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在籍したベンチャー3社それぞれの価値基準を語ってみる[DeNA, freee, Mirrativ]

こんにちは。Mirrativで分析部のマネージャーをしている坂本です。

最近ふと、「自分のコアってなんだろな?」と考える機会がありました。それを深めていくと、在籍した会社の価値基準に大いに影響を受けてるなということに改めて気づきました。

そこで考えたことを改めて文字にすることで、誰かに何かしらプラスになればいいなと思い、noteにすることにしました。

DeNA Quality

DeNAには2012年〜2014年に在籍しました。DeNAにはDeNA Quality(以下DQ)という価値基準がありました。位置づけとしては、「これを満たさない人間はDeNAの社員ではない」というくらい強い位置づけのものでした。

当時、中途社員向けの研修の一環として、社長の守安さんが直接行う研修がありました。(現在の研修体制はわからず書いています。当時はあったという事実以上の意味はありません)

そこで社員の一人が「DeNA Qualityをいってみなさい」と当てられます。これは、「中途社員に期待することはまずDQ」というくらい、DQを重んじた経営を行っているということの現れだと思います。入社時には、DQをまとめた小冊子も配られた記憶もあります。

下記に当時のDQを引用します。(※2013年当時の同社ウェブサイトから引用)

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まず注目してほしいのは、タイトル本文があるということです。今どきのベンチャーは当たり前に備えている2要素です。
タイトルは、Slackのスタンプになったり、会議中に言葉として発言されたり、価値基準を広める役割をもちますし、本文は、内容の深い理解に役立ちます。
昨今では「タイトル&本文」というのは、価値基準にはもはや必須のサンドイッチになっていますね。

DeNAに就職する前の会社では「Global」「Contribution」みたいな標語は決められていたのですが、本文がなかったため、具体的な運用に落ちず、「Globalってなんやねん」みたいになっていました。

このDQの中で今でも自分のDNAとして色濃く残っているものをエピソード付きでいくつか紹介します。

球の表面積

常に最後の砦として高いプロフェッショナル意識をもち、DeNAを代表する気概と責任感をもって仕事をする

という内容なのですが、これは今でも非常に気に入っている行動指針です。私の言葉で雑に言うと、領域の大小はあるにせよ、誰かから見たらあなたがDeNAの代表なのだから、責任感もってその領域の代表者のように振る舞えということと理解しています。

例えば、顧客対応をしている場合、その顧客からみたら「あなた is DeNA」ですよねと。このように、小さな領域でもDeNAの顔としての一面は必ずあるから責任感を持って仕事をしなさいと理解しています。もちろん、職務レベルが上がっていけば担う表面積は広くなりますがが、担う表面積がゼロの人はいないという意味で「球」という表現を使っているんだと思います。

当時私は分析チームに所属していたので、直接顧客とお会いする機会はすくなかったですが、ツールの営業に来られた方や、DeNAに転職したいと言っている友人と話すときなどに、「この人にとってはDeNAの代表が自分だ」という気概で接していました。

拡大解釈かもしれませんが、任された仕事は、すべて自分が代表者だと思ってすすめるというニュアンスもあるのかなと思っています。任された仕事は、自分がオーナーシップの責任を持ってすすめる。誰かが尻拭いをしてくれると甘えない、他責にしない。最後の砦として振る舞えということ。

自分自身、クロスファンクションなプロジェクトを進めていくのが得意と評価されることが多いのですが、その源泉はこのDQから来ているんだろうなと思います。

全力コミット

2ランクアップの目線で、個人と組織のために成長を尽くす

後半はあんまり意識できてなかった気がしますが、強烈なのは前半かなと個人的には受け止めています。

平社員だったら部長、課長なら本部長と同じ目線を持てということを前半では言っています。今考えると後半も超大事なのですが、当時はあまり後半を意識して業務に当たれていなかったなと、今更反省しています。

