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2人目から5人目までを助産院で出産した私が『1%の風景』を鑑賞して感じたこと

先日、第28回あいち国際女性映画祭2023の上映があり、偶然見つけた『1%の風景』を鑑賞する運びとなりました。

『1%の風景』は、助産所や自宅での出産を選択した4人の女性と彼女たちをサポートする助産師。妊娠、出産、産後と子育てのはじまり・・・途切れることのない日々の記録。
99%のお産が病院やクリニックといった医療施設で行われている日本で助産所や自宅での出産という「1%の選択」をした4人の女性と彼女たちをサポートする助産師の日々をみつめたドキュメンタリー、とあります。

私が、助産院出産を選んだ理由

私自身は、1人目を病院出産した際、バースプランとして「会陰切開をしないでほしい」と伝えていたものの、特に何の確認もなく会陰切開は行われてしまい、傷が治りにくい私は、産後のボロボロな身体で、座れない辛さと授乳のしんどさの洗礼を浴びました。その経験から「2人目は絶対に会陰切開のないところで産みたい!」と固い決意の元、相性の合う助産師さんに恵まれて2・3・4・5人目を取り上げてもらい、現在も問題なくこのまま助産院で出産予定です。
2人目を出産した際、会陰切開がなかったので産後も普通に座ることができる有り難みを実感し、身体の回復が全く違う!と感激しました。
ただでさえ、身体がしんどいわけですから、それに切った痛みまで追加されると、出産が終わっているのにずっと痛い状態で、本当にしんどかったのです。助産院で産むメリットは、私にとっては会陰切開がない=身体の回復力が雲泥の差を一番に挙げたいと思います。
それだけではありません。私は分娩所要時間が毎回20時間を超えることもあって、陣痛に耐えることがかなりの体力と気力消耗になってしまいます。病院での出産の時は、破水からの陣痛だったので、点滴を行いながら陣痛を乗り越えていくのですが、陣痛が始まったのが深夜2時だったので、夫も遠方にいて翌日の仕事のために就寝。私は一人で病院の空いている部屋のベッドの上で、一人静かに陣痛と格闘することになりました。
当時はスマホもない時代だったので、mixiに陣痛がきたことを書き込みつつ、深夜に返信があるわけでもなく、ひたすら一人で耐えていました。時々、看護師さんが「調子はどう?」と言って覗きに来てくれる程度で、「これくらいの痛みで看護師さんを呼んでも申し訳ない・・・」という遠慮がちな発想から、孤独に一人で過ごしていました。
結局産まれたのは、その翌日の深夜3時前。夫も定時で仕事を終えて、高速に乗って4時間かけて来てくれても無事に間に合ったくらい、ずっと一人で格闘していました。何せ初めての出産で、「これは大丈夫なのか?」「大丈夫じゃないのか?」そのあたりの判断も全くわからずに一人きりがとても辛かったのです。誰かがいてくれれば、気が紛れるだろうけれど、わざわざナースコールで呼ぶ程なのかも躊躇してしまい、全くもって”不安”の文字しかありませんでした。
また、分娩前に下剤を飲むのですが、下剤とエアコンの冷えのミックスでお腹に効きすぎてしまい、何度も分娩台を降りてトイレに・・・を繰り返していたのですが、終いには看護師さんから「ここで出して!」と言われて、分娩台で用を足すという本当に死んでも避けたい事態になってしまい、夫の到着が深夜で良かったと心の底から思ったものです。
そんなこともあって、「出産辛い・・・」と思ってしまったのです。
それらを解消してくれたのは、助産院出産でした。陣痛がきてから出産するまで、ずっと付き添ってくれますし、夫がわからない痛みのポイントもわかってくれます。心強くて安心できる存在がいるのが、私にとっては助産院出産でした。産後も、病院では授乳指導は産婦さんを集めてビデオが上映され、こうやって飲ませますと指導されただけで、母乳が出なくて悩んで大変でしたが、助産院では毎日マッサージがあります。夜間も赤ちゃんが泣けば、様子を見に来てくれるので、授乳の悩みが相談しやすいです。一人で悩まなくても良いのです。

助産院での健診

病院での健診は、体重・血圧・腹囲を測って内診、エコーで赤ちゃんの状態を確認してもらいます。助産院で出産しますが、提携している病院で、初期・中期・後期の検査を行い、エコーで赤ちゃんの様子も確認をしてもらいます。
助産院にエコーがあるところもありますが、私のかかりつけの助産院は古いエコーなので、ほぼエコーは使いません。
私のお世話になっている助産院での健診は、内診とエコー以外を行いますが、その他は主に雑談です。そして足湯を行ったり、その時の体調に合わせた対応をしてくれます。
この雑談が結構大事で、自分の心配なことや不安なことなど、丁寧に時間をかけて話をしてくれるので、お互いにコミュニケーションが取れて、出産の時には信頼関係ができています。

