留守番電話

「I LOVE YOU」と
いうことばを忘れても

そう
ささやきかけてくれる相手も
呟いたら微笑み返してくれる
相手もいなくても

時は流れる

誰でも立ち話や
仕事の合間の相手くらいには
なってくれるのです

いつでも近くの
コンビニのアルバイトたちは
よく教育されていて
愛想よく
あいさつをしてくれます

ぬいぐるみやペットや花が
あなたの心を
慰めてくれることも
あるでしょう

けれど心のどこかで
唇はいつも練習している
「I LOVE YOU」

夜の窓から
吹き込んでくる風の中に
ふいに
聴こえてきたような気がして
はっと耳を澄ます
「I LOVE YOU」

ああ、わたしはこうして
毎日何をやっているのだろう
そう思いながら、ぼんやりと

それでも時は流れ去る

もう何年も何年も
ひとりで生きてきました
ざわめきから
忘れられたように
ぬくもりから
置き去りにされたように

それでも生きてきて
しまいました

そんなあなたの人生の
その数千回分の一の
日曜日の
早い冬のたそがれ時に

昼寝したまま
夕闇が忍び込み
ふと目を覚ますと

電灯も点けないまま
すっかり暗くなった
部屋の中でまるで
あたかも無人のような
その暗闇の中で

いつものように
メッセージのない
留守番電話の
ランプの光だけが
さびしそうに
灯っています

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