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やきいも焼けた

やきいも焼いてます

大きな立て看板と、その横に大きなドーム型のものが見える
ドラム缶を上下丸く絞ったようなその形、あの中でやきいもが焼かれているに違いない

その日、午後からはじまる仕事のため、いつものように車を走らせていた
いつも通る道、交差点で信号待ち、ふと横を見ると八百屋さん
そういえばここに八百屋さんあったよな~と思う
いつもはただ通り過ぎるだけで、目のどこかに入ってはいたのだろうけど
気にしたことはなかった

大通りに面した通りではあるけれど、シャッターが閉まったお店が多い中で
その八百屋さんは、いつも開いていて、なんだかちょっと活気があった
季節の野菜や果物が、店先にはみ出すように置いてあって
きっと近所で評判のお店なのかもしれない

やきいも焼いてます

前からやきいもあったっけ?いつも通る道なのに思い出せない
あったような気もするし、気にしたことないから気づかないか
それとも最近やりはじめたのかな、それとも・・・
そんな思いが交差する

☆☆

何年か前に、旅行先で同じようなものを見たことがあった
お土産屋さんが立ち並ぶ通りの店先にあって、中をのぞくと、熱々のやきいもが並んでいた

やきいも

普段絶対に買わないものも、旅に出ると急に食べたくなる
燻ったその匂いに誘われて、ついつい買ってしまった
結局食べきれずに、ずっとバックに入れたままでちょっと後悔した思い出がよみがえる
ひと口目は、本当に甘くておいしくて、やきいもってこんなん?と感動したのに
今から思えば、非日常の気持ちの高揚も手伝った相乗効果だったのかもしれないけれど

☆☆☆

すると、お店の店主だろうか、70過ぎくらいの男性が出てきた
そして、立て看板に近づいて、持ち上げ、そして裏側に向きを変えた

やきいも焼けてます

焼いてますから焼けてます
やきいもの字色も、紫から赤へと変わっている

☆☆☆☆

信号が青に変わり、車が流れ出す
いいな、ああいうの・・・
なんだかちょっと気持ちがホクホクした

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