【ショートステイ】 協力家庭の体験談 vol.1 佐々木夫婦の場合 〜「無理しない程度で、出来ることを」〜
東京都新宿区にある一軒家「れもんハウス」。
「あなたでアルこと、ともにイルこと」をテーマに、年齢や属性は問わず、様々な人たちが集い、出会い、時間を共にしています。
そこは、新宿区の子どもショートステイの受け皿にもなっています。
新宿区では、2歳以上のお子さんは、「協力家庭」という区に登録している一般のご家庭でお預かりすることになっています。しかし、ショートステイが必要な親子がたくさんいる中で、受け入れる協力家庭はまだまだ足りていません。
そこで本記事では、
家庭をひらくことや、子どもと関わることなどの面白さを伝えることで、協力家庭になるご家庭を増やしたい
保護者の方が、ショートステイを利用するハードルを低くしたい
上記の2つをふまえて、もっと「子どもたちをみんなで育てよう」という雰囲気のある地域にしていきたい
という想いから、新宿区で協力家庭をされているご家庭のインタビューをお届けすることにしました!
*
はじめに
第一弾は、佐々木元子(ささきもとこ)さんと佐々木素行(ささきもとゆき)さんにお話を聞かせていただきました。
お二人は、「一般社団法人みらいの」として、「イドバタ」という居場所を運営しています。「イドバタ」の活動内容は、ショートステイや子ども食堂など多岐にわたります。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
「イドバタ」を始めたきっかけ
——「イドバタ」という居場所の運営を始めたきっかけは何ですか?
元子さん:一緒に住んでいた母が入院しないといけない状況になって、家が空いたんです。空いたって言ったら変だけども、ここを使って、出来ることをやっていければなと思って。そのときに社会福祉協議会に声をかけたら、たまたまそういう場所を探している法人や団体と知り合ったんです。子どもであっても、高齢者であっても、「一人にしない」っていうところを軸に活動しています。
素行さん:「イドバタ」って名前をつけたのも、昔の井戸端をイメージしました。
ショートステイを始めた経緯
——ショートステイの協力家庭になったきっかけは何ですか?
元子さん:私が里親をやりたかったっていうのが元にありました。「お休みの日だけでも預かりたいね」って結構前から(素行さんと)話していたので、「ショートステイなら出来るんじゃない?」っていうところから始まりました。
素行さん:問題意識としては、いっぱいある行政の隙間を、誰がどうするのかっていうところだよね。
元子さん:その隙間を私は、地域包括で働いていたときに感じることがいっぱいあったので。
——里親をやりたかったと仰っていましたが、それはハードルが高かったですか?
元子さん:そうそう。里親って年齢制限とかもあったりするじゃないですか。里親はちょっとハードルが高いけど、ショートステイなら仕事をしていたとしても、お休みの日だけ預かれたりね。自分たちが無理しなくていい程度で、ショートステイをやろうって決めました。だから何かすごい目的を持ってやってるわけではないです(笑)。私たちが何を出来るのか自分たちでも分からないから、「まず出来ることを」っていう感じです。
——ショートステイ自体ほとんど知られていませんよね。学校とか公的な機関もあまりわかっていなかったりとか。
素行さん:ショートステイを広めるのって難しい。「あそこにいる子はひとり親なんだ」とか、変に繋がっちゃったりするのを避けたがっている親御さんっていると思うんですよね。
元子さん:そう考えると高齢者のショートステイの方がオープンですよ。なくてはならないものになってますし、ショートステイに悪いイメージはついてないからね。そのくらいオープンになったら良いですよね。
これまで引き受けたショートステイについて
——ショートステイを始めてから、受け入れ頻度はどのくらいでしたか?
元子さん:ショートステイの協力家庭に登録してから、1、2ヶ月後に依頼がきました。トワイライト*が一番初めだったかな。それから結構毎月だったよね。
素行さん:ここんとこないけどね。去年の10月とかは3週続けてきたこともあった。その月に全部で15泊くらい。
——受け入れ期間はどのくらいですか?
元子さん:短くて1泊。長いときは1週間で、5、6泊する子は中学生。
——れもんハウスは出張要件と入院要件で来るお子さんも多いです。
素行さん:うちも出張がほとんどだよね。後はレスパイト*もある。
——リピートのお子さんは多いですか?
元子さん:ほとんどリピートだよね。
素行さん:最初は緊張するけど、リピートするうちに慣れてくる。ちょっと生意気になってきたり(笑)。
ショートステイ受け入れ時の日常
——食事のメニューはどうやって決めていますか?
素行さん:ナポリタンとかハンバーグとか、子どもが好きそうなのを作る。中学生は難しいけど、みんな食べる。
「うちの子は少食だから、量は少しで大丈夫です」って親御さんに言われたりするけど、子どもは親にご飯を作ってもらうのを申し訳ないと思っていることもあって。ここに来たらすっごい食べる。夜食まで作ることもある(笑)。
元子さん:そしたら親御さんが、「素行さんが作るご飯が美味しいって言って子どもが帰ってくるので、私も頑張ります」って言ってくれたり。「今度は料理できるパパにしてね」って子どもから言われることもあるみたいです(笑)。やっぱり食ってすごいなと思った。
——食後はリビングに残って喋ったりしますか?
元子さん:喋ったりしないね。特に中学生は一人で部屋で過ごすかな。別にそれは全然良いっていう感じですかね。
——朝起きてこないことはありますか?
元子さん:起きなくてもあまり起こさない。5分前ぐらいに声かけるぐらい。あんまり干渉はしないよね。でも大体子どもは自分でアラームをかけて起きてます。みんな偉いよね。
——お風呂はどうしてますか?
元子さん:小さい子は素行さんと一緒に入る。それが結構楽しいみたいです。
素行さん:手で水鉄砲とかやってるだけだけどね(笑)。
元子さん:(子どもが)「またお風呂入ろうね」って言ってくれて。みんな多分普段は時間がないからパパッて済んじゃうけど、ここだとちょっと遊べるのかもしれないですね。
おわりに
——一緒に暮らす上で、「これについては注意する・しない」で迷うことはありますか?
元子さん:ある中学生が、初めの方は「行ってきます」が言えなかったんです。それで私たちが、玄関で必ず「行ってらっしゃい」って言うようにしたら、最近は言えるようになってきて。お家ではあんまり「行ってきます」がないのかもしれないですね。「ご馳走そうさま」も言わなかったもんね。それに対して「挨拶ちゃんとしてね」って言うのは難しいかもしれないけど、私たちが実際にやっているのを見ると、気がつく子は気がつくのだと思います。
——ショートステイで来る子どもと関わる上で気をつけていることはありますか?
元子さん:あんまり必要以上のことは聞かない。迎えに行ったら、もうホームシックになってた子がいて。ご飯食べるまではメソメソしてたけど、ご飯食べ出したら大丈夫になったり。勉強させてもらってるよね。
素行さん:ショートステイで来る子どもは、「お客さんじゃないから」って初めに習ったので、それも気をつけています。
編集後記
お客さんのような特別扱いはしないけど、一緒に美味しいご飯を食べて、遊んで、次の日には「行ってらっしゃい」と送り出す。そんな毎日の中に、お互い新しい発見があります。ショートステイの良さは、子どもが一人にならないことや、親御さんが一息つけることなどに加えて、それぞれにとっての「当たり前」から少し抜け出せることにもあるのだと思います。今回のインタビューを通して得た大事な気づきの一つです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
語り手:佐々木元子さん、佐々木素行さん
聴き手:れもんハウス
執筆:村上琴香