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不妊治療で救われたこと

出産したのは結婚10年目だった。
2年くらい2人の生活を楽しんだら出産したいと
思っていたけれど、
思い通りにはいかなかった。

今となっては、それが良かったと思っている。
とはいえ、気持ちがつらい時期が続いた。

基本的には幸せなのだ。
毎日ご飯も食べられる。
やるべき仕事がある。
大切なパートナーがそばにいてくれる。
友人とおしゃべりできる。
音楽、本や漫画、映画を楽しむ時間もある。
たまに旅行も行ける。

こんなに幸せなのに、
パートナーや家族に対して申し訳なく思ったり、
自分に自信や誇りがもてなくなってしまった。
不妊の悩みは実家の家族や友人にも話せないのだ。
話したらよかったのかもしれないけど、
同情されても激励されてもつらいのだから、
誰にも言えない。

子どものいる友人の何気ないひとことにものすごく傷ついたり、
テレビのニュースやステレオタイプの家族向けのCMまで見るのがつらいから、
色々な情報をあまり見ないようにして生きていた。
治療中はいつ通院になるか予測不能なので、スケジュールも組めない。
人と会う機会も減った。

そんな中、治療中にはいろんな作品に助けられてきた。

イケメンで倹約家のシロさんと、
優しくてお財布のひもがゆるめなケンジの、
愛すべき食卓の物語。
年齢を重ねるなかでの家族模様や、
さりげない会話劇に、
たくさんの発見がある。

あまりにも自分の悩みに直接的なドラマなので、観るまで覚悟がいった。
でも、観てみると、明るく優しく励まされるドラマだった。視聴者のドラマのコメントにもたくさん元気をもらった。

まさにこのタイトル通りだったので読んだ。
誰にも言えない悩みを聞いてもらって、
あたたかく語りかけてもらっているようで、
ほっとできた。

そして、三浦綾子さんの言葉
「いままでふり返ってみて、
大きな不幸と思われることが、
実は大切な人生の曲がり角であったと
思われてならない」
この言葉にも元気をもらった。
その通りだと感じる。

わかりやすい努力と結果が結びつかないことがあるということ、
人に話せない悩みや事情を抱えている人がたくさんいること、
目に見えることだけが全てではないこと。
自分なりに人の気持ちを考えていたつもりでいたけど、
今まで想像したことがなかった気持ちがたくさん存在することを考えた。
一体いままでどれほどの人を傷つけてきたんだろう。

結局退職して、
結構良い新車が買えるお金をかけて、
パートナーと
クリニックの優しい先生とスタッフの方々、
実際に体験を話してくれた友人のおかげで、
無事出産することができた。

会社を辞める決心をするのに
背中を押してもらった曲。
やり残したことはなんだいという問いかけに
覚悟を決めることが出来た。


今、子育てをしていて、色々あるけれど、
大変そうだということが一目でわかるらしく、
色んな人から赤ちゃんに笑いかけてもらったり、
激励の言葉をもらったりする。
すごくありがたい。

それと同時に、
見た目ではわからないけれど、
体調がすぐれなかったり、
大変な事情を抱えているひとは
たくさんいるんだということを
改めて考える。
何かあったとき、出来るだけ、相手の事情も想像できる人間になりたい。
そう思えるようになったのも、不妊治療のおかげだと思う。

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