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僕は天使であり、強いていうならばアイドルである

もうバンドマンであることを辞めたい。バンド社会は縦社会で、かつて堕天使としての日々を送ってた僕を赦してくれる人はほとんどいない。音楽を見てくれ(僕を見てくれ)、音楽を作るキャラクターとして僕を消費しないでくれ!

曲が書けなくなってしまい、終電で九十九里浜へ僕は汽車で向かってる。東京から約3時間、小さな田舎町で僕は汽車を降りた。タクシーに乗り、とりあえず海岸へ向かった。

日付が変わり、月が輝く、誰もいない僕だけの海。太平洋、耳をすませばカリフォルニアの夢が聞こえてくる。砂浜の風は冷たく、潮は高くて荒々しい。頭上には無数の星々。君にそのうち一つをプレゼントしたい。300光年の時空の隔たりで君と手を繋ごう、無邪気に好きだと言いたい。

風は更に冷たくなり、僕は松林に逃げ込んだ。林は風邪を防ぎ、僕は眠くなってきた。天使の夢を見る天使になりかけた。作詞をしようと思った。「波止場に異国の旅客船、私は大人になった。」防波堤の向こう側には大人になってしまった僕がいた。まだあちら側に行くわけにはいかない。

バンドをやってる僕を好きだという人はアイドルとしての僕が好きなのだろう。そういうのはつまらない。いや、作曲アイドルとしてならば愛されたい。もっとみんな僕の曲に魅了されて、いっぱい恋されたい。

一人の人からの愛は重すぎる。集合体の未分化な愛を集めたい。それらを平等に僕は宝物として心の中に仕舞い込んで、喜びの歌を歌います。もしかしたら僕は結婚できないかもしれない、でも今日もたくさんの愛を享受できてて幸せだ。

海で僕はアイドルとして生きることにした。僕の幸せをみんなに届けることが僕の使命なのだ。僕は老いない、死ぬまで思春期のままだ。カッコいい曲なんか書かない、セコい魔法でみんなの大好きを奪い取る小さな魔法使いとして、ひたすら可愛いものだけを作っていきたい。

家に帰ろう。潮に別れを告げる。ありがとう、母なるこの惑星よ。

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