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夜、ウイスキーとタバコと半纏

古着屋で半纏を買った。

アパート近くのコンビニで安いウイスキーを買った。そしてタバコも買った。銘柄なんてよくわからないけれど、あの人が吸っていたタバコのパッケージの色を頼りに買った。後で知ったのだけど全然違うやつだった。それがなんとも私らしいなと思った。

アパートに帰ってきた。

越してからろくに使っていない埃をこさえた換気扇は一応箒ではたいたがそれでも落ちきれず、換気扇を回すと埃を部屋に撒き散らしやがった。

夜が来るまでウイスキーをちびちびとなめ、待った。なにが美味いのかわからないけれどとにかくちびちびと。「ちびちび」で思い出したけれどあの人は私のことを「ちびちびちゃん」と言っていた。あの人は江國香織をよく読んでいた。私も真似して読んだが元々本を読むのが苦手だったのですぐやめてしまった。

気づいたら酔いが回り、眠りこけていた。
夜が来て、わたしは半纏を羽織り、換気扇を回し、タバコのパッケージを開け、咥えた。ライターを買い忘れたことに今頃気付いたが買いに行くのも面倒なのでガス台で直接火をつけた。咥えたままつけたので前髪が少し焦げた。

どっちを咥えるのかも知らないタバコはそりゃ味なんてわからないし、ただただ煙たくておじさんの匂いがして肺に申し訳ないことしたなという気分になったが、どこかで安堵も覚えた。それがニコチンのせいなのかあの人と同じスタイルで、夜のキッチン、ウイスキー、換気扇の元で赤い半纏で、タバコを吸っているからなのかもしれないし、私の希望はもちろん後者だった。それでどうにかなるわけでもないし、そんなことは私が一番よくわかっているけれど、こうすることでしか私はあの人と一緒になれない。

生活費になります。食費。育ち盛りゆえ。。