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制作余話#4ー1「桃花詩記」概略と1話編

久しぶりに更新の「制作余話」、今回は「桃花詩記」の後語りです。この作品の完結待ちの為にかなり更新が遅れました。
本来ならば昨年末~今年初めに終わらせるつもりだったのですが延びに延びて、今月ようやく完結に至りました。
最後までお読みいただいた希少な読者の皆さんに改めてお礼を申し上げます。

桃花詩記リンク(カクヨムにて連載。読むだけなら登録不要です)

初めての長編を完結させて(※ほぼ愚痴)

「やっと終わった……」というのが正直な気持ちです。書いていて楽しかったけれども、自分の知識不足、スキルの低さをありありと感じてしんどかったです。
どれだけ下手くそでも最後まで書くのは決めて執筆していました。元々漢文や中華風という、メジャーではないテーマや世界観ですので反応は元より期待していませんでした(この作品の執筆中に出した「しずけさや」の方が明らかに反応は良かった)。ただ、その中で世にも希少な漢文ファンからレビューをもらえるとうれしくてたまりませんでした。私自身は大学で中文を学んでいましたが、あくまでFラン大学で齧っていたレベルなので色々知識不足や間違いがあります。それでも読んだ人に刺さるものがあったのは良い収穫だったと思います。

この作品の目的は長めの作品を一作書ききる、漢柳を布教するの2点です。
前者については字数は述べ124,636字、一応長編の部類には入りますね。これは達成したといえるでしょう。
後者は……さ、作品を残しておいたらどこかの誰かに広めてもらえる可能性はあるから!
そうです。この作品、漢柳の布教という点ではほぼほぼ役に立っていないでしょう。まず内容がすでに漢文を多少知っている人前提で余計な説明を省いています(中高で習っていたらわかるようにはしているつもり)。次に中盤~後半の歴史ミステリーや政治物要素が手に取りにくい要因になっています。
本来は、不思議な秘境に行く→そこでてんやわんやもありつつ楽しく過ごす→別れを惜しみながら帰郷→終わり!というストーリーでした。ただ張本陶と顔路が律の街へ来た理由は使者としての視察であり、これだと何も問題が解決していません(そもそもこの設定が間違いだったともいえる)。したがって洛鳳の都に帰ってからのストーリーを第3話を執筆している辺りで考えました。この大掛かりなてこ入れが作者のスキル不足と重なって、構成の行き当たりばったり感として如実に表れています。作者としてはとにかく反省点が多い作品です。
ぶっちゃけこの作品に関して、自分で良かったと思える点は最後まで書けたこと漢柳を色々作れたことぐらいです。もっと上手くなりたい、もっといい作品にしたいと思いつつも、なかなかそれができない自分に終始不満でした。それだけ思い入れがあって惜しい作品でもあるので、次回作以降に反省点を生かしていきたいですね。

前置きが長くなりました。次から各話について話していきたいと思います。


1話「律の国」後語り

2018年10月、私は本作の第1話で小説の投稿を開始しました。本人はちゃらんぽらんなのに、こんなお堅い話で投稿サイトデビューしちゃって良いのかしらと当時思っていました。執筆慣れしていないのでこの辺りは文章が少し固いです。

冒頭は主に世界観と本陶らが旅をしていた理由を説明しています。舞台設定や考証については緩いです。「中国」ではなく中華に限りなく近く果てしなく遠い「華国」のお話なので、字などの慣習についても厳密にしていません。漢詩のルールに関しても「そんなのがあるんだ」程度に思ってもらえれば良いと思っていたので、深く言及していません。ここで登場した漢柳も過去に作った物を一字だけ変えて載せただけなので特に解説することはないでしょう。

華の国教である孔儒の教え(儒学あるいは儒教がモデル)や環の国(日本がモデル)がすでにここから出てきますが、この時は特に伏線として考えていませんでした。前述のてこ入れ時や実際に各話を書いている最中に過去話を読み返した際に拾い上げて、物語に入れ込んでいます。

次に登場人物について。
後の話でも触れますが、今作の登場人物の何人かは語呂合わせで名前を決めています。
張本陶もその1人です。「超本当」から来ています。字の「宇曽」だと「超嘘」になりますね。創作であるけれども歴史物として現実に寄るようには努力しているよという意味合いを込めています。
人物像としては柔軟で変化を疎まない気質、要領よく手を抜ける人として設定しました。端的に言えば「やる時はやる人」です。ほどほどに真面目、ほどほどに不真面目で個性が飛び抜けていないのは、初めての執筆において語り手として扱いやすくしたかった側面もあります。なお本来の中国史において官僚や文化人というのは超絶エリートで知識も知恵も知能も飛び抜けた方々なのですが、本作では作者の脳の都合上、後述の顔路や第2話以降登場の人物達は少し無能になっています。

次に顔路について述べます。字の由で呼ばれることの方が多かった人ですね。この人は参考にした歴史上の人物がいます。それは孔子の弟子の子路という人物です。この人は『論語』を読むとちょいちょい孔子にいじられていたり、言動をたしなめられていたりしていて、その親しみやすいキャラクターから弟子の中でも人気が高いです。人懐っこさや可愛げがあっていじりがいのある人柄を考えた時にこの人物が浮かび、彼の設定の参考にしました。また、子路は理を学ぶよりも実践的な事柄を好む人でもあり、そこも取り入れています。軍事や武術に関しても強い関心をもって孔子に学んでいた人物なのですが、その点に関しては「体を動かすことが苦手」という由殿とは正反対ですね。

最後に第一村人ならぬ第一律人である番兵さん……ではなく尹巴を紹介したいと思います。この人には「湯」という字をつけていましたが作中には出てきません。名前はほぼ語感です。知的な辺境人のイメージに合いそうな字を使いました。字の由来は尹→同じ読みに「殷」があるな→殷に湯王っていう聖王おったよなという連想ネーミングです。
物語上の役割としては律の案内人ですね。主人公たちが知らないことを解説してくれる以外に、場面を整える進行役としても書き手を助けてくれました。作中では初めは腰が低くて慇懃な人物でしたが、本陶らと打ち解けていくにつれ、お茶目な一面も出てきて、けっこう勝手に動いてくれたキャラクターでもあります。
奥さんが早くに先立っていたり、県令の職に就いて秘境としての律の立ち回りに四苦八苦していたり、物語が始まる前から苦労していたであろうというお人ですし、何気に一番報われた人なのかもしれません。

ここで登場した人物や設定に関しては後になっていじり直した点もなく、当時の設定のまま最後まで通せたと思います。
ただ、2話から登場した「彼ら」は構想当初から設定をかなり変えられた、てこ入れの犠牲者です。その辺も含めて次回を後語りできれば。
ではでは。

〈了〉

・「桃花詩記」作品ページ→こちら

・作者カクヨムマイページ→こっち


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