では、このDQが自分にとっては今ではどういう存在なのかということを書いていきます。

「2ランクアップ目線を持つ」ことそのものはビジネス感覚やマネジメント感覚を持つのに非常に有効でした。例えば、自身がAというプロジェクトにアサインされた場合、「自分が部長だったら自分自身にこんな期待値持つだろうな」ということを自然に発想できたり、同僚が別プロジェクトに異動になったときなどは、「自分が部長だったら異動させないんだけどな」とか考えたり。
普段からそういうことを考えていて、部長と話す機会があるときに自然にそういう話をして、議論ができる。そんな環境でした。(まぁ部長が考えていることのほうが深くて学びを得ることがほとんどなんですけど)

と、ストレートに2ランクアップ目線の良さを書いてきたのですが、この2ランクアップ目線という行動には隠された効能があったと感じています。それは、自分以外の人の立場に立って冷静に物事を考える力がつく。ということです。

仕事を進めていく上では、ユーザーの目線・候補者の目線・商談相手の目線・部下の目線など、自分の目線を変えて冷静に物事を判断するべきことがたくさんあります。意外とそれって難しいものですよね。自分自身がこう思われていたいというゴーストにからめ取られて、冷静な判断ができないというか。

DeNAにいると否が応でも2ランクアップ目線を体現せざるを得ないので、上記のような考え方(視座高く客観的に物事を評価できる)に長ける方が多いと感じています。

freeeの価値基準

freeeには2014年から2018年までほぼ5年間在籍しました。分析部やグロースハックを立ち上げたり、会社設立freeeを作ったり、より高価格帯のプランをリリースしたり、大変たくさんのチャレンジ・成長をさせてもらった会社です。私が入社した当時は20人くらいしか人がいなかったのですが、退職するころには600名くらいになっており、価値基準が事業拡大にいかに重要なのかを肌身に感じることができました。

2017年時点での価値基準(引用元ブログ) 画像2

*freee社の最新の行動指針はこちら (上記から遥かにUpdateされています)

上記にも注釈しましたが、現在のfreee社では価値基準がアップデートされており、あくまで私自身が在籍したころに採用されていた価値基準を貼っています。

本質的(マジ)で価値ある

ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持ってい言えることをする。

freeeといえばマジ価値、マジ価値といえばfreeeというくらい浸透しているマジ価値です。freee社ではプロダクトマネージャーをしておりましたが、常に「それってマジ価値なの?」ということを念頭においてものづくりをしていました。

この「マジ価値」というワードは全社的に浸透していて、マジ価値への共感をしてもらえるとまわりのメンバーを巻き込むのがすごく楽でした。例えば私が施策Aをしたい場合、他の会社であればロジカルシンキング的な整合性や戦略を作ってメンバーに説明するところ、freee社では「施策Aが誰にとってどんなマジ価値を生むのか」というストーリーを紹介することで、他のメンバーを巻き込むことができました。

まさに、マジ価値はfreeeにとっての価値基準であり、判断基準になっていました。

マジ価値は、プロダクトマネジメントともすごく相性がよい価値基準でした。とくに、SaaS企業では「売りやすいから」や「他社がやっているから」という基準でロードマップを引いていくことは危険です。顧客の課題を正しく捉え、その課題をとく解決法をプロダクトとして提供するというのが王道です。

freeeのマジ価値は、上記のようなプロダクトマネジメントの王道を地で行く思想でした。「売りやすいから」や「他社がやっているから」という理由で企画をすすめることは悪であり、「マジ価値だから」という裏付けがなければメンバーを巻き込むことすら難しいのです。

このように、freeeのマジ価値は、価値基準が判断基準となっている点において、すばらしい価値基準だと思っています。前述のように、マジ価値そのものも良い考え方だと思っていますが、判断基準まで昇華しているという点で価値基準の運用として学ぶことが多かったです。

freeeの採用ページをみると、いまではマジ価値はfreeeのコミットメントとして昇格されているようです。

Hack Everything

取り組んでいることや持っているリソースの性質を深く理解する。その上で枠を超えて発想する。

これも私が大好きだった価値基準です。Hackという言葉がTech企業っぽくて大好きでした。(ちなみに英語のHackという言葉には否定的なニュアンスはなくて、テクノロジーを使って悪いことをすることはCrackingと言います)

