20220525 『高校生からの古典読本』を読み教科書を考えた

高校生からの古典読本』という本を買ったのだが、これがすごく良い。教室に置くためにもう一冊買おうと考えている。

いくつかの古典作品の一部を抜粋したもの、と言えば教科書のようなものだが、教科書との最大の違いは、教科書では古典作品がほとんど「学習順」(といってもよくわかってはいないのだが、単純に話の難易度や、文法事項の系統的な学習への配慮のようなものを感じる)に並べられているのに対し、本書では、テーマ別に並べられている。例えば「女と男のいる古典」というテーマのもとに『源氏』や「古代・中世の和歌――「忍ぶ恋」の和歌」の章があり、「何が「イケ」てる?」のテーマのもとに『枕草子』「心にくきもの」や『徒然草』「花はさかりに」といったような形で、作品や抜粋箇所にはいわゆる教科書と重なるところもあるが、一方で『好色五人女』や『さんせう太夫』や『文語訳聖書』など、まあ教科書では扱わない作品からの抜粋もある。

共通テストでは、文学作品にそれを解釈した短い文章がつくという形が定まりつつあるようだが、古典も、例えば『高校生からの古典読本』のように、ただ古典作品の抜粋とちょっとした読解問題の羅列でなく、「読み方」――文学史的な文脈というか、テーマというか……を提示するような編集が為されると、現代的な要請に見合った授業が行われやすくなるのではないかと感じる。つまり、古典文法ないしは文語文法の教養としての重要性もよくわかるのだが、教科書の編集において、それ以上に重視した方がよいものがあるのではないか、ということだ。現状、なぜその教材を学ぶのか、なんてことを伝えるのも教員次第で、テーマを深めようにも関係するテキストは教科書になく教員が用意するしかない、のだが、そうしたところを補助するような構成の教科書になっていくと、古典を読むという営みとしては、読み方を狭めるのかもしれないが、そうでなくともどうせ概ね「現代文より得点率を固めやすい」受験科目としてしか捉えられないような科目なのだし、文法の暗記などよりはマシな古典の学習が行われやすくなるのではないかなぁと思う。


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