見出し画像

読書録「ここで唐揚げ弁当をたべないでください」

社会人1年目の夏、たびたび仕事をさぼってビルとビルの間の隙間で唐揚げ弁当を食べていた。するとある日、「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」と貼り紙がしてあった。それを見て「バレていた!」脱兎のごとく逃げる…。読んでいて、唐揚げ弁当食べるくらいいいんじゃないか…と思った。
喫茶店や公園、街の景色などの描写がとてもいい。雰囲気が伝わってきて、いいなあとうっとりする。

「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」小原晩(2022.3.5) 

高校を卒業して、美容師をしながらその会社の女子寮で暮らす。都会での日常を描く。映画館に住みたくなり、通りがかりの喫茶店にワクワクする。銭湯で西日のオレンジ色をきれいだと思う。夜の街を歩き、公園でブランコをこぐ。仲間とあれこれ言いあい、恋をし、家族とぶつかりあう。そのまま小説になりそうな本だ。ときおり入る短歌もいい。

本文より

女の子夜道は危ない送ります君が好きですでも無職です

しっとりと甘いかぼちゃプリンを食べて、淹れたてのコーヒーを飲み、読みかけの文庫本をぱらりぱらりとめくっていく。こころが満足してゆくのがわかる。

いつもの街の、知らない道で、ふと見つけた店が、すばらしかったとき、私の浪漫はいともたやすく完成する。実に簡単で単純な浪漫である。

ちなみにこの本を買った「Title」という本屋さんもとてもすてきだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?