見出し画像

\祝/ ロ ー エ ン グ ラ ム 公 独 裁 体 制〜銀河英雄伝説 Die Neue These (24)感想

 ラインハルトが絶世の美形なの、ローマ初代皇帝アウグストゥスが超絶絶世の美男子で、身なりに気を使わず頭がボサボサでも美しかったという話を思い出す。
 ラインハルトのあのキラキラ髪はセットしてるんじゃなくて寝癖なのではなかろうか。
セットしたら姉上みたいに綺麗に落ち着いた巻き髪になるはずだもん。

 「ミステリと言う勿れ」を再放送していて、私の愛する古代ローマ皇帝であるマルクス・アウレリウスの「自省録」が出ていて興奮した。実はドラマで使われていた神谷美恵子訳の「自省録」は持っている。ああいう風に暗号として使える古代ギリシア・ローマの哲学書は山ほどあるのだが、採用されたのが何故「自省録」なんだろう、とふと疑問に思った。

 ローマ市民のなかで最上流の家庭に生まれ、幼少期から皇帝やその補佐になるべく育てられたマルクス・アウレリウスは、物心つかないうちに実父をなくし、祖父の手で育てられた。だが、奇妙な現象が自省録の冒頭の様々な人への感謝の章(自省録の良いところは、思いつくひとに感謝の念を捧げた章があるところだ)にある。
 これは散々読んだ人の中では指摘されているけれども、幼いマルクス・アウレリウスのことを「ウェリッシムス」とあだ名をつけて親身になって面倒を見た、ローマ皇帝ハドリアヌス帝への感謝が何故か「無い」ということだ。忘れていたのではなく、感謝したくなかったんだろう。ハドリアヌス帝のことは5か所ほど自省録の中に記されている。だが、どの記述も複雑な心中を思わせる。ハドリアヌスはマルクス・アウレリウスの曽祖父を更迭しているし、聡明ではあるが、特に老年になれば感情的に不安定で猜疑心の塊となり「独裁者の晩年」そのままだったし、また、少年たちを閨に召していた。マルクス・アウレリウスが閨に召されたという史料はないが、限りなく聡明で慈悲深いはずなのに、ときどき気まぐれで恐ろしい庇護者に、複雑な感情を感じていてもおかしくない。
 もう一つが、「祖父の妾のもとであまり長い間育てられなかったこと」と記されていること。反面、実母には大きく感謝を述べている。

 愛おしい実母ではなく、嫌な「祖父の妾」に育てられたこと。自分に目をかけてくれたローマ史上屈指の「名君」に、感謝ができないほどにつらいことをされた可能性。  
 哲人皇帝とされ、ハドリアヌスとともにローマ史上屈指の名君と言われていて、表面的には最上流家庭で物質的不足もなく、上質の教育を施された彼の幼少期は、相当にグレーだったのだろうなと窺わせる。そして、全てに恵まれて周囲に感謝していながらも、自分に親身になって面倒を見た人だけには感謝できない姿とその彼の自省こそ、「ミステリと言う勿れ」の人の心の痛みを書きぬく世界にふさわしいと思った。

……じゃなくて銀英伝DNTの話だったいかんいかん


過労死しないで??

 ラインハルトは侯爵(Fürst/Marquess)から公爵(Herzog/Duke)になった。たぶん。マークェス・ラインハルトからデューク・ラインハルトになった。息をするように陞爵するなこいつ
 やっぱ皇帝超えて宇宙大将軍目指してんのかなぁ

 公爵になった上、リヒテンラーデから奪取した帝国宰相職と帝国軍最高司令官職を兼ねたため、ローエングラム公爵独裁体制が確立した。

幼帝を傀儡にし、軍権と行政権を握って無事独裁政権を樹立したラインハルト。
2022年大河の主人公と同じことをしている。トレンドに違いない。

 骨太でリアルな作画が売りのproductionIGのくせに、ラインハルトが「イケメンギャラクシー 帝国宰相兼帝国軍最高司令官と銀河の果てまで恋をしよっ♡」みたいな作画になっている。
 エルウィン・ヨーゼフを挟んで隣にいる乳母が、ラインハルトに惚れてこれから幼帝を売り払うに50000000票。

