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自己の正しさを信じて疑わない奴ら〜銀河英雄伝説 Die Neue These (21)感想

 アーーーッ!! キルヒアイスに死亡フラグが立った(病気でも事故でもなんでもなく、ラインハルトに粛清されるんだろうなあ)というのに、次が同盟とか鬼か!? ふざけてんのか!?!?!?!?!?!?!?!
 おい監督出せ!! 私が説教してやる!! どう考えても同盟なんかほっといてキルヒアイスとラインハルトの心のズレを……

 とか思ってたら21話、同盟、圧巻過ぎたので吐血した。


ジェシカを失ったヤンさんがグレードアップ

 救国軍事会議、なんだか「大丈夫だ!!ハイネセンにはアルテミスの首飾りがあるから!!!」って言ってるけどそれドチャクソ負けフラグだと思う。

 本当に、なんかこう、初っ端から不思議陣形グルグルだったり、半裸のゴ……リラに敬礼する文化があったり、ローエングラム元帥府しか使えない秘密兵器をミッターマイヤーが使えなかったり、ふざけてんのかというツッコミ満載なのに、戦闘シーンはかなり真面目な方に気合い入ってて美しいんだよなこのアニメ。

アルテミスの首飾り。かっこよすぎる。
いつも通り変なところに座りながら作戦を説明するヤン提督。
むずかしいからフリップでせつめいして

 首都星であるハイネセンを防衛する軍事システム・アルテミスの首飾り。ヤンさんはこれをぶっ壊すために、爆弾に氷塊をくっつけて亜光速までえーっとなんだっけ
 無駄なくアルテミスの首飾りを撃ち落とすシーンは圧巻だった。動画で絶対見てほしい。すごくすごい(語彙力)

撃ち落とされた首都星防衛システム。ヤンさん、愛する女性を亡くしてから母国に容赦がない

 ジェシカを失ったヤンさんがグレードアップしてきた。バグダッシュに「救国軍事会議のクーデターは、ローエングラム侯の陰謀だ」「物的証拠はない」「だけれど事実だ」と告げるシーン、ヤンでなければ頭のおかしいの人の妄想だとしか思えないけど、有無を言わさない何かがあった。そして、これは事実でなくとも十分に同盟市民を動かすものだ。

「物的証拠は今の所ないが、事実だ(`・∀・´)」
「物的証拠(資料など)」がないとお話にならない歴史学を志望しているとは
到底思えない発言だが、ヤン・ウェンリーはそれが許される。
ヤン・ウェンリーだからである。

 さらにヤンさんが恐ろしいのはハイネセンの防衛システムを撃ち落としてしまえ、という姿。もちろんハイネセンの防衛システムを撃ち落とせばこれからハイネセンは丸裸になる。貴族連合にそろそろ勝利をおさめつつあるラインハルトが、戦後、どちらに目を向けるかといえば姉上のケルシーのケーキ同盟なのはわかりきっている。更にいえば、アルテミスの首飾りを撃ち落とす氷塊がハイネセンに間違って落下したらハイネセンは壊れる。よっぽど弾道計算を厳密にやったんだと思うけど、それにしたってねえ!?
 本当にこの人、同盟と帝国双方を滅ぼしたいんじゃないだろうか。

リンチが圧巻〜

 素直に泣いた。
 実はリンチはこの時点で自分を追い出したヤン・ウェンリーへの恨みは語るが、彼への恨みで動いているわけではないのが気になっていた。リンチ的には「あいつは天才的な才能があるからあがいたところで仕方がない」というあきらめがあるのだろうか。少なくとも、フォーク系ではない。
 こういうことからも、リンチは運が悪く臆病で過ちを認めにくい性格だっただけで、嫉妬心や虚栄心の塊だったり、ひどい被害妄想があったり、自分の中で事実をはちゃめちゃに歪曲したりするわけでもなく、エル・ファシルがなければそれなりの(普通の)人物だったと見て取れる。

 リンチが壊したかったのは二級上の先輩のグリーンヒル大将なのではないか。

 自己の正しさを信じてやまない人間に、弁解のしようのない恥をかかせてやりたかった。

 コメントで頂いたのだけど、グリーンヒル大将は結構過激な思想を持っていたのかもしれない(でなければこんな危ない軍事会議のクーデターにお飾りだとしても入ったりしませんよね)。
 人にはさまざまな正義があったり、立場があったり、価値観があったり、信条があったり、そもそも正義を信じていなかったりするのに、自らの正義というものを押し付ける傾向のある先輩だったのではなかろうか。そういう人はわりと人格的に優れていて温和な良識派が多いのかも。
 それを後輩として常々嫌悪し、そんな人間が失敗もせず成功を重ねていくことに忸怩たる思いを抱いたのではないだろうか。
 そんなことを考えていたらリンチの方が好きになっちゃった

残念な真相を知ってがっくりくる救国軍事会議のメンバー達

 おそらく後輩だったリンチの名誉をこれ以上傷つけないために、リンチを内々に処断しようとするグリーンヒル大将。そんなグリーンヒル大将を囲むのは、ジェシカに死ぬ覚悟がないと散々言ってたくせに、自分たちが死ぬ段になったら「降伏して裁判を受けるのか」とオロオロする、思想に殉じる気さえない人々。
 期待していた、とグリーンヒル大将に言われた時のリンチの表情が良かった。

卑屈だがすべての悲哀を込めた表情に、ずっとぼろ泣きしてしまっていた。

 グリーンヒル大将は弱者に対して本当に同情がないなあ、と逆に思った。そう思っているなら、リンチがまともに暮らせるよういろいろとりはからうべきだったのであって、自分のクーデター計画に組み込むべきじゃなかった。

 もともと優しかった先輩/期待していた後輩がゾンビになっていたので処断するということなのだろうか。グリーンヒル大将とリンチの間にはそれを感じる。

「俺はそいつの名誉を救ってやったんだぞ。わからんのか」

 歪んだ組織を率いてクーデターを起こした上、元捕虜だった後輩を殺したとあっては、グリーンヒル大将の名誉は地に堕ちるだろう。

 グリーンヒル大将は自決した、と聞いた時のヤンの表情が、全部見切っているような気がしていた。

グリーンヒル大将に一番モヤるのは、フレデリカを可愛がっているように見えて、
救国軍事会議にさえも参加させなかったことだなあ……。
大好きな父親の歪んだ思想を見せられて、フレデリカの立場を悪くすることばかりしてきて、
最後は「済まない」の一言もなく……。

まとめ

・私にとっては、グリーンヒルよりリンチのほうが好感度高いな
・よろこんでくれ 数千年後の未来にも普通にチャーハンある

チャーハンしか勝たん!!!
仕事量もさることながら、フレデリカが父親の死の傷を仕事で埋める様子に
「はぁ〜……」ってなっているんだろうヤン提督。
ヤンさんがグリーンヒル大将の死因だと考えると、この仕事嫌になるよね……

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