしませんか。

舞台を手掛けるというストーリーなので、『Back for More』のMVへのつながりを思わせる舞台裏非常口のサイン、劇場の外には「オペラ座の怪人」の看板もあり(トゥバの VMAs のステージでは冒頭「オペラ座の怪人」の「Overture」の曲が使われています)、『Chaing That Feeling 』MVや歌詞に重なるような、隕石落下、バードマンの滑降シーン、さらに”過去からの開放/夢と現実の境界”がテーマになっていることから、おそらくこちらの映画も「FREEFALL 」の重要なモチーフになっているのだろうと思います。

ツノを君と呼ぶ理由

Telling me, 답이 뭔지
Telling me, 알게 됐지
다름이 곧 나였지
So deep down I need you more

その通り、答えは何か
その通り、分かるようになった
違いが すなわち 僕だった
だから内心は もっと君が必要なんだ

ここで添えているのは直訳です

Telling me」 は前後の文脈から、「全くその通り、全く同感だ」を意味する「you are telling me」を略したものだろうと解釈しました。

다름이 곧 나였지 の文頭 다름とは、 다르다 (違う、異なる)に、(으)ㅁをつけて名詞化したもので「違い、異なること」の意味。語尾の「(으)ㅁ」 は、既に起きていることや起きた事の結果を表すときの名詞化に用います。

は「すなわち、いわゆる、つまり」などイコールを意味する言葉。「人と違っていることが、すなわち自分の個性だった」と気づいたんですね。

曲のタイトルにもなっている「deep down」は、「本当は、心の奥底では、内心は、(外見とは違って)根は」などを意味します。表面上は見えていない本音を言いたいときの前置きとして用いたり、実際には違うんだ、と言いたいときに使うワードです。

さてさて。見出しにも書いた通り、歌詞の中ではツノを”君”と呼んで対話をしています。you are telling me の省略された you are も、ツノである君のことでしょう。

そこで思い出すのが、THE NAME CHAPTER のコンセプト・トレーラー。振り返って見ると、動画の中盤、鏡に見立てたスチールラックをはさんで、5人はそれぞれ、白い羽に覆われた僕と、黒い羽に覆われて顔の見えない僕になり、ふたりの僕が鏡を行き交いながら激しく葛藤している様子です(↓5人が葛藤する場面からをクリップしています)。

ここでの白い僕は、表に見えている僕=周りに見せている自分。黒い僕は、心の中に抑え込んでいる僕=隠しておきたい自分や認めたくない自分なのでしょう。自分の中にいるふたりの自分。どっちがほんとの僕なの?、影の自分なんて消えてなくなればいいのに。表のオマエこそ消えてしまえ。そんな苦しい心の声が聞こえてきそうです。

そうした文脈から、deep down は嫌な自分をしまいこんでいた心の奥底、そんな象徴でもあるようにも感じます。けれど、劣等感や痛みを感じていたツノ=自分の嫌いだった部分が、希望の泉であり王冠だったと気づいたからこそ、内なるもうひとりの自分を受け入れ、もう君を心の奥に閉じ込めておいたりなんかしない、もっと出てきていいんだよと言いたかったのではないでしょうか。

*****☆**

余談ですが、9月にスビンが Weverse Live をした際、ビーニーにタグをつけたままのことがありましたよね。アリスの本の挿絵では、キャラクターのマッドハッターはいつも帽子に値札をつけたまま描かれています。だからあれは、次作はアリスがモチーフだよと、盛大なネタバレだったんじゃないかなぁと深読みしたりしています。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?