 なんでローマ帝国の話をしたかというと、ちょうどローマ帝国前期の仕組みが、同盟の議会に帝国のラインハルトのような軍事権と行政権を持った独裁者を戴き、その相克こそがローマの歴史を紡いでいったからである。開祖のユリウス・カエサルは無茶苦茶独裁的になったので暗殺されたから、初代皇帝のアウグストゥスは議会(元老院)をかなり尊重した。そして第16代マルクス・アウレリウスは、「議会(元老院)」を尊重しながらも、自らの息のかかったものを元老院議員に大勢推挙し、骨抜きにするのにかなり手を打った皇帝なのだ。その彼の姿勢が後に皇帝の真の独裁体制・専制君主政(ドミナートゥス)の種を蒔いたと言われている。(実はドミナートゥス政という概念自体が古いようなのだがここはご愛嬌)

 というくらい古代ローマ人も気を使っているのにラインハルトなんか一気に無茶苦茶独裁体制敷いちゃったので目ん玉が飛び出た。丁寧な独裁をしていこうよ!!!
 軍権と行政権を握って独裁体制?となるなら、わりと執権政治と似たような感じなのだが……ひょっとしてラインハルトは執権と同じ感じ!?
 執権みたいな権力構造だとてつもなく忙しいので、過労死しないでほしい。

 キルヒアイスの墓参りをするラインハルト。みんなそばにいる人がモブ顔ばっかりなのが心につらい。

 ラインハルトはたぶんジャーマンアイリスとトルコキキョウを墓に供えているのだが、トルコキキョウには「感謝」とか「良い語らい」とか「永遠の愛」とかいう意味がある。ジャーマンアイリスには「情熱」とか「燃える思い」とかいう意味があるから、今まで補佐してくれたことへの熱い感謝の気持ちと、永遠にあなたを忘れることはないし、あなたの望む通り銀河も手に入れてご覧に入れましょう、という熱量を感じる。

なんかこう、ラインハルトは墓に備える花もラインハルトだよね……
これ息子生まれたらクソデカゆりかご作るだろ(いつ生まれるのかはわからないが……)(すでに実は生まれているのかもしれないが……)
これで銀河を手に入れなかったら無茶苦茶「我が友って、誰の?!?!!?」て墓碑になるからラインハルトは絶対銀河を手に入れて欲しい。

 一方で、ジェシカとラップの墓へ赴くヤンさん。キルヒアイスの木陰にある高級そうな墓に比べると本当に一般人的な墓だ。そしてヤンさんが差し出すのはかすみ草。花言葉は「無垢の愛」「感謝」「幸福」。二人に差し出す言葉であり、花らしいなあとおもった。

シェーンコップとユリアンという鉄壁をすり抜けて、一人で二人のところへ赴いたヤンさん。
二人の墓の前でもラスボス猫口フェイスを崩さなかったけど、
二人を感じたら冴えなかった士官学校時代のヤンさんに戻るのがなんとも言えず切ないなあ

 前回ラインハルトがキルヒアイスを愛撫するように宙に手を浮かせていたが、両思い(?)だね、と思ったのが、ラインハルトがキルヒアイスの遺髪を保管しているロケットの中をあけた時に、ラインハルトの髪の毛が揺れたこと。風になったキルヒアイスがラインハルトの頭を優しくそっと撫でたかのようだ。ラインハルトがキルヒアイスの髪の毛を撫でる、視聴者私の度肝を抜いた描写があったが、今度はその逆。初めてキルヒアイスがラインハルトの髪の毛を撫でた(……んじゃなかろうか)。

キルヒアイスの遺髪を拝借していたらしい。アンネローゼ姉ちゃんにまた怒られるぞ

 キルヒアイスが物語中初めて全肯定botとかライナスの毛布とかいう役割なしに、本当の意味で幼少期みたいに対等に戻って「頑張れよ、ラインハルト」とデレた描写だと受け取った。ボロ泣きした。

 でも、やっぱりわしゃわしゃ風が吹くのはヤンさんだった。ヤンさんは空を見ていて、ただただぼんやりしている。もし死後の世界というのがあるなら、ヤンさんはけして死後の世界でさえジェシカと結ばれることはない。その死にサングラスをかけるほど大切に思っていた女性は、親友と結ばれる。自分はその幸福を守っていく。
 それに気づいたかのような顔がよかった。

耐久系の罰〜〜!