私の言葉で言い換えると、自分が持つアセットへの理解を含め、リフレーミングし直すことで、新たな価値を創造するということかなと理解しています。

たとえば、「社員証を忘れないようにするために、家に帰ったら鍵と社員証を同じ場所に置く」。これってめちゃくちゃHackなんですよね。人は必ず、家を出るときに鍵を持って出ます。では、必ず外へ持っていくものは鍵と一緒に保管すればいいじゃない。という感じです。(ちょっと枠超え感が足らない例で申し訳ない)

めちゃくかカジュアルな例を紹介しましたが、最新のfreeeの採用ページではピラミッドを作るための大きな石を木をつかって運んでるイラストが書かれています。

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https://jobs.freee.co.jp/benefits/ から引用。(現在では★が付加され、遊びゴコロの要素が追加されているようです)全然関係ないですけど、上の図は石の上に座っている人のほうがHack感ありますねww ここに座っていれば移動できるんじゃね?的な

話がそれてしまいましたが、Hack Everything って極めてサイエンティフィックな価値基準だと個人的には思っています。アインシュタインは、時間等空間についての理解を深め、最終的には時間と空間は相対的なものであるという枠超えの発想をしました。とどのつまり、科学というのは自然に対するHackなのではないか、といまさらながら思い始めました。

この価値基準のおかげだと思いますが、freeeは業務フローだったり、使用しているツールだったりが非常に効率的に組まれていました。とくに使用しているツールを徹底的に使い込むことは非常に長けていた組織でした。SalesforceやMarketoのようなツールをめちゃくちゃ使いこなしていたり、GYOMUハックというチームがあったりしました。

この価値基準があるおかげで、なにかを変え続けることに対して心理的な安全性が高かったです。他社では業務フローを変えるときには結構コストかかると思うのですが(というかまず改善が言いづらい)、freeeでは何かを提案したときに「それHackだよねぇ」と迎えられるのです。

ミラティブ社の行動指針

遅くなりました。我らがミラティブ社です。

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ミラティブ社の行動指針は上記のようになっており、まだDescriptionが存在していません。まだまだ50名前後のチームであり、タイトルのみの運用でチーム作りをしています。

ミラティブの行動指針の特徴は、「続ける」というのがすべての末尾に添えられていることです。これは私の解釈が大いに入っていますが、要はまず継続することが重要ということなのかなと。たとえば、一発の大きな成果も重要ですが、成果を出して常に勝ち続ける。なにかのスキルをつけて慢心するのではなく、常に学び続けること。それが続けられる人と一緒に働きたいという思いが強く現れていると感じています。

また、ミラティブ社の行動指針は他者との関係性のなかで定義される項目が多いのも特徴です。たとえば、freeeのマジ価値は「ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持ってい言えることをする。」という文言であり、あくまで自分がマジ価値と判断することをしなさいという教えです。

ミラティブでは「期待」「常識」「深い愛」と5つのなかで3つの項目が他者との関係性で定義されています。(期待は他者からの期待だし、常識は世間の常識、愛は主に他人に対する愛です)

やはりミラティブは人が好きな会社であることは間違いないです。提供しているサービスも「スマホ画面のストリーミングで共有し、一緒に同じ時間を過ごす」というコミュニティサービスです。つまり、私達が提供しているMirrativというサービス自体が、人間が複数いないと成り立たないサービスです。こういう観点で、行動指針も他者との関係性によって定義される項目が多いのは当然かなと思っています。

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スキルを磨き続ける

私自身この言葉がすごく好きです。というのは、新しいテクノロジーから新しい価値が生まれることも非常に多いからです。この行動指針があるおかげで、できることを増やそう・できることにもっと深みを出そう、と努力する人ばかりに囲まれて業務ができています。

スキルを磨き続けるというのは、「古いスキルを捨て続ける」「常に努力し続ける」ということなんだろうと解釈しています。例えば一流のアスリートであれば、「いまのフォームでもそこそこ速く走れるが、フォームを変更すればもっと速く走れる」という状況の場合、新フォームを身につけようとすると思うのです。

個人的に医龍という漫画がすごく好きで、天才外科医の朝田龍太郎の名言で

腕ってやつは、上がってると感じてなきゃダメなんだよ。
維持してると思ってんなら、落ち始めてるってことだ。

というのがあるんですよね。

スキルを磨き続けるって当たり前やーんって思った人もいると思いますが、上記のようなマインドを持った人しかいない集団を想像してもらえるとその稀有さが伝わるかなと思います。

