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生活保護の水際作戦についてちょっと調べてみた


以前読んだ本 行政書士の三木ひとみ先生が書かれた
『わたし生活保護を受けられますか』

この素晴らしい本を読んでいて個人的に一つ疑問に思ったことがあります
それはなかなか生活保護の申請を受け付けてもらえない場合があること
いわゆる『水際作戦』ですね
(最初窓際○○かと思って検索したらそれは使えない社員の言葉で自分の事だったという事は内緒)
これ実務やられている先生方は別として
行政書士合格者や受験生の方であれば同じ疑問を持つと思います
それは…

行政手続法
第二章 申請に対する処分
(申請に対する審査、応答)

第七条 行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、
かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、
申請書に必要な書類が添付されていること、
申請をすることができる期間内にされたものであること
その他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、
速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、
又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。

上記文は行政書士受験生ならおなじみとも言える
行政手続法・申請に対する処分ですね

と、言うことで簡単に説明しますと太字部分
申請がその事務所に『到達』したときはの部分です

手続きの用語ではよく受理って言葉を聞くと思います
受理の解説(goo辞書)
[名](スル)提出された願書・届け・訴状などを受け取って処理すること。「婚姻届を—する」

受理と言う言葉は受け取ってという文言があるように受け取らないという選択肢もあります

一方で到達とは何か
到達の解説(goo辞書)
[名](スル)ある状態目的に行きつくこと。「山頂に—する」「同じ結論に—する」

到達はそこに届けばOKという事です

法律として【受理】ではなく【到達】となっているのが大きなポイントです
到達は届いた時点で意味を達成するわけです
つまり受け取らないという行動は出来ない訳です

こんな糞面倒くさい文言で法律を作らなければいけないほど
法律を抜け道というか悪用というか利用する人がいるんでしょうね
てな感じでこれは行政窓口の逃げ道を封じた法律の文言となっている訳ですね

このように行政手続法で定められているのにかかわらず
受け取らない的な事は出来るのでしょうか?
今日はその事についていくつか調べてみようと思います

ただ結果についてですが私自身試験から1年以上経ってますし
そもそもギリ合格程度の知識なので正しいかどうかは…
こんな見方もあるのか程度に読んでいただければと思います


・行政手続法の適用除外問題
・行政指導として行われている問題

この2つが関係しているのかなと思いました
一つ一つ調べてみましょう
法律の引用に関してはすべてe-Gov法令検索を利用しています
(注意 私個人で調べた意見であり、保証するものではありません)

行政手続法の適用除外問題

先に説明した行政手続法(以下行手法)には適用除外規定があります
(適用除外)
第三条 次に掲げる処分及び行政指導については、次章から第四章の二までの規定は、適用しない
3 第一項各号及び前項各号に掲げるもののほか、
地方公共団体の機関がする処分
(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出
(前条第七号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第六章までの規定は、適用しない。

解説しますと書いてある事に該当すれば行手法は適用しないという訳ですね
で生活保護は生活保護法19条で市町村が実施機関と定められていますので
地方公共団体の機関がする処分には該当します
しかし根拠となる規定は【生活保護法】になります
条例や規則ではありません
つまり適用除外には該当しないという訳です
(この適用除外、受験生であれば○×での表を覚えますよね)


そしてもう一つ行手法には気になる文言が
それは最初になります
第一章 総則
(目的等)
第一条 2 処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関しこの法律に規定する事項について、他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる。

つまり生活保護法で違う定めがあればそっちが優先されるという事ですね
と言う事で生活保護法を見てみます

・保護の原則(申請保護の原則)第七条
・(申請による保護の開始及び変更)第二十四条
このあたりの条文を見ても特に行手法と違う定めはなさそうです

上記2つの事から申請に対して行手法が適用されるとみて間違いないかなと思います

行政指導として行われている問題

2つ目は行政指導として行われている問題です
そもそも行政指導とは
行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう
ちなみに行政指導自体には法律の根拠は必要ありません
『協力』をお願いするもので『義務』を課すものではないからだそうで…

申請が到達する前(書類を提出する前)に助言等を行う行為が行政指導ということになります

おお!まさにこれこそが水際作戦の当たりっぽいですね
『助言』という形で申請やめておいたら?
他に頼れる人いるでしょ?的な事を言っているって事ですね

行政指導に関わる行手法の一部をご紹介します

①(行政指導の一般原則)


第三十二条 
行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない

②行政手続法(適用除外)

3 第一項各号及び前項各号に掲げるもののほか、
地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
及び行政指導
地方公共団体の機関に対する届出(前条第七号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第六章までの規定は、適用しない

先ほど説明した行手法の適用除外②なのですが
実は行政指導は適用除外に当てはまってしまうんですね
行手法上の行政指導①には申請者側に有利な文言が並んでいるのですが
適用除外とは…

とはいえ行手法にこんな定めがあります

第七章 補則
(地方公共団体の措置)
第四十六条
 地方公共団体は、第三条第三項において第二章から前章までの規定を適用しないこととされた処分、行政指導及び届出並びに命令等を定める行為に関する手続について、この法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない

いわゆる努力義務というやつですね
法的義務のような絶対的なパワーはないけど…って状態な訳です

まとめ

という訳でまとめてみます
・申請は行手法にのっとり到達でよい(はず)
・行政指導として申請前に助言としての形で行っている水際作戦っぽい
・地方公共団体が行う行政指導は適用除外ではあるが努力義務はある
こんなところでしょうか?

いずれにせよ生活に困窮した人って精神的にもかなり追い詰められていると予想されますのでこうやって調べて対応するなんてなかなか難しいですよね
もちろん昔話題になった『貰えるもんは貰っとけばええんや』みたいな
人の受給はやめていただきたいですが
必要な人が保護を受けられない・申請できないなんて状況は避けなければいけません

水際作戦なんてものがなくなると良いですよね
申請後にちゃんと審査がある訳ですしね
必要ない人は審査で判断すればよいわけで…

必要な人に届く生活保護制度であってほしいなと思います

あとがき

私事ですができれば来年行政書士を副業開業したいなと思っております
土日副業の予定ですので生活保護の方のお手伝いをすることはなかなかできないと思います
それは別として
行政書士になるという事は法律をベースにした考えをしていかないといけないよねと言う事で
前回の登録販売者は国家資格なのか?問題について【登販】
今回の記事をなるべく法律を調べながら書いてみましたけど
いやこれ大変!!
今回の記事は『申請』の段階だけでこの量ですからね
何を業務にするかも考えていないふわっとした状態ですけど
こりゃ大変だな~と


今回の記事を見ていただければ法律って本当色々と絡み合って面倒臭いものってわかると思います
でもこれってこれまでの人類の経験から成り立ってきたものなんですよ

昨今ちょっとした法律の条文一つで怪しい事をする人いますよね
私人逮捕系ユーチューバーとかその代表格ですね
簡単に考えて悪乗りすると思わぬ痛い目にあうかもしれませんよ

なぜ警察があんな糞面倒くさい手続きを経て逮捕しているか
その背景を考えて行動していただけたら良いなと思います

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