さざ波

少し空気が
やさしくなった、と思ったら
きみが笑っていた

なんだかふと
あったかいと思ったら
きみが笑ったせいだったね

寒い冬の街で
きみの笑い顔へと
太陽の陽が差して
となりでふるえていた
ぼくの背中にも
そのめぐみを分けてくれた

そんなふうに
たいしたことでもない
ありふれたしぐさの中を

しずかなひとつの音楽の
メロディのように
たえずかすかに
けれど確かに変化しながら

ぼくたちのくらしは
流れてゆくんだね
ぼくたちの中の
生命と呼ばれるものたちが
とうめいな海のさざ波のように

ぼくたちは
ぼくたち自身がこの大気中に放つ
そのきらめきに気付くこともなく

少し空気が
やさしくなったと思ったら
きみが、笑っていた

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