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小説

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高三の夏に書いた雰囲気小説

およそ10年前、高三の夏に書いたらしい非常に短い小説が2本見つかり、記念に残しておこうと思い、あげておく。読めたものではないのだが……。何というか、ギャルゲーの影響を感じる。

「少年時代」

 いっしょに行かない? 
 そう彼が言ってくれた時には本当にどきどきしたし、すごく嬉しかった。
 彼はもう、帰ってしまっただろう。明日からはもう、今までと同じようには話せないのかもしれない。そう思うと、すこ

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従姉の死

 私はどこかに出かけていた。川沿いの道かもしれないし、納骨堂かもしれないし、ちょっと歩いて砂浜まで行ったのかもしれない。ともかくどこかに出かけ、そして父方の実家に帰ってきたところだった。靴を脱いで玄関を上がり、居間の戸を開けると祖父母や親戚が机を囲って黙って座っている。私を見上げ、叔父が「千夏の心臓が止まった」と呟く。いつもはひょうきんな叔父で、だから彼の真顔は他の人の真顔よりも真実味があると私は

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時の何かを知らない

一昨年から昨年にかけて書いた小説。原稿用紙142枚。縦書きPDF。

一 集合

 捜索は三月のある土曜の昼過ぎに始められた。
 その日はよく晴れていた。南風がやや強く、日向にいると暖かく、薄手のコートでも着ているとじんわりと暑さを覚える程であったが、日陰に入るとやはり時節並に肌寒く感じられた。
 その日、昼過ぎ、四人は校門を待ち合わせ場所としていた。
 まず現れたのは修二であった。学校は丘の上に

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声、ひかり。

2013年あたりに書いた小説。我ながら、若い……。新人賞の二次で落ちたものの改稿、改題。原稿用紙189枚。縦書きpdfファイル。

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声、ひかり。   0

 結局何も変わらなかった。お兄ちゃんの職の選択肢が一つ減っただけ——お父さんは毎日仕事に行くし、お母さんは家で洗濯をするの。

 僕が笑うと、彼女も少しだけ微笑んで、パーカーの紐の先を弄った。意味がないのよ。そう言う彼女の口元には微笑

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あの夜と、あの夜よりも前の夜と、あの夜の続き

2015年、「軽いうつ」だった頃に書いた小説です。もう時効だろうということで公開します。原稿用紙96枚。縦書きpdfファイル。

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あの夜と、あの夜よりも前の夜と、あの夜の続き 九月二十二日。徹夜明け、昼前に新宿の文房具屋に行き、万年筆と原稿用紙百枚を買った。医師の診断によれば「軽いうつ」で、もうまったく気力を失い、何十時間も眠り続ける日々の中で、万年筆を持って原稿用紙に向かってみることは

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