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線香花火

はじめの一本 丁寧に火にかざしてみたんだ
見る間にすっと小さくなってあかりが灯る
二人の顔を照らすだけの赤い火の玉
見つめてたら花火越しに 君と目が合ったんだ


都会の片隅 蛍火ちらつく夏の夜
ゆらり揺られて落ちる 瞬く間に
くだらない話をいつまでも続けていたいよ
しがない会話に儚く花を咲かせて
まだ終わらないで このまま


右も左も騒がしくて目移りしてたら
浴衣姿の少女の狐の面が笑った
振り向きざま君が何か言いかけた気がした
私はきっと何もなかったような顔をしたんだ


遠のいていく喧噪 静かに抜け出す夏の夜
手を引かれて消える 足音さえ


口にはしないで この曖昧さが好きなんだよ
気付かないくらいの側にいられたらいいのに
まだ終わらないで このまま


小さく弾けて綺麗だ いつまでもつのかな
簡単に落ちてしまわぬように耐えるの 耐えるの


くだらない話をいつまでも続けていたいよ
しがない会話に儚く花を咲かせよう
口にはしないで この曖昧さが好きなんだよ
気付かないくらいに儚く花を咲かせて
まだ終われないの このまま—

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