深い愛を抱き続ける

でました。深い愛。スタートアップの価値基準の中に「愛」が入っているのは相当珍しいんじゃかなって思います。これが書きたいがためにこのnoteを書き始めたと思ってもいいくらいです。

アリババグループの創業者であるジャック・マーが下記のようなことを言っています。

起業家に必要なのは「3つのQ」そして「情熱」

IQ(Intelligence Quotient)
…… 知能指数。高ければ“成功”はたやすい
EQ(Emotional Intelligence Quotient)
…… 心の指数。苦難を乗り越えられればチャンスは広がる
LQ(Love Quotient)
…… 愛の指数。“成功する”=“愛される”ではない。愛される人間になる必要がある

詳細は上記のレポートをお読みいただくとして、ジャック・マーのような経営者がビジネスの成功要素として「愛」について言及しているのです。

また、プロダクトマネジメントの世界でもMVPだけではなくMLP(The Minimum Loveable Product)に注目されるようになってきており、愛されるということがプロダクト自体のテーマになってきているのです。

と、ビジネスやものづくりの現場で「愛」が浸透してきているのはおわかりいただけたと思うのですが、弊社の行動指針に戻ります。

深い愛を抱き続ける

深い愛..... いやもうまじでどういうことなんでしょうかね。寝る前に「今日はスキルを磨けたかな?」って超単純な問いじゃないですか?でも、寝る前に「今日は深い愛を抱けたかな?」ってめちゃくちゃ難問じゃないですか?

ちなみに、社内では親切な行動をしたときとかに「深い愛」のスタンプが押されることが多いのですが、それは愛の表層の一つだと思うんですよね。ライオンが自分の子どもを崖から落とすのもの「愛」だし、壁に苦しんでいる同僚にあえて声をかけないのも「愛」じゃないですか。もっというと、自分の部屋にアイドルのポスターを張るのも「愛」ですよね。

このへんで「愛」がゲシュタルト崩壊してきたでしょうか?私はすでに30分くらいゲシュってます。


「愛」ってなんなんすかね?


と考えていると気づいてきました。こうやって「深い愛を抱き続ける」についてずっと考えている姿勢そのものが「深い愛」なんだろうなと。

もうちょっと解説します。「深い愛を抱き続ける」という文言をみて、「全然わかんねーよm9(^Д^)プギャー」という態度を取ることもできるのですが、私は「深い愛ってどういうことなんだろう?」という態度で色々と思考を巡らせてきたわけです。

つまり、一見禅問答のように見える「深い愛を抱き続ける」という文言に「愛」を持って接し、色々と思考をめぐらせてきたわけです。その接し方自体が「愛」なんだろうなと。

もう少し抽象化すると、あらゆる人や物、それ自体を尊重するということなのかなぁとおぼろげながら理解してきました。

ここで、「あらゆる人やもの」という事が重要で、通常「愛」という言葉は他者を区別する危険性をはらんでいます。例えば、愛しているよという言葉の裏には、他の人を愛していないという意味が潜んでいますし、愛国心という言葉が暴走すると危険です。だからこそ、あらゆる人や物に対する愛を深い愛と表現しているのではないかと思い始めました。

思い返せば、ミラティブ社では、同僚への愛、上司への愛、職場そのものもへの愛、ユーザーさんへの愛、プロダクトそのものへの愛、チームへの愛、色んな所に愛が潜んでいます。

ちなみに、私は愛というのは、ある意味一方的なものだと考えています。ドラマとかで「本当に僕のことを愛していたらそんなことをしないだろう」みたいなセリフがあると思うのですが、この言葉めちゃくちゃハラタツんですよね。愛というのは与える方が使う言葉であり、与えられている(と感じている)ほうが「愛してるんだったら....」と口にする言葉じゃないと思うのです。

そういう一方通行がメッシュのように張り巡らされて、実は相互愛だっという。そんな思いが「深い愛」になるんだろうなと思いました。

まとめ

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