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きれいごとのベクトル

今度こそ自分に打ち克って、痩せてやりたいと思う。

痩せなくたって、華やかな色を好きに着こなしている人たちがいるじゃないか、と思う。


もっと勉強せねば、と思う。

書を捨てて、この地でしか見られないものを見に行けよ、と思う。


どこかで見聞きした悪気のないきれいごとたちが、頭の中で四方八方に響き渡っている。

その真ん中で、私の本質は、途方に暮れて無力にへたり込んでいる。


ロンドンで出会った人に、「芯のある人だ」と言われた。私はまだそんな風に人をごまかせているのか、と思った。

きっと今までも、聞こえの良いきれいごとに縋ってきただけだった。従順な時も、反抗的な時も。

正解でありたい。かっこよくありたい。そんな風に思ってたら、自分で自分の正解を決められない人間になっていた。

芯なんてない。ただ、方向感覚を失って、立ちすくんでいるだけだ。


今、自分のものでない言葉でできた国での暮らしは、わずらわしさもありつつ、心地よくもある。

いろんなものが不明瞭で、美学の方向も見えづらい。

だけど、日本に帰ったらまた、鮮明なきれいごとの嵐に乗り込んでいかなければならない。

吹き荒れるきれいごとの中で、生きていくのなら。

強くならねばと思う。賢くならねばと思う。

手近な矢印に縋り、他を見て見ぬふりをすることはもうしたくない。

広く雨に打たれ、学び、自分の正解を作り出さねば。

そんな風に強くなることで、生きることがもう少し楽になればいい、というのが今の希望である。

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