平松洋子「忙しい日でも、おなかは空く」

YouTubeやSpotify、テレビ…
流しておけば情報が入ってくるメディアばかりだった最近。
ひさしぶりに本を読んだ。

一度読み始めると、止められない。
だから、読み始めるタイミングはいつも考えなければならない。
今日は引っ越してきて初めて区の図書館に行った。
ハードめな内容のと、軽く読めそうなの、3冊借りる。

帰ってきてさっそく読みたい。
でも午後からオンラインで研修がある。
途中で止められそうな本…と思い読み始めたのがタイトルにもある作品。

平松洋子の著書は、中学生くらいのときに読んだ。
内容は思い出せないが、食べ物にまつわるエッセイで、
表紙は100%ORANGEのイラストだった。
(あとから調べて「ひとりひとりの味」だとわかった)

本の内容は、女性誌で連載されていたエッセイをまとめたもの。

エッセイ。
それぞれの章はそれほど長くなく、ライトに読める。

「忙しい日でも、おなかは空く」では、
少し扱いを変えるだけで違うものになる食材や、
食にまつわる道具などが紹介されている。
「この人はこんなこだわりがあるんだ」
「この食材にこんな調理法があるなんて」
ふむふむと読み進めていく。

その途中でふと思う。
これって、意外と頭を使っているんじゃない?
一つひとつの章は短くても、そこにはそれぞれ別の物語がある。

連載もののエッセイだからこそ気軽に読めるものが、
まとまった一冊の本になることで、一気に重みを増す。

その文章によって、最適な読まれ方があるのかもしれない。
少しの休憩に、ちょっとした移動時間に…。
そんな「ちょっとした」に合うのがエッセイなのかもしれない。

この本のなかでいちばん食べてみたいと思ったのが「ごまごはん」。
炊き立てのご飯に、すりごまと、塩と、しょうゆ。
ただそれだけなのに、読んでいるだけで口の中にごまの風味が広がる。

「こちん、かちり。」と溶けてすべり落ちる氷。
かんだ途端「こくのある汁気がびゅうっとほとばしる」かぶ。
「手にとり、つ、と傾ける」片口。
目を閉じてどこを開いても、想像をかきたてる言葉が並ぶ。


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