銀河の夜のはなし。
以前 東京へ、いちばん気に入ってる白いガーゼの服を着て、チェロを聴きに行ったことがある。
なぜそれを知ったのか、この頃の記憶が曖昧で
よく考えたら仕事で追い詰められて薬を飲み始めたのもこの頃だった。
今はご活動を終了されたと思うので、無闇にお名前を出すのは控えるけれど
アンティークな写真スタジオ(経堂すずらん通りのアンティークカフェみのる)を借りて、定期的にお茶会を主催されていた方がいらっしゃった。
その方の雰囲気がとても素敵で、本当にお人柄の凜と美しい方だった。
開催告知がある度に行きたいと思っていたけれど勇気もなくいつも見送っていた。
けれど王子のような方がチェロを弾きに来るというので、もう見送るのはやめて見に行くことにした。
お茶会の予約なので、小さなバンドのチケット予約のように直接メールするシステムで、最初からかなり緊張した。
最悪ひとりでも行こうと思ったけれど、友人の月彦が一緒に行ってくれることになった。
スタジオはエントランスからとてもアンティークな雰囲気で、会場になっている2階へ登った。
階段を登ったところで主催の方がお出迎えをされていて、少年のようなその金髪の人に挨拶した。
室内へ入ると、素敵な中央階段があり、窓辺には既に席に着いた方達がいらっしゃった。
とても会場の雰囲気に合う方ばかりで、それぞれが素敵な世界に生きてらっしゃるのだなと思った。大正浪漫のような和装の方や少年装の方。
主催の方がご挨拶されて、よく通る声で話される言葉に、その場にいる全ての人への行き届いたお心遣いを感じた。あんな人に成れたら素敵だろうなと思った。
チェロを弾く方はすらりとした絵のような人で、王子のように振る舞われていた。
演奏が終わると歓談の時間もあり、お茶会という感じ。
実はお茶会らしいものに参加したのはこれきりで、ゴス時代には参加したことがない。ロリータ向けばかりだったし、社交的でもなかった。 なのでこの機会は嬉しかった。
カウンターには素敵な男装のバーテンダーさんと絡新婦の理のようなワンピースの美しい女給さんがいらっしゃって、姿勢の凛とした方だった。
人に合わせてティーセットを選んでくれた。
主催の方達と、常連のお客様達との絆を感じるような温かい会だった。
お話してくださった方は皆様ほんとに優しくて、お気遣いが有り難かった。
月彦の連れてきてくれた少年のお人形が、雰囲気にとても合っていて綺麗で。
チェリストの方が好きなので、月彦とジョジョの話を少ししたんだけれど、「ジョジョってなんであんな怖い死に方をするんだろう」と言っていて、面白かった。たしかに。奇妙だよね。その視点は忘れてた。
全然、クラシック音楽には詳しくなくて
でも楽器はチェロが一番好きなので、素敵な空間で異世界の時間を分けて下さって、とても嬉しかった。
帰りに主催の方は「下界へ戻られますか?」
と声を掛けてくださって
銀河鉄道に乗ったみたいに紺青の空へ星屑の降るような夜だった。
藤城清治さんの影絵みたいな記憶。
月彦、あの時はありがとう。
水に浮かぶ金魚のゼリーも美味しかった。
お互いいつまでこの下界にいるかわからないけれど、いつかまた銀河鉄道で逢おう。
これまでサポートくださった方、本当にありがとうございました!