 白い軍服のヤンさん。いやー、かっこいいですなぁ。

まあこのくらいかっこよくないとラインハルトと顔面的に釣り合わなry

 でもなんで功績をあげたのにトリューニヒトの長い演説を聞かされた後握手までしなきゃいけないのか。耐久系の罰再び!!
 そりゃ「どっかの田舎でのんびり暮らしたい」という妄想だってしますって!
 でもヤンさん、なんだか晴れてる日はブランデーで雨の日はワイン飲んで……とか、やたらと飲んでんな……

 クズ野郎の政治家ばかりがのさばる民主主義社会。トリューニヒトのダメっぷりはことごとく描写されてきた。その場しのぎで明確な思想性がなく、ただ自分に反発する人間は暴力で抑え込む。かと思えばひらりと自分に落ちて来る隕石をかわす。
 こんなやつの何処がいいのか。どうしてこんな奴を民衆は選んでしまうのか。現実社会でも「なんでこんな奴が議員やってんの」という話はあるあるである。

愚民を見下ろすラスボス・ヤン提督
ヤンさんはトリューニヒトが嫌いだけど、
トリューニヒトにとってはこんな意味不明な人間、嫌い通り越して生命の危機を感じて全力でなんとかしようとするよね。

 この問いは哲学が哲学の形を成してからずっと問われ続けてきた。プラトンは師匠のソクラテスがアテナイの民衆の総意によって殺されたことから、「多数決で決める民主主義は少数に支持されている優秀な者を救えないのではないか」と民主主義そのものに大きな疑義を呈している。それだけではなく、プラトンの兄弟弟子に当たるアルキビアデスはソクラテスの教えを乞うたにもかかわらず、トリューニヒトもびっくりな扇動政治家になってしまった。
 また、20世紀の哲学者オルテガは、「大衆は大衆ゆえに少数派を排除する」とし、皆が同質化した結果、もっとも「皆」と同質化した政治家が「皆」に後押しされて権力を握ることで揺るがない政権ができ、その結果、「皆」とは異なる考えを持つ少数派は排除される、と考えた。
 民主主義、多数決政治とは他の人の意見や立場を尊重するためにできた制度だと我々はうっかり考えてしまっているが、本当は大多数に受け入れられる思想や人物でなければ生き残れないという大きな欠点を抱えている。

 ここら辺のことが盛り込んであるのだろう。ヤンさんはあることに気づく。民主主義の愚かさを経験した優秀な人は、こう考えるのだ。

 これを救うのは自分しかいない。

 ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは欲望のままに権力が握りたかったのではなく、むしろ欲望のままに動いて他者を破壊する大衆に絶望したのだ。このままではこの世界は崩壊してしまう。そういう全人類に対する責任感と使命感が、彼を専制者にした。

 ここでラスボスの想いが明らかにされたので「おおお……!」となった。やっぱり2クールめの最終回はこうでなくっちゃ!!

 あの、それでついでにとても嫌なお知らせなんですが、トリューニヒトがめんどくさいこと言ってる。
 ヤンさんに目をつけたらしい。この変態!イヤーーーッ!!!
 このやろう〜!舌先3寸で生き残ってきて、ラインハルトとかキルヒアイスに秒で圧殺されそうな華奢な肉体しか持ってないくせに何するんだ〜! ヤンさんも一応軍人だから、トリューニヒトと握手した時、その気になればトリューニヒトの手をバッキバキに潰すことができたんだからな〜!!! やめろ〜〜!

 勝ち続ければ殺されない。ヤンさんは気持ち悪い枷を首につけられてしまった。



 最後、怪しげな宗教団体がいたんですけど……?!?!?!

地球教のみなさん。見るからに怪しいし、宗教の皮を被った秘密結社だろ

まとめ

・ラインハルト過労死しないで
・ヤンさん、生きろ


アンネローゼ姉ちゃんの新居。小さな家ってなんだっけ
弟が幼帝を傀儡にし独裁政権を作った日の姉ちゃん。
ジークをぶっ殺した弟に思うところがありまくるけど、
まあクソ銀河帝国を打倒するっていうなら
いいんじゃなぁい? という気分なのだろうか……
なんだか弟みたいな表情してるぞ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?