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天国の待ち合わせ場所

喫茶店に行きたい
ずっと喫茶店に行きたい

深い椅子にもたれて
自分と 目の前のあなたと向き合う時間

日々は
喫茶店から次の喫茶店に向かうまでのこと

本当は何を話したかなんて覚えてないんだ
ただこの小さな机と椅子が
わたしとあなたの世界として確かで
ここだけでいいのに
わたしが守りたいのはこんなに小さな世界なのに、と思って
幸福で尊い時間を噛みしめることしかできない

喫茶店は時間を吸って生きている
長年街に佇んでいる喫茶店はひとの体温が染みこんでいて
入った瞬間に体中の細胞が時間から解放される
ここではなんでもいいんだ
ここでは過去も未来も受け入れられて
現在の、本当の意味での現在のわたししかいない


旅先で
天国の待ち合わせ場所のような
美しい美しい喫茶店に出逢った
窓から白い砂浜と真っ青な海が見えるんじゃないかって思うくらい
射し込む光が眩しくて
朝焼けのただ中にいるようだった
時間も憂いも悩みもなくて
目の前には美しい食べ物が並び
顔を上げればあなたが微笑んでいて
生まれ変わってもこの光景を忘れないと思った
この暖かさを目指して 天国では待ち合わせをしよう


話し足りないから、とか少し疲れたね、と言って喫茶店に入る
その瞬間、生き延びた と思う
この一瞬に生まれる命が
わたしをこの世界に繋ぎとめる
泣きそうになるほど嬉しい

ここは喫茶店と喫茶店の間
なにもかもから自由なところへ


話し足りないから入る喫茶店このときめきが生きてるすべて/青藤木葉




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