自宅出産と助産院出産の違い

私は、ご縁に恵まれなかったので自宅出産を経験したことはありませんが、『1%の風景』の中に登場する産婦さんは、自宅出産の方もいました。これまで、自宅出産を経験された方は数人お友達の中にいますが、お話を聞くと家族以外に助けてもらえる環境にあるように思います。映画に登場する産婦さんもそうでした。自宅出産のメリットは、慣れた環境の中で出産することができますし、産婦さんにとっては、安心した状態で出産できることは精神的にも安定します。出産=日常という、日本で昔から行われてきた風景を自宅出産は体感することができると思います。
助産院出産は、自宅出産に近い状態で出産できる場所だと思います。病院では、どうしても分娩台に乗らないといけないことはあったりしますが、助産院は畳の上でのお産が多いと思います。(水中出産ができる助産院もあります)私は病院出産の経験もあるので、分娩台を乗り降りする大変さはよくわかるのですが、畳の上だと、しんどい時に好きな体勢がとれます。歩いたり足踏みしたり、しゃがんだり、座ったり。分娩台に乗ったまま耐えないといけない、動けないということがないので、陣痛の痛みを逃すことは、自由なスタイルの方がやりやすいです。
また、助産院では、出産したら退院まで三度の食事が出ます。自宅出産だと、助産師さんの毎日の訪問はありますが、食事は誰かにお願いしないといけません。我が家は、夫と二人で協力するしかない状態なので、三度のバランスの良い食事を提供することがかなり難しく、それが一番の原因で自宅出産を断念しました。兄弟も多いので、赤ちゃんが寝ているときに起こされるのが嫌だなと思ったことも正直一つの要因ではあります。ですが、食事のことが解消されたり、助けてくれる人が家族以外にもいるようなら、自宅出産で慣れた環境の中で産めるのはすごくメリットだと思います。

助産師さんは個性的

『1%の風景』の中で、助産師さんは何人か出てくるのですが、それぞれ出産の時の声の掛け方も違いますし、妊産婦さんとのやりとりの仕方も違います。私も、これまで、様々な助産師さんと話す機会がありました。助産師さんは個性的なので、なるべくならたくさん見学に行って、自分に合うと思う助産師さんのところで出産できるのがベストだと思います。当たり前ですが、助産師さんも人なので、明るい人もいれば、静かな人もいます。どんな人が自分と相性が良いかをわかっておくのは本当に大事です。
助産師さんだけでなく、助産院もそれぞれ雰囲気が全く違います。食事を個室でとるところもあれば、食堂で集まってとるところもありますし、同時期に出産が重なる助産院もあれば、一人だけ丁寧に対応してくれるところもあります。
また、助産院を選ぶ時には提携先の病院も調べておく必要があります。私は、赤ちゃんの黄疸が強く出ることもあるのを懸念して、病院と助産院が近いということが最優先でした。提携先が市を跨ぐこともあります。そうすると産後に母乳を届けてもらうのも大変だし、色々な弊害が考えられたので、提携先の病院の場所も大事なポイントでした。

自分に合った場所と方法を選べば良い

助産院や自宅出産を選ぶ人が1%しかいない、というのは映画を観て本当に驚きました。実際、助産院や自宅出産を選べるということは、逆子ではない、妊娠中のトラブルがない、第一子が高齢出産ではないなど、様々な条件が必要になります。その条件がクリアできる人数が減っているというのも一つの要因ではあると思いますが、助産院が近くになかったり、助産院や自宅出産を知らないという人もある一定数いると思います。
無痛分娩がどんどん推奨されていて、助産院の出産が昔の痛みに耐える美徳文化と誤解している人も少なくないように思います。サクッと出産して、母子別室で、出産後はミルクでいいと思う人もいると思います。わざわざ何故、助産院なの?1%を選ぶ理由って何?と思われることでしょう。
助産院でも、夜中大変だったら赤ちゃんを預かってもらえることもあります。
私は、助産院や自宅出産という方法があるのか!と知ってもらえたら良いなと思っています。知れば、選択肢が増えます。知って、それを考えて最終的に病院出産であったとしても、どのような出産を選ばれたとしても良いなと思うからです。ですが、全く助産院を知らないのに否定したり、危ないと勝手に思われたり、古臭いと一蹴されてしまうのは悲しいなと思います。実際に話を聞いてみたり、助産院を見学してみたり、その上で自分に合った場所と方法を選べば良いと思っています。
助産院の見学がハードル高いと思われる人には、この『1%の風景』はとてもピッタリなドキュメンタリー映画だと思います。助産院や自宅出産の雰囲気が掴めるからです。自分が妊産婦でなくても、日本の失われつつある1%の風景を知っておくことも私は良い経験になると思います。


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