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【名作 朗読】変な音 夏目漱石

夏目漱石の短編を朗読しました。

YouTubeにアップしてます。人の生死について思う、漱石の静かな視線がお気に入りです。


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もう十四年も前になりますが、私の父も母も病院で死にました。

二人とも同じ年の夏に死んだ。

父が死ぬ三日前に会ったとき、父は「また来てくれな」と寂しそうにそう言って笑いました。その三日後に死にました。もっとコマ目に洗濯物の替えをもっていけばよかった、とよほど後悔したのを覚えています。

母は死ぬ前日にメールをくれました。「今日は体が楽だよ、ありがとう」というような内容でした。次の日、バイト中に病院から連絡が入り、そのまま彼女は返らぬ人となりました。

二人とも死に目には会えませんでした。暫くの間は後悔の念しか持てませんでしたが、今では二人のことを思い出すと、温かい気持ちでいっぱいになります。


夏が来ると、父と母を普段よりよく思い出します。そして、ふたりともほんとうにありがとう、という気持ちでいっぱいになれる季節でもあります。


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